人類戦線

さむほーん
さむほーん

第二十八話 改造

公開日時: 2022年9月25日(日) 16:00
文字数:2,098

「今日の検査は昨日のものとは少し違う。経過観察もするからそのつもりで頼むぞ」


「了解。具体的には何をやるんですか?」


その部分をまだ聞いて居なかったからね


「ああ。簡単だ。今日やることは主に二つ。まずは君の体にとある細菌を投与してその反応を見る。もう一つはその検査が終わってから伝える」


細菌投与?!


中々思い切ったことをするなぁ……人道的にアウトなんじゃない?


「それ、大丈夫なんですか?」


対応策は取ってあるとは思うけど、万が一その細菌が原因で僕が病気に罹ったらどうするつもりなんだろう?


「?あそこまで色々やっているならそのくらいの抵抗力は有るだろう?」


色々?


どういうことだろう……?


「あの……僕の体、何か変なんですか?」


「?知らないのか?君の体なんだが、装備が降ってくるにある程度改造されていた形跡が有る」


改造……


「それって……どういうことですか?」


いまいち思い当たる節が無い


「……まさか、本人の許可を取らずに行っていたのか?それは流石に……」


所長は少し困惑したような雰囲気を出している


肉体改造……


何をされてたんだろう……?


そもそも、いつそんなことをされたんだ?


別に怪しい施設とかに行った覚えも無いんだけど


「まあ、あまり深くは聞かない。そういう訳で、恐らく君は今から投与する予定の細菌程度では死ぬことは無いだろう」


まあ……確かに今考えても仕方が無いな


「そうですね。じゃあ、早速お願いします」


その後、僕は所長の指示に従ってベッドに寝転んだ


腕に針が刺され、点滴のような形で細菌を投与される


「……あんまり変わらないんですね」


「まあ、すぐに影響が現れたら異常だからな。だが、君の肉体の変化を考えると数分もすればが出てくると思うぞ」


症状……


一応、この実験の最中に僕に起こりうる体調変化については説明を受けてある


その変化、もしくは、予想されていない変化が現れだしたら僕がすぐにそのことを伝えなければいけないことも、だ


「一応出る症状についてもう一度確認しても良いですかね?」


「ああ、構わない」


暫く所長と話していると、それらしきものが出始めた


「あ……ちょっと首とか脇のあたりが痛くなってきました……それと、寒気も少しだけ……」


「なるほど……予想よりもリンパ節への影響は遅かったな。やはり遺伝子ゲノムへの変化が出来ているだけで細胞にはそこまでの大きな影響は出ていないのか……?」


しかし……という風に独り言を呟きながら記録を取っていく


一応、痛み止め等も薬局からは調達しているみたいだけど、代謝のペースが乱れるといけないから今回は使わない予定らしい


「……よし、他に何か異変は無いか?」


「いえ、特には……」


その後も症状が治るまで、十分置きに自分の状態を報告し続けた


「よし、恐らく治ったと思うが、一応確認のために採血を行う。腕に針を刺すぞ」


最後に採血を行って終了と言っていたから、そろそろ終わりが近いのか


しかし、針を刺されてもあんまり痛く無いな


「……よし、これで大丈夫だ。ゆっくりしておいてくれ」


血液は取れたみたいだ


僕はゆっくりとベットの上で気分を落ち着かせる


「ところで、今は何を調べているんですか?」


昨日から行われている検査、やり方や中身は伝えられているけど、その目的は未だに分からないまま何だよね


少しだけ沈黙した後に、所長はこう答えた


「申し訳ないが、今伝えるわけにはいかない。どこから情報が漏れるか分からないからね。ある程度発表の準備が整った時期なら伝えることも出来るんだが……」


成程、情報漏洩等を気にしているのかな?


「ああ……それもそうですね。まあ、でしたら仕方ありません」


「協力してもらっているのにすまないね。決して君のことを信用していない訳では無いんだが……」


それだけ言うと、再び論文を書き始める


情報の管理に気を使う割には、僕が見ている前で論文を書くんだな……


判断の基準が今一よくわからない……


その後、時間が経ってちゃんと体を元のように動かせるようになったら、鉄分補給用のドリンクを渡されて解散となった


「じゃあ研究の方、頑張って下さいね」


「ああ。成果が出たら発表するから、またその時にでも伝えるよ」


――――――――――――――――――――


さて、所長との話はこれで終わった訳だけど……


「やっぱり、気にしない訳にはいかないよなぁ……」


僕は、所長の言っていた【肉体改造】のことについて考える


でも、物心ついてからはそれらしき怪しい記憶が無いんだよな……


が有ってからは、そこまで外で遊んでいないから病院に行くことも少なくなっている


だから、そういう医療機関でなんからの処置を受けた可能性は無視するとして……


「じゃあ、もっと昔か……」


そうなると、僕がまだ三歳とか四歳だった頃になる


その頃受けた健康診断の結果、まだ残ってるかな……?


院長にちょっと聞いてみよう


「ああ……そういえば院長は研究所に泊まるって言った時、かなり焦ってたというか……」


何か僕の身体について知っているのかな?


聞きに行こう


それと、反対を無視して(殆ど)勝手に外泊したことも謝っておかないと


「じゃあ、孤児院の方に戻ろう」


僕は孤児院のある方角に向かって歩き出した

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