【最強知識の聖女様】私はただの聖女なのです。本の知識は優秀なのです! ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫
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82. 師として ~ロゼッタ視点~

公開日時: 2022年7月8日(金) 15:59
文字数:2,085

 82. 師として ~ロゼッタ視点~





 眩しい光が差し込む。もう昼か。うむ…。参ったの。全然身体が動かん。魔法を使いすぎたかもしれん。ワシはベッドの中でその身体のだるさから動くことが出来なかったのじゃ。


「うむ。今日はフィオナとソフィアに魔法の稽古をつけてやる約束じゃったのに…」


 というか今この宿屋に誰か残っておるのか?アリーゼあたりが残っていると助かるのじゃが……


「すまぬ!アリーゼおるか!他でも良いぞ!」


 シーン 誰も返事がない。大魔女ロゼッタ=ロズウェルがこんな恥ずかしい思いをするとはの…。仕方ない、待てば誰か帰ってくるであろう、それかなかなか来ないワシを心配してフィオナかソフィアがくるかもしれんしな。


「ふぁ〜あ」


 あくびが出るのう。眠くなってきたわい。しかしこのまま寝たらまた夜に眠れなくなるからの。それは避けねばならぬ。とりあえず今は回復に専念するとするかの。


 それからしばらく経っても誰も帰ってこなかった。おかしいのう。そろそろ日が落ちてくる頃合いじゃというのに誰も戻ってこんとは……まさか皆で仲良く出かけているということはあるまいな。ワシだけ、のけ者にしているのではないのか?


 そんなことを考えていたら部屋のドアをノックする音が聞こえた。誰だか知らんがようやく帰ってきたようじゃな。コンコンッ ガチャリ 扉が開かれる。


「あれ?ロゼッタ様どうしたのです?」


「おおアリーゼ!やっと戻ってきおったか。身体が動かんのじゃ。助けてくれ」


 なんとも情けない話ではあるが本当に動けないので致し方ない。その後なんとかアリーゼに助けられ、お手洗いと空腹で何も食べてなかったので食事を。そのあとベッドまで運んでもらったのじゃ。


 そして夕方になり夜になる頃にフィオナとソフィアが帰ってきた。二人には心配をかけたことを謝ったのじゃ。


「ところでお主達どこに行っておったんじゃ?ずいぶん遅かったではないか」


「えへへーごめんねー。ボク夢中になっちゃって。」


「申し訳ございませんロゼッタ様。私も夢中になってしまって。私たちが不甲斐無いばかりにロゼッタ様を置いて出掛けてしまったなんて……待ってれば良かったです。」


 そう言って二人は頭を下げてきたのじゃ。まぁ師匠としては弟子が自主的に稽古をしているならそれでよしなのじゃが。


「それにしてもアリーゼ様がいて良かったよね?」


「アリーゼ様のお手を煩わせてしまいましたね。」


「大丈夫なのです!ご年配の介護は得意なのです!」


「誰が介護じゃ!!アリーゼお主!」


 こやつ…腹が立つ…しかし今のワシには杖を振ることも出来ん。悔しいのう。これでは大魔導士どころか普通の魔法使いにも劣るのではないか?いやまぁそもそもワシは魔女じゃからな。普通ではないのじゃが。


 ともかく今日は疲れた。明日こそはちゃんと魔法の稽古をつけるのじゃ。


 次の日の朝、ワシは早速目を覚まして部屋を出た。昨日一日寝ていたせいか身体のだるさが抜けてだいぶマシになった気がするの。


 さて、まずは食堂に向かうかの。


 ガチャリ ドアを開けるとそこにはフィオナがいた。おお、お弁当を作ってくれておるのか。ありがたいことじゃな。


 そういえばいつもはソフィアも一緒に作ってくれておったが、今日はいないのぉ。


「あっおはよう師匠!身体大丈夫?」


「うむ。問題はないのじゃ。ところでソフィアはどうした?」


「ソフィアさんなら先に行ってるよ。ボクたちも行こう。今日は師匠も一緒ね。昨日みたいな事があると困るし」


「うっうむ……。」


 そして準備をしてソフィアが待つ場所に向かった。


 ワシらは馬車に乗り街を出発した。目的地までは少しかかるとのことじゃ。ワシは暇つぶしに魔法書を読んでいたのじゃ。


 しばらくして、ふと隣に座っているフィオナを見る。フィオナは窓の外を眺めながら何かを考え込んでいるようじゃ。


 何を考えておるか知らんが、ここはワシが一肌脱いでやるしかないのう。ワシはフィオナの手を握った。ビクッとした反応を見せたフィオナだったが、すぐにワシの方を向いてくれた。顔が真っ赤じゃ。


「どうした?何か悩み事か?」


「あっううん。ちょっと今までの事を思い出してて。恥ずかしいなぁ……」


 ふむ。こやつがこんな顔をするのは珍しいのう。一体何を思い返しておったんじゃろうな。気になるがあまり詮索するのもよくないのう。ワシだってたまに聞かれたくないこともあるからの。


 そしてソフィアの待つ魔法修練に適した広い草原にたどり着く。ワシたちが着くとソフィアは笑顔で手を振っておった。


 ワシは二人の魔法を遠くで見ている。今まで弟子など取ったことがないからのう。正直どんな風に教えればいいかわからんのじゃ。


 今教えていることがあっているかもわからん。そんな事を考えておるとフィオナとソフィアがワシに話かけてくる。


「ねぇ師匠。」


「なんじゃ?」


「ボク師匠に教えてもらって良かった!凄く強くなってると思うし!」


「私もです。以前より安定して魔法が発動できるようになりました。ありがとうございますロゼッタ師匠。」


 まぁこの2人が喜んでいるならそれで良かろう。一人前になるまで面倒を見てやるのも悪くはないのじゃ。

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