「あれ?何してるんだろう?」
何となく目が覚めたから監視カメラを見ていると、弘岡が接客していた
弘岡は、何か物をお客さんに渡しているけど……そのお客さんがオカシイ
いや、確かに最初は普通に見えたけど、さっきから周りに人が居ないかを探るように首を動かしている
あ、帰った
何してたんだろう……
レジの方に行って、弘岡に聞く
「ねえ。さっきの人、何やってたの?」
「え……普通に針金を買って帰っただけだと思う……まあ、針金の量は確かに多かったけど」
針金?
まあ、鍵をこじ開けたりと色々使い道は有りそうだけど……
何か特別なものなのかな?
「ねぇ、一応、どの針金かだけ確認して良い?」
「はい、これ。番号書いてある」
ああ、在庫管理に使うとかいう番号か
これで少し探してこよう
「じゃあ、僕はまた裏に戻っておくね」
すると、弘岡が口を挟む
「待つ。私も行く」
……まあ、わざわざ止めるようなことでも無いか
「そうだね。針金本体を見たことのある人が居れば助かるかもしれない」
そうして、二人で裏に向かう
――――――――――――――――――――
「……これ、なの?」
レジの記録にあった番号を元に商品を確認しようとしたが、その番号に合う商品がない
「エラーは……掛かっていなかったんだよね?」
「……うん」
機械が故障してて、間違ったコードを通してしまった?
いや、それでも、プログラムされていない番号を認識する理由にはならない
本当に何が有ったんだ?
偶然他の店の商品を持ってきて、偶然エラーが起こったけど弘岡が気付かなくて、そして、そのエラーによって偶々プログラムされていない番号が認識されたかのような不具合が起こった?
……無茶が有るな
「弘岡、何か思いつくこと無い?」
「……いや、無い」
う〜ん……分からないなら、一旦終わるのが吉かな?
それと、そろそろ交代の時間だ
僕がレジに行こう
「じゃ、見てくるね〜」
そして、レジに辿り着く
そこでは店員が不思議そうな顔をして立っていた
「あの……何かあったんですか?」
困った顔をした店員さんが答える
「いえ……これを渡されまして……」
店員さんが手で示した所には針金人形が何体かあった
「針金……ですか……」
さっきの人が買っていったものと同じだな
……もしかして、『おおいさん』と針金には何か関係があるのか?
「ちょっと待ってて下さい。」
そう言って、スマートフォンを取り出して『おおいさん』について調べ始めた
「それなりにメジャーなやつみたいだな……」
どうやら、怪談系のインフルエンサーがこの『おおいさん』について解説をしていたらしく、結構知名度は高いらしい
その情報によると……『おおいさん』は攻撃する相手の針金人形を渡すらしい
別に渡す相手を攻撃するとは限らないらしいが……
誰を殺すつもりなのかは会話である程度分かる、と
「あの、これを渡してきた人、何て言ってました?」
目を上に動かして答える
「えっと……確か……そう、何かを【ちょーだい】とか言ってたような気が……」
「何を、ですか?」
言葉に詰まる
「……その、命……を」
やっぱり
ここに書かれている都市伝説と全く同じだ
「誰の、命ですか?」
「確か……一部のお客様の方を指さしていらっしゃったかと……」
なるほど
なら、僕たちには被害は及ば無さそうだけど……
調べるのにはもってこいだ
「その時のお客さんって誰か、分かります?」
「あ、はい。一応顧客データが残っております」
普通は顧客データを赤の他人に渡すなんてことはしちゃいけないんだけど
これも城崎の権限が強いお陰だ
あいつは最近色んなことをやっているから、その恩恵を受けている人間も多い
そのため、結構色んな権限を持っても文句を言われないくらいにはなっているみたいだ
「じゃあ、ちょっとこれ、持って帰って見させてもらいますね」
USBカードで渡されたので、それを持って奥に戻る
そして、持ってきたパソコンに挿して城崎に向けて転送する
一応説明書きみたいなメールも着けて……っと
後は城崎がその人たちの近辺調査とかをしてくれると良いんだけど
ま、その辺は本部の方針次第でしょ
どちらにしろ、多分今日はもうまともな仕事が残ってないだろうから、ゆっくり休むとしよう
――――――――――――――――――――
「……なるほど、やはり予想は合っていたか」
神柱から来た連絡を見て、そう呟かずには居られなかった
この予想を元に考えると……
装備が降ってきた理由も何となく予測できる
とは言え、事例が一つでは説得力に欠ける
他のものも調べてみるか
「ああ。俺だ。そちらの方から人員を出して都市伝説の調査に行ってほしい……ああ、その気持ちも分かるが、こちらもなんの確証もなしにやれと言っているのではない。だから頼んだぞ」
……さて、後は報告を待つとするか
その間に他の作業、具体的には、国家の運営等もやってくか
資料を取り出し、細かいところを見ていく
そして、一部の官僚と相談しながら国家としての行動を考えていく
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そこは、只の路地……のはずだった
体の下半分が無い人間がゆっくりと生まれようとしている
そのまま、体を引き摺りながら何処かへと進んで行った
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