91. 始まりの書
未開の地にできた新しいダンジョンに挑む私たちは今度は大きな蜘蛛の魔物ドレインスパイダーと対峙することになったのです。そしてミルディとフィオナ、そしてソフィアがそのドレインスパイダーの糸の攻撃で動きを封じられ魔力も吸いとられてしまったのです。まずいのです。ピンチなのです。
そして唯一のロゼッタ様の爆炎魔法もみんなを巻き込んでしまうので使えない状況なのです…。どうしたら…。
「アリーゼ。ワシが何とかあの糸を爆炎魔法で切り裂くのじゃ。お主はその間にあやつらを助けるのじゃ。」
「出来るのです?」
「ワシを誰じゃと思っておる。極悪非道の魔女、竜殺しの魔女。あの大魔女ロゼッタ=ロズウェルじゃぞ?」
私が呆然としている間にロゼッタ様は魔方陣を刻み杖を振りかざし詠唱を始めたのです。
「3人とも少し我慢するのじゃ!燃えるのじゃ!火炎魔法・フレイムピラー!」
そして次の瞬間には……
――ゴオオオォォッ!!!! 凄まじい音と共に辺り一面に巨大な火柱が立ち上ったのです。これならきっと……。
――ブチブチィ 何か嫌な音がしたと思った直後だったのです。
――バァンッ!!! そんな音をたてて糸が弾け飛んだのです。
「あとは任せるのです!」
私はドレインスパイダーに向かって走り、その勢いで思い切りジャンプしてその身体にロッドを思い切り叩きつけるのです!
――グシャッ そんな音とともにその巨体が地面に倒れ込む。そのあとも何発かロッドを叩き込みドレインスパイダーは動かなくなりました。ふうっこれで安心なのです。
でもまだ油断はできないのです。このドレインスパイダーを倒したことでまた他の魔物が集まってくるかもしれないのですからね。
「痛い……火傷したよこれ……」
「我慢するのじゃ。あれしか助かる方法はなかった。あれでも当たらぬように最低限の威力でやったのじゃ。」
「そう言えば魔物は?……うっ……」
「ミルディ。安心するのです!潰しといたのです!」
ミルディは青い顔をしてるのです。まぁ少し潰しすぎたかもです。だって地面が大きく陥没してクレーターみたいになってますからね。あのまま放置するとまた集まってきそうだったのでしょうがないのです。なんにせよみんな無事で良かったのです!
私たちは更に奥へ進んでいくことにするのです。正直みんなボロボロなのですね。ロゼッタ様がかろうじて戦えるくらいなのです。もうポーションもないですしね…。ここは私が頑張らないとなのです!
それから数時間ほど進むとだんだん道が広くなり天井が高くなってきた気がします。そしてついに最深部に到着したようです。そこには……古びた祭壇があるのです。
「ここがダンジョンの最深部だよね?」
「魔物がいなくて良かったですね……」
「うん。ボクも魔力ないし……。」
なんて幻想的なのですかね。あのキルシュ古城の天空のチャペルのような雰囲気なのです。まるでこの場所だけ時の流れが違うような不思議な感覚さえあるのです。そしてしばらく周囲を観察しているとあることに気がついたのです。
――キラッ そんな光り物が目に入ったのです。これはもしかしたら……。私は急いで駆け寄りそれを手に取るのです。それは……
――カランッ 金属でできたカギなのです?私が回りを見渡すと祭壇の机の上に一つの箱が置いてあるのです。
それを開けてみると中には一冊の題名のない黒い本が入っていたのです。
「おお!これが禁書なのですか!」
「本当にあった…やったじゃんアリーゼ!」
「アリーゼ様、読んで読んで!」
感動なのです!早速読んで見るのです!私は本のページを開くとそこには見たことのない文字が書かれていたのです。古代文字?魔聖言語?どちらも違うのです…。うーん。読めない……。
「何が書いてあったんでしょうか?」
「読めないのです。文字が見たことないものなのです。」
「アリーゼ。少し見せてみよ。」
私はロゼッタ様にその黒い本を渡すとロゼッタ様はその本を読み始める。
「……ふむ。なるほどのぅ。この本は読めんな。でもお主の暇潰しにはいいかもなアリーゼ?」
「絶対解読して見せるのです!」
そしてそのあとはロゼッタ様の爆炎魔法で何とかダンジョンを抜け出し、こうして私たちの未開の地にできた新しいダンジョンの攻略は終わるのでした。
ボロボロになった私たちは宿屋に戻りミルディとフィオナとソフィアはそのまま倒れるように寝てしまったのです。その日の夜。私はあの黒い本の解読をするため読み続けていると、ある単語だけが読めたのです。
「黒い…光の柱…?」
私は本を閉じ夜風にあたるため外に出るとそこにはロゼッタ様がいたのです。
「ロゼッタ様」
「なんじゃ?お主も風にあたりにきたのか?」
「…意地悪なのです。」
「何のことじゃ?」
ロゼッタ様はおそらくあの本が読めているのです。私はさっきまで見ていたあの黒い本のことを話すことにしたのです。
「黒い光の柱。あの本にはそう書いてあったのです。前にロゼッタ様が私とミルディに話した大聖女ディアナ様の話なのです。それにあのダンジョンに入る前も様子がおかしかったのです!」
「ほう。やはりお主ならすぐに気づくと思ったのじゃ。あの本はあの時の戦いを書いた本じゃ。ワシも全部は読めんがすぐに気づいた…見覚えのある文字じゃったからな。その本は大聖女ディアナ本人が書いたものじゃよ。」
やっぱりそうなのですか。だとしたらあの本に書かれていることはきっと……。もしかしたら「聖痕」を失った後の事も書かれているかもしれないのです。
「そして、あの遺跡はワシとディアナが最後に別れた場所じゃ。大聖女と魔女……生きる世界は違うのじゃ。」
「そうだったのですね……。ロゼッタ様、待っててくださいなのです!私は絶対この本を解読して見せるのです!」
「まぁお主ならできるかもしれんな」
心地よい夜風が私の背中を押してくれている。これからの道を歩くのを応援しているかのように。きっとこの本と私は出会う運命だったのかもしれないのです。私はその本を胸に抱き締めるのでした。
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