61. 誰よりも
私はアルスメルタの街へ魔物の軍勢と戦うため向かったのです。しかしそこで原因不明の胸の「痛み」を受け私は倒れてしまうのです。そしてロゼッタ様からその原因は私から消えた「聖痕」だと言うのです。
「消えたのではない?つまりどういうことなのです!?」
「……要するに聖女リスティは何らかの方法でお主の身体に残っている「聖痕」の一部を強制的に活性化させたのじゃ。結果その刺激によってお主の聖魔法とやらが発動したのであろう。」
「もしかしてあの聖魔法の結界…?」
「ただ、それだけでは終わらん。おそらくお主の中に残った僅かな「聖痕」も活性されて暴走を起こしていたのじゃろう。故に身体中に激痛が走り……」
「待って欲しいのです!?ちょっと頭の整理ができないのです!?」
「簡単に言えば聖女の「共鳴」の力でお主の中の「聖痕」の一部が強引に活性化させられ暴走していたのじゃ。それにより胸から大量の血を流し倒れたわけじゃ」
「な、なるほどなのです……えっ!?血?」
私は自分の胸を見る。すると一面におびただしい血が純白のローブについているのです。だからあんなに激痛が……良く死ななかったのです。そういうとロゼッタ様が私を再びベッドに押し倒して布団をかけてくれる。
えっちょっ!?いきなり何なのです?私が困惑しているとロゼッタ様が私の額に手を置く。とても暖かい。まるでお母さんのような温もりを感じるのです。あれ?なんだろうこの気持ち……凄く安心して……そのまま私はまた意識を手放すのでした。
「アリーゼ。お主は少し頑張りすぎじゃ…今はゆっくり休むがよい。」
アリーゼが眠った後、ロゼッタは静かに微笑む。そしてそのまま立ち上がる。部屋を出ると廊下には心配そうにしているフィオナがいた。
「ん。フィオナ」
「あっ師匠…」
ロゼッタはそれを見て少し安心すると話しかける。実は彼女はずっと部屋の外で待っていたのだ。もちろんアリーゼの事が心配で心配で仕方なかったのだが。それでも自分が入っていく事で邪魔をしてはいけないと思っていたからだ。
「お主も気を遣う必要なかったぞ?」
「2人が真剣な話してたから、ボク邪魔になっちゃうし…」
そうフィオナが言うとロゼッタはフィオナの頭に手を置き優しい顔で話す。
「邪魔なわけなかろう?お主も仲間じゃ。今度からそういう時は遠慮するでないぞ。」
「師匠……うん!」
そして次の日。目が覚めると既に太陽は高く昇っていたのです。私が起きると同時にノックが響き扉が開く。そこにはフィオナが食事を持って来てくれたのです。
昨日の事件の後なのによく寝ていたので起こさないように気を使ってくれたみたいです。私はそんな彼女に感謝をしながら食事を済ませると外に出て、魔法都市ルナノワールに戻るための馬車を探すのです。
「確かこの街の入り口に待機しているはずなのです。」
「えーと……あっあそこだね!」
入り口付近には馬車が止まっており、近くまで行くと御者の男性が声をかけて来る。
「おや?あんた達は聖女様たちといた?そっちの子は身体はもう大丈夫なのかい?」
「はい。ご迷惑をおかけしましたのです。」
私が頭を下げると御者さんはとても優しげに笑う。どうやらもう大丈夫だと察してくれたみたいなのです。良かったのです。
「なら良いんだ。さぁ乗ってきな!出発するぞ!!」
そう言われ馬車に乗ると動き出す。窓から外を見ると街の人達が集まって見送ってくれていた。本当にいい街なのです……聖女リスティ様が救ったのですね……。
しばらくすると都市の入り口の大きな門を抜けていくのです。そしてようやくルナノワールに帰ってきたのです。馬車はそのままマジカリア城に向かい止まる。そして馬車から降りるとミルディがそこにはいたのです。
「アリーゼ!?無事なの!?倒れたって聞いてあたし心配で…」
「心配しないで大丈夫なのです。もう元気なのです!」
「本当?でも一応診てもらったほうがいいよ!ほら行こうアリーゼ!」
「あの……ミルディ痛いのです……」
そう言って私の腕を掴みミルディは城の中に入っていく。そのあとお城の救護兵によって私は治療を受けるのでした。
そしてその後……私はベッドの上にいたのです……まぁ当然と言えば当然なのですが……私が起きてから1週間。私は安静のためまだマジカリア城に滞在することになったのです。私は昔「聖痕」があった右の胸の辺りを触る。今は何もないのです。ただの古傷になっているのです。
それでも今でもたまに痛みを感じるような感覚に陥る事があるのです。だから今回みたいになったときはやっぱり不安になるのです。今回のことは正直私も予想していなかったのです。
「こんなんじゃ…みんなと旅をするのは難しいのですかね…。」
私が呟いていると扉が開き入ってくる人がいるのです。それはミルディなのです。
「具合どうかな?」
「大丈夫なのですよ。もう痛みはないのです!」
「そっか。よかった〜」
そう言って彼女は椅子を近くに持ってきて座る。そしてミルディは急に真面目な顔で話始めるのです。
「ねぇアリーゼ。ごめんあたし、アリーゼの嘘すぐにわかっちゃうんだ。」
「なっなんで……」
私は驚いていると、ミルディはクスッと笑い話し始める。
「だっていつもアリーゼの笑顔見てたらわかるもん。なんか無理して笑ってるような気がして……」
ミルディはとても素直なので隠し事とかができないのでしょう。だからこそ私のことが心配だったのかもしれません。私はニッコリ笑いながら話しかけます。きっと彼女には敵わないのです。それこそ一生かもしれないのです。だからミルディと共に旅ができて良かったのです。
「正直怖いのです。また同じことが起きたらと思うと……聖女失格なのかもしれないのですね……」
「そんなことない。少なくともあたしとロゼッタ様、フィオナはアリーゼが聖女だって思ってる。誰よりもね。」
「ミルディ……」
「それにね……あたし思うんだけど、アリーゼはアリーゼらしく生きてほしいんだ。」
そう言うと私の隣に座って肩に頭をコツンと当ててくるのです。ミルディの言葉を聞いて、今まで心の中で引っかかっていた物がスゥーっと抜けていくような感じがしたのです。ミルディありがとうなのです。
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