人類戦線

さむほーん
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第五話 滴定

公開日時: 2022年1月10日(月) 14:16
文字数:2,087

一応殺したけど、まだ考えることがある


それが一通り終わるまでは怖いから加速状態のままでいよう


まず、一番気になるのはあの時見えた光


明らかに今までの刀の力とは違っていた


前に人を切ったときに焼けていたのは加速する力で分子とかを加速させて高温になったって考えられるけど


今回のものは明らかに違う


……面倒くさいし歩きながら考えるか


そもそもあの光が何を意味していたのか、という所から考えていこう


あのとき僕はかなりピンチで、あの光に沿って行動したらピンチから逃れることができた


ってことは生き残る方法を示している感じか?


……となると、僕やその周りの人の持つ装備ではなさそうか


じゃあ、この施設の設備か相手の装備による副次効果みたいなものだと思った方がいいのかな


「いや、ちょっと待て……」


そういえば、目に関する事で心当たりが二つあった


あのときの変な新生物と時風さんの目から剥ぎ取った何かだろう


まあ、時風さんから剥ぎ取っのは新生物だから実質心当たりは一つとも言えるんだけど


そう思って右目を触る


……特殊能力に関して右目を触るのって大分厨ニっぽいな


まあ、うちに腕を使ってるせいでもっと厨ニっぽく見える人はいるけど


それにしても、今まで一度も発動しなかったことを考えると危機的な状況でしか使えないのかな?


かと言って訓練に命の危機を入れるわけにも行かないし


「なんか確認方法を考えとかないとな……」


――――――――――――――――――――


ふぅ、帰ってきた……


「おい、あれはどういうことだ」


ありゃ?なんか怒ってる感じ?


一応そっちに言われた依頼みたいなのは達成したと思ってるんだけどな……


「どういう感じって……見りゃわかるでしょ」


不審者が居たから処理しといたんだけど……


「もしかして先に連絡しといた方が良かった?」


でも、あの時はそんな時間なかったしな


「当たり前だ。急に行方不明になっていたものが弾かれたように現れたら流石に驚く」


ん?そんなことあったっけ?


「待って待って。状況に頭が追いつかないんだけど……行方不明になってた人が見つかったの?」


そもそも僕、あの辺で行方不明者が出てたなんて知らないんだけど……


そういえ誰も居なかったなとは思ったが、急に現れていたって……


どういうこと?


「ああ、お前が目的地についてから数秒後、そいつらが急に連絡の途絶えた場所から現れた」


う〜ん、ドームの攻撃だけじゃあ僕みたいな運動不足すら攫うのは大変そうだし……


「実際お前も、その数秒間は行方がわからなかったんだぞ」


監視カメラから消えた上、(おそらく連絡用に持っているであろう)無線まで通じなかったってことなのかな?


「だからあの地帯は完全隔離する方が良いとまで……おい、聞いているのか?」


「ん……?あ、ごめん」


あ、さっきから何か言ってたのか


「それで、何て言ってたの?」


色々集中してて聞いてなかったわ


「……お前が監視カメラから消えていた時間帯があったから、そのことについて話していた」


「え、僕が?」


僕の装備にはそんな索敵妨害みたいな効果は無いし、あの目にも多分そんな力なんて無いと思う


あ、でも速く動いてたら人の目には見えないのかな?


監視カメラには実際に写っていてもそれが人に見えなければ意味が無いし


「う〜ん、心当たりが無いわけでは無いけど……取り敢えず、まだ不確定だからそのことについて詳しく言うのは控えさせてもらうよ」


これで納得してくれたら嬉しいんだけど……


「……分かった。所長にもそう伝えておく」


納得はしてないけど一先ずは引いてくれた感じ……かな?


「そういえば、あの二人の話はどうなったの?」


僕の聞いてた間は穏便に済んでそうな感じだったけど


「所長はもう交渉を済ませて既に研究を再開させている」


おお、じゃあ城崎の腕ももうすぐしたら治るのか


「へぇ、じゃあもう僕ここに居る意味あんまりないかな……」


もう帰っても良かったりする?


「その辺りは所長に聞いてくれ」


「……あんまり自分で判断しないんだね」


僕に頼んだことといい、もうちょっと自分で動くタイプだと思ってた


「ああ、雇われの身だからな。自己解釈して動くのも限度がある」


僕に(多分)勝手に調査を頼んだのは自己解釈して良い範囲内なんだ


何か、自分で判断を下さない理由にしてるだけの様な気もするんだけど……


「あ、その……所長?に僕のスマホ返してもらわないと」


そういえば城崎と話すために貸してから返してもらってなかった


「ああ、そうだったな。所長なら第三研究室にいると思うから、そちらで受け取ってくれ」


すごいな。話をしてすぐに仕事か

自分のやってる仕事が好きなのかな?


「分かった。ちょっと行ってくる」


――――――――――――――――――――


「さて、元素滴定はどうなったか……」


第三研究室の中で、パソコンに向かってそんなことを言う


この空から降ってきた物は随分と興味深くて本業を忘れさせてくれるほどだったが


そろそろ本業の再生医療の研究に戻らないとな……


「……何だ?これは」


モニターには驚くべき結果が表示されていた


少なくとも、本当にこの研究を一旦放り投げて再生医療の研究に戻っても良いのか、私に考えさせるくらいには

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