70. アリーゼ ~ソフィア視点~
私は宮廷魔法士のソフィア=エルヴァンド=マジカリアと言います。一応マジカリア王国の賢者、賢王と呼ばれているギルフォード=エルヴァンド=マジカリアの血縁です。正確に言えば孫の孫の孫の孫?くらいの血縁なんです。
私はあの大魔女ロゼッタ=ロズウェル様に魔法を学ぶため聖女アリーゼ様の旅についていくことになったわ。もちろんギルフォード様に言われたからもあるけど、こんな機会この先訪れることなんてないから。
それにしてもあのロゼッタ様がついていくくらいの凄い人なのかと思えば、話を聞くと驚いたのだけど、聖女の証である「聖痕」が消えて聖魔法も使えないみたい。そんなアリーゼ様ってどんな人なのかしら?私は確認することにしました。
「信用してない訳じゃないけど……これから一緒に旅をするし、心配ですからね。まずは様子を遠目から見ておきましょうか。」
こうして私はアリーゼ様を見張ることにしました。今日は買い物かしら?最初は普通に本屋に入り買い物をしていたけれど、次も本屋、また本屋で本を買っているみたい。
「そういえばアリーゼ様は本を読むのが好きと言ってましたっけ。でもあんなに読みきれるのかしら?」
するとアリーゼ様は広場のベンチに腰掛け買った本を読み始める。そして夕方になり辺りが暗くなってきたころになってもまだ読んでいます! 信じられません……まさか一日中読むつもりなんでしょうか?
私の予感は的中し、その日は一日中読書をしていました。
そして次の日もまた本屋に……。そしてまた広場に腰掛け買った本を読み始める。さすがに今日は…と思ったら、昨日の本より分厚い本を3冊購入しています!?︎一体いつまで持つんでしょうこの方は……と思いながら見守ることにします。
……しかし結局3日ほど経ってもその生活スタイルは全く変わりませんでした。これはさすがにおかしいわよね?もしかしたら私に気づいているのでは?
さすがの私もしびれを切らし今日は話しかけることにする。広場にいるアリーゼ様に近づき声をかける。
「こんにちはアリーゼ様。読書ですか?」
「あっソフィア。えぇまぁいつもの事なのです。」
私がふとアリーゼ様の横をみると、今日も大量の本を…本当に何度見てもびっくりする量ね。
「私に用なのですか?」
「あっいや出発は明後日でしたよね?一応確認を…」
「はいなのです!今みんなが資金を集めてくれているのです!」
それはありがたいですね。やはり旅にはお金がかかるものですから。それなのにこんな本ばっかり買って……。やっぱりアリーゼ様って凄い人なのよね。みんなが仕事してるのに1人本を読んでいるんだもの………。
こうなったら他の皆さんに聞くべきですよね!私はそのまま皆さんに話を聞きに行くことにしたのです。まずはミルディさん。確か一番アリーゼ様と付き合いが長かったわよね。マジカリア城の工房にいるミルディさんに声をかける。
「こんにちはミルディさん。作業中すいません。」
「ん?あっソフィア。どうしたのあたしに何か用事?」
「あのアリーゼ様ってどんな方なんですか?」
「えっ?アリーゼ?う~ん。あのままだと思うけど…?本が好きくらい?あとは強い。頑固かな。よく分からないけど。」
えっとつまりわからないという事かしら?とりあえず次はロゼッタ様とフィオナさんにもう少し詳しく聞いてみようと思います。
「えっアリーゼ様?そうだなぁ可愛いお姉さんみたいな存在かな。」
「アリーゼはアリーゼじゃろ。」
2人ともよくわかりません……本当に謎な人だわ。私は結局何もわからず城の大噴水の前に座ることにする。本当に旅についていって大丈夫なのかしら……
「はぁ……」
「大きなため息なのです。どうかしたのです?」
「えっ!?アリーゼ様!?…えっと貴女は何者なんですか!?」
私は勢いで聞いてしまった。アリーゼ様はきょとんとしている。そりゃそうよね。どうしようかしら…。するとアリーゼ様が口を開く。
「私はただの聖女なのです。」
へっ……それだけ……?ますます不思議なお人ね……。
「もしかしてソフィアは私がいつも本を読んでばかりいることを不思議に思っているのですね?」
「知ってたんですか!?あっ……」
「ずっと気づいていたのです。私の事見てたのです。」
やっぱりバレていたんだ…なら仕方ないわね。正直に話すしかないわ。それにしても……聖女か。一体どういう人物なのかしら。
「私のことが知りたいのです?それなら今までのことを話すのです」
そしてアリーゼ様は話し始める、「聖痕」が消えてからここまでの旅のことを。
私はアリーゼ様の話を聞き、みんながなぜアリーゼ様と一緒にいるのか分かるような気がしたわ。そして話をするアリーゼ様は凄く楽しそうだった。今まで一緒じゃなくて少し寂しい気もしたけど同時にこれから私も一緒に旅が出来ると思うと嬉しくもなりました。
正直アリーゼ様は不思議な人。それしか分かりませんでした。でも信じていいのはわかったわ。これから楽しくなりそうな予感だわ。私も早くみんなと仲良くなりたい。そう思ったのでした。
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