数日後、僕たちは学校に集められていた
「何?城崎。高校に集めたってことは、結構重要なことだったりするの?」
基本的に、そこそこ重要な作戦や国家の運営に関わることは旧内閣の人たちや官僚の人たちとの会議で決まっている
まあ、僕はその会議に出たことが無いから人伝てに聞いたことでしか無いんだけど
そして、国家の運営とは別で調べたいことや国家が絡むと却って調べにくくなること――例えば、怪異の発生原因や例の財閥のことについて――の調査の詳細はこういった学校での会議によって決まっている
「ああ。神柱には前に伝えたが、エルサレムへの遠征についてだ」
「エルサレム?何で?」
弘岡がそう聞くと、この場に来ていた官僚の篠宮仙都さんがこう答える
「どうやら、城崎さんの独自の調査で例の聖地に大勢の人が連れされていることが分かったそうですよ。そして、その地に調査隊を派遣する、とのことです」
篠宮さんは三ヶ月程前からこの会議に出席している
かなり説明するのが上手いから、居るだけで会議の進み具合が随分と違うんだ
「ふ〜ん……ありがとう」
「まあ、詳しいことは追って説明するから話を進めるぞ」
城崎はそう言って、机の中央に資料を出す
……突然出てきたな
装備の能力を利用したのかな?
「行方不明者の勤め先、生活区、出身国、そして行方の途絶えた場所などをリストアップした」
「あれ?ヨーロッパが随分と多いんだね」
見てみると、行方不明者全体の五割弱がヨーロッパ出身の人だ
残りの半分の内、三割近くは北アフリカや西アジア出身の人たちによって占められており、一割程が南北アメリカ出身の人達、というような形だ
「それと聖、この資料を見る限り、日本や周辺の東アジアの国々で行方不明になった人間は殆ど居ないように見えるが」
須斎もそう聞く
確かに、人口で言えば世界トップの中国や二位のインドから出た行方不明者があまり居ない
「俺はそこも踏まえて考えたんだが、結論から言うと、怪異の一種として【神隠し】のようなことが起こっていると考えられる」
須斎や弘岡、そして、伏原先輩が固まる
僕はこの話を事前に聞いておいたから、そこまで驚かなかった
官房から来た人達もそんなに驚いたり呆れたりしていないみたいだから、事前に説明されていたのかな?
「ちなみに、ここに来ている中でこの【神隠し】について話していないのは須斎、弘岡、伏原、そして長崎の四人だ」
そういえば、千尋所長はそんなに驚いて居なかったみたいだね
科学者としては言われたことを疑問に思わないのは大丈夫なんだろうか?
いや……もしかしたら自分でこのことに近い結論に至っていたのかもしれないな
確か千尋所長は装備について研究していた筈だから、装備が降ってきた原因と怪異の発生原因が似ていたらある程度予想できるのかもしれない
あ、そういえば前に言っていた論文、まだ見せてもらってないな
この会議が終わったらちょっと聞いてみようかな……
「まずは、俺がそう予想した理由について知っていおいて欲しい」
そして、城崎は僕に行った説明をもう一度行った
「……なるほど、確かにそう考えればエルサレムという場所に納得がいかない事も無い」
「う〜ん……そういう発想かぁ……僕とはちょっと考え方が違うなぁ……」
説明されると、受け取り方に若干の違いはあれど二人共理解したようだ
凄いな、僕は咀嚼するのに結構時間がかかったと思うんだけど
この二人、以外と理解力は高いのかもね
「よし、それでは本題に入るぞ。今日決めたいのはエルサレムへ誰を派遣するか、だ」
誰を?それってもう決めてあるんじゃないの?
「えぇ……それ、僕たちを呼んでまで決めること……?大体、そういうのって考古学者みたいな人を連れて行くんじゃないの?」
伏原さんが薄っすら千尋所長を見ながらそう言った
伏原さんとしてもそう思うんだね
実際僕もそう考えていたところだから、城崎がどういう目的でこのことを行っているのかちょっと気になる
「勿論、こちらで手配した研究員を送るのが最大の目標だ。しかし、そういった人物たちが狙われないという保証は一切無い」
「……つまり、守れってこと?僕たちって、まだ武力要員なの?」
伏原さんはああ言っているけど、正直、僕達のことは武力要因として扱っていると思う
というか、蜃気楼高校の人たちのことは、って言った方が良いかな?
だって、事務要員とか特殊部隊みたいな諜報の専門訓練を受けた人達に比べれば、正直僕たちの能力は余りにもお粗末すぎる
となれば、僕たちの価値を単純な戦力としてのものしか考えないのも理解出来なくは無い
まあ、出来ればそれ以外の価値も見出してほしいんだけど……
「?護衛と武力要員の意味はほぼ同じだろう?」
言っちゃった……
城崎って結構ストレートに言うからね
だからスペックの割に友達が少なかったんだろうけど……
「……あのさ、戦闘要員って結構危険が多いの。
知ってる?」
「まぁまぁ、伏原さん。ちょっと待ちましょうって。そもそも、まだ誰が行くのか決まってないじゃないですか」
このまま不仲になると後々響きそうだし……
城崎はため息をついてこう言った
「だから話は最後まで聞け。今回はお前たちに護衛として参加する気があるのかどうかを話しに来たま」
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