人類戦線

さむほーん
さむほーん

第三話 寝床

公開日時: 2022年7月18日(月) 16:00
文字数:2,114

「このコンビニだよね?」


「うん」


今回、『おおいさん』の怪異が発生しているというコンビニにやって来た


とは言っても、このコンビニに出現していると言うよりは、この周辺のコンビニに出現していると言う方が正しいらしい


そして、怪談らしいと言えばいいのか……昼間は出ない


つまり、夜になるまでは暇なのだ


何なら、夜になっても来るとは限らない


一週間くらいは待つつもりではあるけど、あまりにもやって来なかったら一旦帰って再調査とかでも良いかもしれない


そう思いながら、コンビニの中を見て回る


「……やっぱり、小麦を使う系統の物は品薄だなぁ……」


調べたところによると、この状況で通常通りに近い国家運営ができている国は珍しいみたいだ


日本は、事なかれ主義が功を奏したのか、幸い大きな騒動は起こっていない


これは恐らく【有事に強い】と言うよりは【有事であることに気が付いていない】んだろうな……


中国は共産党に更に権限を集中させ、国家の色んなところに治安維持舞台を送ったり、反乱などを起こした人を速攻で殺したりして、意外と安定しているみたいだ


韓国はこのタイミングで国内で燻っていた男女対立が面倒臭い事態を引き起こしてるとか


ヨーロッパの方は情報が錯綜しててまだわからない


問題は、アメリカだ


あそこは元々人種やら何やらと火種が多すぎた


そこに銃以上に明確な『力』が降ってきたわけだ


火薬庫に火を持っていくとそりゃあ爆破するよね。ってこと


今、アメリカはちょっとした内紛みたいな感じになっているらしい


南米とかアフリカとかは知らない


中東はドバイだけいつもみたいに治安が良いことは知ってるけど、他は分からない


「あの、すいません……店の中で歩き回るの止めてください……。他のお客様が入り辛そうに……」


「あ、すいません……」


迷惑だったみたいだ


確か弘岡もうろちょろしてたからそっちも止めておこっと


「弘岡〜!出来れば裏に居てほしいって〜!」


飲み物のコーナーに居た弘岡が無言で頷く


そして、炭酸飲料を一本持ってこっちに来た


「ん」


レジに置いて、プリペイドカードを取り出す


「……今買うの?」


「喉乾いた」


炭酸飲んだらもっと喉が乾くだけじゃ無いかな……


「それ買ったら店の裏に行って、寝る準備するよ〜」


不思議そうな顔をして弘岡が答える


「まだ昼間」


「本格的に動くのは夜だから、今のうちに寝といた方がいいでしょ?」


弘岡がペットボトルの蓋を開けながら答えてくる


「じゃあ夜は神柱が見張って。何か起きたら私を起こして」


「それ、君を起こしてる間に『おおいさん』が帰っちゃうやつじゃない?」


レジの後ろから店の裏に向けて歩みを進める


「ま、とにかく僕は裏で色々準備しとくから。それ飲み終わったら来てね。」


――――――――――――――――――――


「えっと……確か布団の入ってる段ボール箱は……」


布団を探し出そうと持ってきた荷物を漁る


ちなみに、僕たちはここまでトラックで来た


だから泊まるのに必要な道具も結構持ってきている


「あった。これだ」


中からお気に入りの布団を取り出す


この前孤児院から持ってきた(帰った?)ものだ


昔、院長に言われて布団を野宿用のものにしておいたのがこんな所で役に立つとは……


人生何が有るか分からないな……本当に


「……よし!これでOK!」


寝床を確保して、もう一度店のレジの方に向かってみる


そこでは、弘岡が店番をしていた


――――――――――――――――――――


「はい。576円になります。袋は必要でしょうか?」


「大丈夫です。現金でお願いします」


お金を受け取り、商品を返す


さっきからずっと店の中をうろついてたら、接客を手伝うように言われた


話を聞くと人手不足らしい


バイトが混乱に乗じて何人かした後、新しく人を雇えていないそうだ


タダ働きになるが、どうせ暇なので問題無い


暫くレジ打ちをしていると、神柱がやってきた


「……えっと、何やってんの?」


「見てわからない?店番」


当たり前のことを神柱が聞く


大体、レジで接客をしているんだから店番に決まっているだろう


わざわざ聞く必要もな無いだろうに


「いや……あの、今日、張り込みっていうか……だから今は休んでいたほうがいいと思うんだけど……」


「昼間に来る可能性もゼロでは無い。二人のうちどちらかは起きている必要がある。神柱が先に寝て」


そう言うと、神柱は黙り込んだ


何か考えているようにも見えるけど、神柱の場合はそうとは限らない


「うん。なら大丈夫だね。じゃあ、僕は先に寝ておくよ」


そう言って裏に帰っていった


「あの……出来ればあなたもこのタイミングで帰っていただけると嬉しいんですが……」


「嫌。確かこの仕事を二時間くらい続ければあの辺りにある雑誌を読んで良いっていう約束。」


私は約束をしたことを破るのも破られるのも嫌いだ


一度了解したんだから、それを覆すような行動はお互いに取るべきでは無いと思う


「はぁ……まあ、そうですね……」


「お客さんが来た。先にそっちを対応する」


レジを見ると、大量の針金が置いてあった


(日曜大工でもしているのかな……?)


数を数えて、料金を示す


「927円になります」


現金で支払われて、初めて相手がサングラスをしていることに気が付く


しかし、気にすることも無くそのまま帰らせた

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