【最強知識の聖女様】私はただの聖女なのです。本の知識は優秀なのです! ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫
夕姫

5. 夢に向かって

公開日時: 2022年6月12日(日) 19:33
文字数:2,675

 5. 夢に向かって




 そして翌朝。私が昨晩公式で導き出したものを見ながらミルディ達は。何回も試行錯誤を繰り返しながらロウム石を砕いたものに鉄鋼を溶かし混ぜていく。そして出来上がった鋼の液を型に流し固めていくがやはりうまくいかないのです。


「うーん、なかなか難しいわね」


「でも何とか形にはなってきたんですけどね」


 そんな事を言いながら出来上がっては加工し、それを捨てる。を繰り返しバケツの中には溶かした鋼の液が溜まってきていた。


「悪いミルディ。これを錬金釜に捨てておいてくれ!」


「うん。わかった」


 ミルディは立ち上がりそのバケツを持って錬金釜の方へと向かう。私はそれが気になってミルディに質問をする。


「何をするのですか?このお釜は?」


「これは錬金素材を入れる時に使うものなの。魔法武器を造るときなんかに使うんだけど。今回は一応もったいないから鋼の延べ棒を作って売ることにしてるの」


 ちゃんと考えて皆さんお仕事してるのですね。でも公式通りのはずがどうしてうまくいかないんでしょう。私はもう一度昨日の公式を思い出す。


 ・魔力伝導率=(鉱材+原石の体積+水分量)×質量/密度 つまり ロウム石 > 鉄鉱石


 ん?それなら…


 私はそう思い立ち上がると鍛冶場にある炉に向かう。そしてそこにあった鉄塊を手に取るとそのまま水筒の中に入れる。それを何度も繰り返してかなりの量の水が入って重くなったところで一度外に出し今度は同じ要領でロウム石を入れてまた水を入れていく。それを見ていたミルディが私に聞いてくるのです。


「アリーゼ何をしてるの?」


「水なのです。加工するときに水分量がおそらく減ってしまっているのです。だから魔力伝導率が少なく鋼細工はうまくいかないのだと思うのです。」


 私の答えを聞いたミルディは驚いた表情になる。きっと今まで誰も気が付かなかった盲点だったと思うのですよ。するとリオンさんとブラック親方も集まってきて興味深々の様子です。


 そして試しにやってみると…… なんということでしょう!あんなにもうまくいかなかった作業が一発で成功してしまったではないですか!! どうやら正解だったようです。さすがは公式様ありがとうございます。


「おお…おお!今のどうやって!?頼む教えてくれ!」


「すご…」


「アリーゼ様は本当に素晴らしいお方なのですね!」


「今、紙に書くのです!」


 そして新しい分量を加えた公式を書き、それをブラック親方に渡すことにするのです。その私の公式を使いどんどん鋼細工の剣が出来上がっていく。そのあとは私は簡単な作業を手伝ったのです。


 これで無事に依頼達成できそうなのです!良かったのです。そして次の日も色々お手伝いさせていただいて何とか納期に間に合う事ができたのです。


 その日の夜。私は疲れていたので早めにベッドに入ることにしました。明日は出発の日ですね。魔法鍛冶屋さん、初めて体験しましした。明日は出発の日ですね。魔法鍛冶屋さん、初めて体験しましたが楽しかったです。そんなことを考えていたら横のベッドで寝ているミルディが話しかけてくる。


「アリーゼ。ありがとね。父さん…親方も凄い喜んでいたし。」


「いえいえ。お仕事を見ているとやはりプロは違うのです!私はただ本の知識で少しだけお節介をしただけなのです。」


「アリーゼ、明日出発なのね…」


「はい。色々お世話になりました、ありがとうございます。」


 なんだかしんみりしてしまいますね……。明日からはミルディやリオンさん、ブラック親方に会えなくなると思うと寂しい気持ちになってしまうのです。そんな事を考えながら眠りにつくことにします。


 翌朝。今日も朝からいい天気なのです。私は荷物をまとめて出発の準備する。そしてふと気づく…。それはあの時少しだけ削ってしまったあのロッドが綺麗に直っているのです。私は微笑む。


「ふふっ…ミルディですかね?ありがたいのです。」


 そしてそのロッドを持ち部屋を出る。別れの挨拶をするため工房に行くとブラック親方とリオンさんがいました。


「あの色々ありがとうございました。」


「いや礼を言うのはこっちの方だ聖女様。あんたは聖魔法なんか使えなくても、間違いなくオレたちを救ってくれた。ありがとな」


「アリーゼ様。これから頑張ってください応援してますから!」


 私は工房内を見渡すがそこにはミルディの姿は見えなかったのです。少し残念です。最後に挨拶したかったのですが…。


「聖女様。これからもよろしく頼むな」


「はい?何かあれば何でも言ってくださいね。」


 まぁ仕方ないですね。私は二人に感謝の言葉を伝えてその場を後にすることにしました。しかもお礼ということで旅資金ももらったのです!本当に感謝なのです!


「さて。次は港町で海鮮を食べたいですね!そうなると……まずはここ。シルクナートへ行きましょう!そこから港町クレスタなのです!待っててくださいね海鮮ちゃん!」


 私は地図を広げ目的地であるシルクナートを経由して港町クレスタを目指す事に決めました。こうして私はシルクナートへ向かう馬車を探しに街の馬車乗り場に向かうことにする。せっかく資金があるので徒歩ではなく馬車に乗りたいのです!


 そして私が馬車乗り場に着くとそこには見たことのある赤い髪の女性がいたのです。


「あれミルディ?どこかに行くのですか?でも挨拶できなかったのでちょうど良かったのです!」


「アリーゼ。あたしもあなたの旅に連れてって!あたしあなたのこと尊敬したの。だからあたしも夢に向かって歩き始めたいの。でも1人じゃ心細いし…お願い。」


 突然の申し出に驚き戸惑ってしまう。


 しかしこれは嬉しい話でもあるのです。まさかこんなところで友達ができるとは思ってもいなかったのです。しかもミルディは一人前の魔法鍛冶屋さんを目指しているのです。


 私とは目標は違うのですけど、夢を叶えたいという気持ちはわかるのです。それに1人じゃ心細いのなら私でよければ一緒にいるのです!


「私はただの聖女なのです。だからミルディが1人が困るのなら喜んで一緒にいくのですよ。」


「!!アリーゼ…ありがとう!」


 私はブラック親方の「これからもよろしく頼むな」の意味が今理解できたのです。きっとミルディが旅に出ることを知ってたのですね。親子の愛情は素晴らしいのです!


 さて、それでは早速乗り込むとしましょうか。行き先はとりあえずシルクナートです。その後は北の港町クレスタで海鮮を食べましょう。そしてそこで船に乗って違う国に移動しましょうかね。


 私はミルディと一緒に馬車に乗り込み、ついに次の街へ出発することになったのです。次は何があるのか楽しみなのです♪

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