62. あなたのために ~ミルディ視点~
アリーゼがアルスメルタの街で倒れてから一週間がたった。ロゼッタ様から原因を聞いて正直あたしには理解出来なかったけど、聖女の聖魔法の干渉を受けて血を流して倒れたということはわかった。
アリーゼには何回か会いに行っているけど、いつも笑顔であたしに接してくれている。でもあたしには分かる。それが作った笑顔だと言うことも。アリーゼはいつも強がっている。
本当は不安でいっぱいのはずなのに……そんな姿を見てると何も出来ない自分が情けなくなる……
そんなある日のことだった。いつものように部屋を訪れて扉を開けようとした時だった。部屋の真ん中で呆然と立っているアリーゼがいた。
そして……
──ぽろっ……ぽろぽろぽろ…………
──と涙を流していた。涙を流す姿なんて一度も見たことないのに……。
ならあたしが出来ることは一つしかない。あたしはアリーゼの不安を取り除く魔法防具を造る。それは「魔法」を無効化できるものならいいんだけど残念ながらあたしにはそんな技量がない。だから少しでも軽減できるもの。今のアリーゼに必要な魔法防具を造る。あたしは魔法鍛冶屋だから。
「あー!もう!」
工房の中に木槌の音が大きく響く。
こんなことしてても時間だけが過ぎていくだけだ。よし。気合い入れ直さないと!
「アリーゼのために一肌脱ぎますか!」
その日も夜遅くまで魔法防具を作っていたあたしは寝不足になりながらアリーゼのために。そんな時あたしの部屋の扉があく。そこにはロゼッタ様とフィオナがいた。
「ミルディさん!休憩しよ師匠が夜食作ってくれたんだ!」
「よっ余計な事を言うでないフィオナ」
「あははっありがとうロゼッタ様、フィオナ」
顔を赤くしているロゼッタ様。あたしはロゼッタ様が作ってくれたサンドイッチを食べることにする。うん。美味しい!ロゼッタ様って料理できるんだ……意外……。
「なんじゃその顔は?」
「別に何でもないよ」
「ところで作業はどうなのじゃミルディ?」
「うん…難しくて全然なんだ。素材取り出しも、付与も。アリーゼのためになんとか造ってあげたいんだけどね…」
「ねぇボクもお手伝いしちゃダメ?少しくらいなら役に立つと思うし!」
そう言ってくれるフィオナ。嬉しい申し出だけどこれはあたしの仕事だし……それに手伝ってもらうとしても魔法を使うから……あたしはちらっと二人を見る。
「魔力なら貸せる。ワシとフィオナを頼れミルディ。そのくらいなら手伝えるのじゃ。」
「うん!ありがとうロゼッタ様、フィオナ!」
次の日から三人で魔法防具造りに励むことにした。正直こうやって一緒に作業をしていると、あたしも仲間なんだと改めて認識できる。普段のあたしは戦闘とかできないし…。
こうして三人で作業すること数日……ようやく完成したのであった。これならば少しは役に立てるかもと胸を張って言えるほどの自信がある。早速これをアリーゼに届けよう!
魔法防具を造り終わる頃にはもう朝になっていた。さすがに徹夜明けで行くのは無理があったかなぁ。眠いよね。
そしてアリーゼの部屋の扉をノックする。喜んでくれるかな?喜んでくれたらいいな。そして扉が開く。
「はいなのです。あれミルディ?どうしたんですこんなに朝早くから?」
「アリーゼ!その…これ!」
あたしは手に持っていたそれを両手で渡す。受け取ってアリーゼは驚きの声を上げる。
「えぇ!?これって……ローブなのです!?私にですか?」
「今朝、出来上がったから持ってきたんだ。ほらアリーゼのローブさ血で汚れちゃったでしょ?」
「はいです……あの時はごめんなさいなのです……。それでこんな素敵なものを造ってくれたのですね!ありがとうなのです!本当に嬉しいのです!!」
満面の笑みを浮かべるその姿を見ると思わず抱きしめたい衝動に駆られるけど我慢する。いや変な意味じゃないからね?
「喜んでくれて良かったよ!それさロゼッタ様とフィオナも一緒に造ってくれたんだ。一応…「魔法」を軽減できる付与をしたんだけどさ」
「魔法軽減…もしかして…」
「あまり大した効果じゃないかもだけどさ、少しでもアリーゼの不安が取り除けたならいいな…」
すると急に抱きつかれた。あたしは何が起きたのか一瞬理解できなかった。目の前にはアリーゼの顔があり心臓が爆発しそうなほどドキドキしていた。顔真っ赤だよ絶対……恥ずかしいし……でも温かい。
そしてアリーゼがあたしから離れる。寂しさを感じると同時にちょっとホッとする。そんなことを思っているとアリーゼが口を開く。その言葉を聞いて嬉しかった。
「みんなの優しさで不安が消えたのですよ。だってこれでこれからまた一緒に冒険が出来るのです!」
そうアリーゼは笑顔で答えてくれる。あたしには分かる。この笑顔は嘘じゃない。そう言ってもらえると作ったかいがあったよ。
あたしは今一度、アリーゼと一緒に冒険が出来ることが幸せだと感じるのだった。
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