107. 最終楽章(フィナーレ) ~二人の聖女~
あれから2日がたったのです。私とミルディはあのあと馬車でランバート王国の王都に向かいみんなと合流をする。ランバート王国は聖エルンストの統治下に置かれることになったのです。でも大丈夫。きっと新しくランバート王国は生まれ変わることができるのです。
今私たちはランバート城の王宮にきているのです。今日はライアン王子とマルセナの婚約パーティーなのです。普段着なれないドレスを身に纏い、私はお城の入り口で待っているのです。するとミルディがソワソワし出したのです。
「あたし、大丈夫かな?こういうドレスみたいな格好ほとんどしないし…」
「よく似合ってますよ。問題はないかと」
「そうだよミルディさん。可愛いよ。」
ミルディは照れながら聞いているのです。そしてそれに答えるソフィアとフィオナ。ロゼッタ様は相変わらずですけど。
「聖女アリーゼ様。少しよろしいですか?」
「はい?」
ランバート王国の兵士が私を呼びにくる。なんとマルセナが私に会いたいようなのです。うーん。正直緊張するのです…声は聞いたのですけどその姿は、やはりあの時から見ていないのです…。
兵士に連れられて私はマルセナの部屋に行く。ノックをし中に入ることにする。
「失礼しますなのです。あっ…」
そこには豪華なドレスを着たマルセナがいたのです。マルセナは私を見て微笑みかける。とても綺麗な笑顔だったのです。私は深呼吸をして、マルセナに近づく。そして手を差し出すのです。
「マルセナお久しぶりなのです。」
「アリーゼ。そうね…あの時以来ね。あの…本当にごめんなさい!」
「はい?」
「私は自分が聖女として認められたくてあなたをカトリーナ教会から追い出してしまった……ずっと謝りたかったの。本当にごめんなさい。」
頭を下げるマルセナ。そんなことを気にしていたのかと思うのです。私はゆっくりと首を振る。
「もう気にしていないのです。それより私はマルセナに嫌われてるかと思っていたのです。」
「嫌ってなんかいないわ。私はあなたのような聖女になりたかったのだもの。まぁ正直邪魔だとは思っていたけど」
「ハッキリ言うのですね?マルセナ?」
「ええ聖女は嘘をつかないの。あと私はもう素の自分で生きていくと決めたから。」
どうやら吹っ切れたようです。そう私に告げるマルセナは初めて出会った時のような真っ直ぐな笑顔をしていたのです。よかったのです。これで私たちは本当に仲直りができたのですね。するとドアの方から物音が聞こえてくる。誰かが入ってきたみたいです。振り向くとそこにはライアン王子とレオンハルト王子がいた。
「聖女アリーゼ様!お久しぶりです!お元気でしたか?」
「はい。元気なのです!」
「それは良かった。ランバート王国を救ってくれて感謝するよ」
いえいえ当然のことなのです。でもその言葉はとても嬉しいものです。
「これからランバート王国は大変になる…兄上大丈夫ですか?」
「その事なんだが、この国の王はお前がやれライアン。私は国政には向いていない。精々騎士団をそのままやらせてもらうさ。」
「しかし兄上!?」
ライアン王子は驚く。それも仕方ないのです。いきなり王位を任せると言われれば誰だって驚くのです。でもレオンハルト王子は本気なようなのです。
「ライアン。お前ならできる。それに優秀な元聖女の妃もいることだしな?」
ニヤリと笑うレオンハルト王子。あーこれは確信犯なのです。そして真っ赤になって慌てるマルセナ。その後みんなでパーティー会場に向かうことになるのです。道中色々な人に話しかけられるのです。やはり有名になるとやっぱり違うのです。
パーティー会場ではすでにたくさんの人がいて、私たちが入ると同時に拍手喝采が起こる。まずはマルセナが挨拶をするのです。
「皆様。本日は私とライアン王子の婚約パーティーに来ていただきありがとうございます。私はマルセナ・ランバートとして生きて行きます。どうかよろしくお願いいたします。」
パチパチと拍手が巻き起こる。そしてライアン王子の番なのです。
「皆さん。今日は私の婚約パーティーに集まってくれてありがとうございます。私もまだまだ未熟者です。でもいつか立派な王になれるように頑張ります。だからどうか見守っていてください!これからはマルセナと共にランバート王国の発展を目指します!」
パチパチと拍手が起きる。いい感じの雰囲気になったところでライアン王子が私を呼ぶのです。
「聖女アリーゼ様。ぜひ一言お願いできないかな?あなたはこの国の救世主なのだから。」
「えぇ…困るのです。何を言えば…」
突然振られて焦る私。何を言うべきなのか……とりあえず考えることにするのです。そして思いついた言葉を言ってみるのです。私は一歩前に出てみんなの方を向きます。こういうのはやったことないのです。聖女アリーゼとしての初めてのスピーチが始まるのです。
「あーあー。えっとご紹介に与りましたアリーゼ=ホーリーロックなのです。私も正直何を話せば良いのかわからないのです。でもいい話があるのです。」
私は息を大きく吸い込み、話始めるのです。
「大聖女ディアナ様はおっしゃいました。信じるものには必ず奇跡が起こると。私は今回それを実感したのです。私を信じてくれた人達のおかげで今こうしてここにいることができるのです。」
信じてくれる人がいる。ただそれだけで人は強くなれる。私はそう思うのです。私は両手を広げ話を続ける。
「私はこれからも信じ続けるのです。そうすれば困難に陥っても必ず奇跡が訪れるということを。だからランバート王国は必ず生まれ変われる。そう信じているのです。」
私はその場で一礼する。会場からは溢れんばかりの歓声が聞こえる。
私は改めて思ったのです。私は誰かを救いたい。苦しんでいる人を一人でも多く助けてあげたい。それが今の私の願いであり夢なのです。するとマルセナが私に微笑みながら声をかける
「アリーゼ。あなたはやっぱり私の憧れの聖女様ね。あなたと出会えて良かった。」
「マルセナ。ありがとうなのです。ライアン王子と末永くお幸せになのです。」
二人は見つめあい笑い合う。お互いがお互いを目標に「聖女」として頑張ってきた。いつしかすれ違ってしまった気持ちも今は……。
それぞれ違う道を歩んでいくことになるけど、それでもまたいつしか二人の聖女は困っている人々を救うかもしれない。そんな予感がするのだった。
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