人類戦線

さむほーん
さむほーん

第二十四話 挨拶

公開日時: 2022年9月25日(日) 07:17
文字数:2,095

「ふ〜。支度終了っと」


やっぱり他人の家ではちゃんと床とかを綺麗にしておかないとね


それも、私とは直接の関わりは無い相手なんだから尚更だ


これで汚したりしていたら流石に失礼だ


布団の支度ベッドメイクは自分でするのが前提みたいな感じだったけど、意外と何とかなったね〜


そうだ!一応ここの院長さんにも挨拶しとこ〜っと


お世話になる相手だから親切に接していかないとね〜


「じゃあ、行ってくるね。グリーンボール改ちゃん」


――――――――――――――――――――


「ふぃー。これで今日の仕事は終〜わりっと。それじゃ、そろそろ俺も休憩するかぁ〜」


それと後は、今居るガキ共とも遊んでやらないとな


あいつら、遊んでやらないとすぐに暴れ出すからな……


ちょっと向かってやるか


子どもたちの居るところに向かおうとドアを開ける


「あ、どうも〜こんにちは〜。お世話になってます〜」


こいつは……


ああ、賢明が連れ込んできた女か!


「おう。普通に寝れそうか?ベッドメイクが難しそうなら床敷きの布団とかも有るが……」


「あ、ベッドメイクの方は大丈夫ですよ〜。私、そういうの慣れてるんで〜」


お、そうなのか


賢明は自分の身の回りの世話は出来ていなかったから、そっちを基準に考えちまってた


最近の高校生ってのは、結構そういうことが出来るやつが多いのかもな


聖は色んなことが出来た……というより、から、もう一人の『最近の高校生』のサンプルもイカれてるからなぁ……


その辺の基準として、そろそろまともな奴を一人くらいおいた方が良いのか?


まあ、それはまた後で考えるとするか


「そうか〜。なら良かった。ところで、賢明がどこに行ったのかとか、知らねぇか?」


「神やんですか〜……特に聞かされてないですね〜」


そうか……


あいつ、いまいち行動原理が読めないからな……


教育者オレとしても、どう扱えば良いのか分からなかった


だからも賢明ではなく聖の方にしようと思ったんだしな


ただまあ、そういう予測できない奴が居た方が事態が変な方向に動いて面白くなるってのも否定はしないがな


「分かった。まあ、夜になっても帰ってこなかったらこっちで対応する。君は気にしすぎないようにな〜」


「分かりました〜。じゃあ、そっちに任せま〜す」


その後、この子はもう一度お礼を言ってから去っていった


「やっぱり、結構良い子だな」


ちゃんと挨拶は出来るし、言葉遣いも多少緩いところは有るが、こちらへの礼儀は感じられる


マイペースな賢明との接点が気になるな……


まあ、多分学校で同じ委員会になった、とかだろ


後は、他の友達経由で知り合ったとかが現実的だな


まあ、あいつの交友関係を知らないからその辺は断言できないんだがな


「しっかし……急に人を泊めるって、一体何が有ったんだ……?」


確かにあいつが時々突拍子もない行動を起こすのは知っているが……


ここまで変な行動をする奴だったか……?


「俺が見ていない間に何か有ったのか?」


だとしたら、賢明の成長が嬉しいな


俺のに育ってくれたってことになるからな


「やっぱり、教育ってのは大人おれたちがそんなに関わらない形が一番良さそうだな」


放任主義って言われりゃそれまでだが……


結局のところ、教え子たちに任せるのが一番な気がする


それで死んじまったらそれまでだし、諦めちまってもそれまでだ


俺は、そうやって居なくなった奴の名前は覚えていない


今まで数え切れない程の奴らがそうやって死んでいったんだからな


一々覚えてられるかって話だ


「よし!じゃあガキ共、待ってろよ!」


俺は孤児院の中でも子供たちが遊んている部屋に向かった


―――――――――――――――――――――


「あ、いんちょーだ!おそい!」


「悪い悪い!ちょっとやることがあってな!」


ガキの相手に時間を割いておかないと、こいつらが大人になった時の人間関係に悪影響が出るかもしれないしな


「いんちょーは、ドラゴン出来る〜?」


「ドラゴンか……それはちょっと分からんなぁ……」


ドラゴンをするって一体どういうことだ……?


まあ、ガキの言うことなんて大体意味の分からないモンだが……


「えー、そうなのー?ドラゴンやってよー!」


こう言い出すと止まらないからな……


「しゃあねぇなぁ……ちょっと待ってろ」


こういう奴らはドラゴンじゃあ満足しない


まさしく、【本物のドラゴン】を連れてこないといけない


「この前捕まえたこいつ、本当はちゃんとした研究機関ところに出さないといけないんだろうが……」


倉庫の奥から ドラゴンの死骸を引っ張り出す


この前街を散歩してたら偶然ドラゴンを見つけて、そいつを捕まえておいた


とは言っても、流石に生きたまま捕まえるのは無理だったから、ここにあるのは死骸だがな


まあ、死骸でも少しは楽しめるだろう


「おーい!これ!持ってきてやったぞー!」


「え!本当にドラゴンじゃん!」

「スゲー、居たんだ」

「これ、生きてるんじゃね?!」


お、感触は良い感じだな


「それで、ちょっと見てろよ〜」


死骸を動かし、空を飛ばせる


「あ、逃げた!」

「追えー!」

「捕まえろー!」


ガキ共はそれを追って院の外に走っていった


「晩メシまでには帰ってこいよ!」


一応それだけ言って、俺は俺でやることに取り掛かる

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