人類戦線

さむほーん
さむほーん

第十話 テケ

公開日時: 2022年8月8日(月) 16:00
文字数:2,088

ん?そういえば……


下半身がなくて腕で這ってくる化け物


……『テケテケ』、か?


マジかよ……超有名な怪異じゃん


下手したら口裂け女とかそれに近いレベルだ


あ……待てよ


テケテケって無茶苦茶スピードが早いんだっけ?


じゃあ、早めに加速しておいた方が良いか


(加速)


世界がゆっくりになる


だが、テケテケはそれなりの速度で動いているように見えた


「うわぁ……これ、実際にはどんな速さなんだろ……?」


しかも、この動きを見る感じだと、何となくだが前に官邸で会ったバケモノとは違う気がする


なんというか……あのバケモノは何か特殊な力で装備の力を退けていた感じだったけど


こいつは純粋にスピードでゴリ押してる感じがする


だとしたら、僕が逃げ切るのは厳しいかもしれない


こうやって、避け続けながら後ろに少しずつ下がるのが限界だ


(……あれ?もしかして、こんな行動してたら相手をより内側に引き入れるから駄目なんじゃない?)


僕の役目は防衛だから、相手を中に入れたら駄目なのでは……


「まあ、でも今は僕の安全が優先だよね」


退却しよう


一旦ドアの中に入って、二重扉を抜ける


これはさっきテケテケが破った扉とは違い、ある程度の爆発にも耐えられる強靭な素材で出来ている


絶対に大丈夫とは言えないけど、そうそう破られることは無いはずだ


それより、早く連絡しておこう


(解除)


「あ、芳枝ちゃん?そっちはどう?大丈夫そう?」


あくまでメインになるのは研究室の方だ


「あ、こっちー?なんかね〜首の無い学生が何人か来てたけど、うちの研究員の一人が話したら何とかなったよ〜」


首の無い学生、か


似たような怪談が有りすぎてどれか分からないな


「そう。僕の方は結構やばいんだけど」


「知ってるよ〜。なんかテケテケみたいなのがいるんでしょ〜?」


あ、知ってるんだ


「じゃあそっちから救援出してよ……」


知ってるんなら助けてくれたって良いじゃん……


「ちなみに、こっちは余裕が無いから救援を出すのは無理だからね」


あ、そうなんだ


「なら、僕はここで一人テケテケを止めておかないと行けないってこと?」


「そうなるね」


ああ……そっか


「じゃあ、準備するから切るね」


よし、これで大丈夫だ


「お、この扉も危ないかも」


少し凹んできている


距離を取って、加速し直そう


(抜刀)


加速したことにより、扉が凹むスピードが体感少し遅くなった



つまり、実際には凹むスピードはかなり速くなっている、ということだ


「……迎え撃った方が良いな」


ちょっとこれを引き付けるのは厳しい


ここで倒すために刀の方も準備しておこう


やっぱり熱を使えるのは嬉しいな


……もういっそ僕の方から壁を切ってしまおう


テケテケを倒す上では邪魔でしかない


精一杯刀を『加速』し、熱で鉄くらいなら溶かせるような温度にする


この刀はどうやらの性質上、熱や衝撃にかなり強いらしい


だから、こんな風に熱しても高速で叩きつけても刀の状態には一切変化が無い


お陰で、こんな分厚い扉も簡単に壊すことができる


壊すとすぐにテケテケが見えた


よし、これは首とかを切れば動かなくなるのかな?


テケテケの首に刃をぶつけるが、あまり効果は無いようだ


相当硬いな


相手がもっとゆっくり動いていればノコギリみたいに斬ることも出来るんだけど……


テケテケは速さも結構あるからな……


その分対応が難しい


ただ、速さは僕のアイデンティティでもある


というか、これを取ったら僕は只の学生だ


城崎なら装備がなくてもやたらハイスペックだから何とかなるのかもしれないけど


僕は無理だ


(っと……戦闘中にそんなこと考えてる暇は無いな)


今はこいつを倒すことだけに集中しないと


「じゃあ、斬るのは関節が良いかな?」


テケテケの関節が人間と同じ位置に有るのかは分からないけど、取り敢えず試してみよう


まずは、肘からだ


肘に刀を入れると、少し食い込んだ


「お、効いてるのか」


まさかこんなに簡単な方法でどうにかなるとは……


拍子抜けと言えば良いのか……


まあ、倒せればそれで良いんだけど……


取り敢えず、このままいっぱい切っていこう


肘の次は肩だ


……お、肩は簡単に切れた


じゃあ、ガンガン切っていこう


今度は首にしよう


「……よし、良い感じにダメージが入ってきたぞ」


首が変な方向に曲がって、そのせいでバランスが取れないのか、相手はよくコケている


スピードがある分、その他の能力が低いのか?


じゃあこのまま倒しておこう


その辺から消化器を取り出し、相手の頭を殴る


何度か殴っていると、相手が動かなくなった


「お、これ、いけたんじゃないか?」


でも、一応体をバラバラにしておこう


―――――――――――――――――――


暫くした後、体のを見る


「この怪異……本当にテケテケだったのか……?」


僕が覚えている限りではテケテケって元人間だったと思うんだけど……


「何か異変が起こってる……?」


けど、怪異に起こる異変?


噂が変わってるのかな……?


『おおいさん』もどこか変だったし……


今度、ネットで広まってる噂についてもう少し調べてみようかな


「よし、じゃあ解除してから戻ろう」


中心部がちゃんと守れてるか、やっぱり不安だし


そうして、僕はバラバラのテケテケを放置して芳枝ちゃん達のいる中心部に向かった

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