人類戦線

さむほーん
さむほーん

第十七話 模擬戦闘

公開日時: 2021年1月28日(木) 07:45
文字数:2,139

「装備の使用はOKなの?」


「ああ、基本的には何をしてもいいが、後遺症が残るようなことは禁止だ」


なるほど


まあ、そもそも模擬戦だから後遺症を残したら駄目だよな


「審判は誰に頼む?」


「いらないだろ。ギブアップで終了にしておけば。お前別にあの二人ほど戦闘狂って言う訳でもないだろ」


よし、わかった


「じゃあ、このコインを投げるから、それが地面に落ちたら試合開始で」


有名な方法だし、これで構わないだろう


僕は、城崎がうなずいたのを確認してからコインをうえに向かって投げた


それが地面に落ちた瞬間、城崎の周りのコンクリートが卵のような形で城崎を包んだ


(引きこもるの?!)


そして、周囲のコンクリートが槍のような形になってこちらへ襲いかかってくる


急いで飛んで避けたが……


これは今の状態では対応が厳しそうな速度だな


早めに使っといた方がいいか


(抜刀)


しかし、使ったから攻撃は喰らわないけど


この刀じゃどう頑張ってもあの盾は切れないだろうし


殺すつもりならいくつか方法はあるんだけど


無力化って難しいな


じゃあ、ちょっとした必殺技を見せてやるか


そう考えながら刀に意識を集中させる


僕はここしばらくの戦闘で、刀の周囲の空気の分子運動を加速させることができるようになっ


つまり、温度を上げることができるのだ


倍率は約10倍


今の気温はだいたい17℃だったからそれを十倍にできる


しかし、これは170℃になるというわけではない


セ氏の0℃は水が氷になる温度だから、運動量には関係ないのだ


そのため、Kケルビンで考える必要がある


計算は省くが、10倍にするとおよそ2600℃になる


コンクリートの融点がどの程度かわからないが、2000℃を超えてはいないだろう


弱点は、これを使うと加速状態が解けるということだろうか


だからこうやって相手の近くで使う必要がある


(よし!集中できてきた)


もうすぐ使えるはずだ


コンクリートを切り次第、城崎に襲いかかろう


そして加速状態が解除され、刀が急に熱を帯びた


コンクリートは豆腐のように簡単に切れた


(このまま襲いかかれば、僕の勝ちだ!)


そうして、勝利を目前にしていたからだろうか


僕は背後の地面から伸びていたコンクリートの塊に全く気付くことができなかった


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


そしてまあ、僕は今こうしてコンクリートではりつけになっているわけで


「ねぇ、城崎って強すぎない?」


「俺はそれよりお前が熱を操れるようになっていたことに驚いたがな」


「それは細かい原理を言うと日が暮れそうだからパスでいい?」


実はさっき考えてたみたいな原理じゃ無かったりする


いや、大枠はあってるんだけど細かいことまで考えると本当にそれだけで一日使いそうだ


「そういえば城崎ってあの卵の中からどうやって外を見てたの?」


「卵……か……」


ん?今僕なんか変なこと言った?


「どこか間違ってるところあった?」


「いや、別にないんだが……」


こいつがこういう態度をとったときってものすごく不安になるんだよな


何か僕がとんでもない間違いをしている気がして


「あの中からならの話なら簡単だ。完全に支配した物を魚眼カメラのように使うことができる」


「…………つまり、どういうこと?」


原理がわからない


いや、魚眼レンズは知ってるんだが


あの丸いレンズで、広い範囲が見えるって言いやつだろ


でも、何をどうやったら支配したものを魚眼カメラのように使うことができるんだ?


「ねぇ、それってどういう事?」


「ん?ああ、お前には俺の装備の本質を話していなかったな」


本質……かぁ……


装備の本質って結構曖昧あいまいなこと多いみたいだしな


特に須斎なんて、自分の装備にどういう能力があるのか本人も全然把握してなさそうだし


「そういえば、城崎の装備の本質は何なの?」


今までお互いに装備についての細かい情報は把握してなかったし、ここらで共有しておくのもいいかもしれない


まあ、奥の手くらいは隠させてもらうけど


「俺の装備の本質は、【操作】だ。まあ、ここまでならもう気づいていただろうがな」


【操作】か


支配下に置く、っていうのは操作するための権限を手に入れる感覚でいいのかな


「この【操作】の特徴は、自分の頭の処理能力が追いつく範囲なら質量をもつすべての物は操作可能だと言うことだな」


「え、全部なの?」


全部はやりすぎでしょ


「今のところ、試したものは全部操ることができた。原子も含めてな」


「うわーチートだ」


「チートのように聞こえるが、実際にはそこまで万能じゃない。まず、支配下に置かないと何も操作することができないし……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「結構条件あるんだね」


半分も覚えれてないんだけど


「ああ、だからあらかじめ準備した場所でしか使わないようにしている」


そうだ、僕も言っておかないと


「それと城崎、僕の装備なんだけど」


「ああ、大丈夫だ。だいたい知ってる」


あれ?僕言ったっけ?


「それより、模擬戦も終わったし、あいつら二人を呼んでおいてくれ」


「え?どこに呼ぶの?」


臨時会議所いつもの場所だ」


ってことは……


あれ・・かぁ


「もうちょっと休んどきたかったんだけど」


「この状態で長々と休むわけにもいかないだろ」


城崎がこの言い方をする時はたしかあれだった


盗聴対策っていっても覚えにくいから変えてほしいんだけどな


「これからの方針について会議をしておく」

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