中には、想像もしていなかった光景が広がっていた
「これ……もしかして全部装備か……?」
倉庫の様な場所には大量の道具が置いてあった
しかし、スコップとジャンバーが同じ棚に置いてあったりと、あまりまとまりが無いように見える
となると、『見た目』や『機能』というよりは『性能』や『効果』で分けているって考えるほうが自然だ
「この中のものって僕が使えるのもあるのかな?」
今の眼も、最初から持っていたものじゃない
経緯はちょっと忘れたけど、何故か僕の目に入ってきたものだ
もしかしたらこの中にも僕が使える装備が有るかもしれない
そう考えて変わる変わるその場にあった装備らしきものを手にとってみる
……そういえば、この装備がどういう能力を持っているのかも分からないから装備が使えるかどうかの判断も出来ないな
よし、じゃあここはもう無視でいいか
……いや、立ち去る前にちょっと嫌がらせだけしておこう
そう思って、少し置かれているものの配置を変えておいた
よく分からないけど、まだ隙間のある箱が残っているのにわざわざ別のところに入れるってことは何か分ける理由があるんでしょ
よし!嫌がらせも終わったし、僕も相手のボスとか倒しに行くか!
多分中心の方にいるでしょ
――――――――――――――――――――
「じゃあ、別館から来るって言う想定で。皆さん!準備しといて下さいね!」
僕がその声をかけると、各地に用意しておいた兵士が迎撃体制を整えた
この人達は、戦わせているから取り敢えず兵隊っぽい感じで呼ばせている元警備員や元々は守ることが中心で攻めたり殺したりすることに慣れていなかった元自衛官とは根本が違う
昔大して立場が高くなかったときに湾岸戦争中のクウェートに出張することになったんだけど、その時の友達の伝手を辿って連れてきた本物の傭兵だ
彼らに対応してもらうと安心だ
一応、念には念を入れてと言うから他にも対抗策は用意しているけど……
高速移動するタイプの敵にはあんまり効果が無さそうだから出来れば彼らに決めてもらいたい
さて、それじゃあ僕も具体的な指示を出す準備をしておこう
装備による監視の効率を最大限に上げるために、僕は目をつむった
えっと……彼の場所は……今別館からこちらへ渡るときの外の道を通っているところか……
じゃあドアで閉じ込めたいけどこの子の動きが速すぎて自動ドアが閉まるまで待ってくれなさそうだな
こんなことなら遠隔操作式の超高速開閉ドアに変えとけば良かった
昔、会議であのバカが言い出したんだけど全員で速攻却下にしたんだよな……
あの時、提案を真面目に受け入れておけば良かった
まあ、こんな状況を予想しろってのが無理な話ではあるんだけど
「さて、指示を出していくから聞いてね」
僕は無線を使ってそう言った
「A、D、E班は西側の入口付近で待機。A班がダクトのあたりに隠れておいて。B、C班は今のところは本部近くで待機。スナイパー的な立ち回りで残りの班を支援するように」
そう指示を出した
傭兵なだけあって軍隊とかよりは自分で考えて行動できると思うから僕があまり指示を出さなくても大丈夫なのかな?
一応、このことも言っておこう
「そうだ、もし予測不能の事態が起こったら自分たちの裁量で好きにしていいからね」
それぞれの部隊長(班長)から了解の意味を持つ言葉が送られてきた
これで一応準備は済ませた
相手の行動を見ながら順次作戦を変えていこうと考えて僕はもう一度目を瞑った
――――――――――――――――――――
えっと……この扉の先が外廊下、って言うやつか
外にあるものに廊下って名付けるのは珍しいな
「ちょっと外では急いだほうが良いのかな?」
色んなところから僕のことが見えるだろうし
加速状態ではあるけど、ゆっくり歩いてたら動体視力の良い人には見えるかもしれないし
「じゃあ、走るか」
扉を開ける準備とスタートダッシュを切る準備を両方済ませてから、僕は外廊下に向って走り出した
久しぶりのダッシュで早くも息が切れてきたけどどうにかして走り抜ける
(あ、でも中で人が待ってたら嫌だな。一旦外で休憩してから中に入ろう)
場所は……あそこの草むらなんかが良いかな?
ベンチとかでゆったり休んだら見つかって即攻撃されそうだし、見つかりにくい場所で休まないと
ということで、僕は大胆にも草むらに寝転がった
よし、ゆっくりする時間も出来たし、今からのことについて考えるとしよう
まず、そもそも僕がこの建物に入る必要が有るのか、という問題からだ
予定通りに行けば、須斎が相手のボス、又は幹部を倒している筈だ
僕に撤退命令が出ていないのは「まだ」倒していないからだけなのかもしれないし、城崎も現状を把握できていないだけなのかもしれない
でも、いつ頃に倒すとかそういう予定も特に聞いてなかったな
敵陣地に忍び込むからあんまり細かい段取りは出来ないのかもしれないけど、もしかしたら今回は城崎も少し焦っているのかもしれない
だとしたら、僕ももう少し積極的になろう
そういうわけで、建物の中に入ろうと僕はドアを開けた
ドアを開けた僕の目に飛び込んできたのは、四つの銃口だった
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