人類戦線

さむほーん
さむほーん

第二十二話 院長

公開日時: 2022年3月12日(土) 16:00
文字数:2,133

「うわぁ……手ぇ潰れかけてるじゃん……」


拳が砕けるくらい本気で殴る、って言ったことはあるけど本当に砕けたのは流石に初めてだわ……


どうやったら治るかな?


とりあえずは痛み止めだけ飲んでおこっか


(この痛み止め、変な味だな)


なんとなく誰かの装備で作られたものな気がする


普通の痛み止めなら絶対にしない味がしている


こんなもん飲んで大丈夫なのかって気持ちは勿論あるけど、実際に痛みは引いたから良しとしよう


別にあたしはスポーツ選手じゃないんだから自分の求める効果を出してくれればそこまで副作用は気にしなくていいでしょ


「……こいつ、ホントに気絶してんのかな?」


殴ったときは妙に硬かった


拳が砕けたのも多分そのせいだろうけど、その理由が分からないと不安であんまり次の行動に移れない


結構素手で殴るタイプだから今回みたいな硬い相手にはモロにダメージを食らっちゃうんだよな


「剣だけ回収しとこっか……」


相手の装備を減らしておいたらちょっと位は安心だ


そう考えた時には、地面から伸びてきたコンクリートに押し飛ばされていた

――――――――――――――――――


(少し遅かったか……)


弘岡から遠ざけるように吹き飛ばした相手を見ながら少しだけ後悔した


ここでの『遅かった』というのは二つの意味を持っている


一つは勿論、弘岡の支援に来るのが遅かった、ということ


もう一つは……


「クッソ……急に吹っ飛ばすなよ……」


攻撃のタイミングが遅かったので、相手を完全に意識を奪うとばすことができなかった、ということだ


「相当反射神経が良いんだな」


相手に聞こえるよう、それなりに大きな声でそう言った


「いくら反射神経が良くても無理なときがあんのを忘れんなよ!!」


この感じだと俺に注目ヘイトを集中させるのは簡単なようだな


敵がこいつ一人なら、の話だが


先程誰かがかけた状態異常があった


勿論、こいつが全体にかけた可能性はある


だが、そういう範囲攻撃ができるやつを前線に出すというのは馬鹿のすることだ


こいつが前線に出てきている時点でもう一人は居るのは確実と言っていいだろう


まあ、こいつがただの馬鹿だという可能性もあるにはあるが……


「よ〜し……じゃあお前も倒しゃ良いんだな?」


こんなふうに相手の戦力も測らずに戦おうとする様子を見ているとその可能性も否定できなくなってきた


ん?攻撃か


相手が相当なスピードで突っ込んできたがあまり関係は無い


そもそも、この高校の敷地内で俺に捕捉された時点で相手の負けは決まっている


片手が壁に触れているだけで自在にコンクリートを操れたりするからな


そのおかげで、相手はまた飛ばされた


「どうする?投降は考えているか?」


向こうが戦いを止めるなら取りあえず攻撃はしないつもりだが……


「え〜……やだ!!」


なるほど……面倒だな


この手のやからはどれだけ痛めつけても死ぬまで襲いかかってくる


こいつはとっとと殺してもう一人居るであろう相手から情報を聞き出した方が良いか?


まあ、殺すことを優先で攻撃するというよりは【相手が死んでもいい】位の気分で戦うか


その直後に俺は校舎のコンクリートを操って弘岡を軽く飛ばす


流石に怪我人の避難のほうが優先だ


後はこいつの上にコンクリートの雨を降らせればほぼ完成する


ちょうど校舎があるから降らせるものには困らないしな


「はぁ!?フッざけんなよ!!」


何か驚いているようだが、無断で敷地に入ろうとしてその上人に危害を加えようとしたんだ


ここまでされることくらいは想像してもらわないと困る


躱された時のために校舎を少し剥がして物量で攻めていくか


この辺りに生徒は……居ないな


先程から人に話しかけることが出来なくなっている


避難を呼びかけることもできなかったから人が居なくて良かった、というところか


ん?……生き延びているのか?


これは驚いたな。正直今の攻撃で死亡すると思っていた


もう少し強めに行くか


落ちて砕けたコンクリートを操って上から飛ばす


これ、全部でニトン位はあるかもしれないな


学校の素材を使っているから復興が多少大変になるかもしれないが、そこは大目に見てほしい


(チッ……粉塵で様子が見えないな)


一度に攻撃しすぎるのも考えものだな


しかし、一気に畳み掛けることのメリットは明らかにある


「……よし、気絶しているな」


かなり簡単に倒せたな


もう一人位はいそうだからそいつがカバーに入ってくると思っていたんだが……


やはりこの女の独断専行だったと考えたほうがいいんだろうな


いや……一応もう一人の方も警戒しておくか


そう思って砕けたコンクリートを整理しているとが聞こえてきた


いや、ハイブリッド車だからエンジン音と言うよりはモーター音と言ったほうが近いのだろうが


モーター音まで聞き分けることができるのは、昔からで院長の目を掻い潜りながらサプライズの準備をしていると自然と聞き分けることができるようになる


少し待つと、見慣れたステップワゴンが見えてきた


たくさんの子供の荷物を乗せるため、という理由で改造して上につけている荷台には今は人が乗せてあった


「院長。授業参観以外では学校に来ないように言いましたよね?うちの学校、部外者立ち入り禁止なんですけど」


毎日のように見ていた初老の顔がこう答えた


「いいじゃねぇか。それより、変なのいたから捕まえといたぜ」

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