33. 王族を拾う
私たちがラインストーンに滞在してもう5日が立つ。幸い日焼けの痛みももうなくなってきたのです。王都への資金稼ぎも順調に進んでいるのです。それはこの前の出来事からフィオナが頑張って魔物を討伐出来るようになったおかげでもあるのです。
ミルディの魔法錬金も順調ですし、まぁ私が一番何もしていないのですけどね……。私は部屋で本を読んでいる。いつも通りのんびりと。
「ふぅ。今日もいいお天気なのです。もうそろそろみんな帰ってくる頃なのですね。」
そしていつも通りギルドの魔物討伐依頼を終えて、ロゼッタ様とフィオナが帰ってくる。
「フィオナお主は少し前に出過ぎじゃ。ワシが魔法を使えない場面が多かったぞ。もう少し周りをよく見て動くのじゃ。」
「はい師匠気を付けます!」
「うむ。」
今日も2人は反省会をしている。その様子を見ると凄い微笑ましいです。少し前とは違いもう中睦まじい師弟関係なのです!
「あっアリーゼ様読書ですか?何の本を読んでるの?ボクも読みたいな。」
「フィオナも本に興味あるですか!?いいのですよ!今読んでいるのは杖で叩かれない方法~初級者編~なのです。」
「おい。何て言うタイトルの本を読んどるのじゃお主は。嫌みかアリーゼ?ワシへのあてつけか?」
「そんな事ないのですよ。あっでもフィオナは読んでおいたほうがいいのですよ?すぐに使える場面がくるかもなのです!」
私がそういうとロゼッタ様は膨れているのです。う~っこう見ると本当に幼子に見えて可愛いのです!でもこれを言うと杖で叩かれるので黙っていることにする。早速役にたったのです。
ちなみにフィオナは私が本を貸してあげたのが嬉しかったのか、少し頬に赤さが見える気がする。
すると私と目が合い、フィオナはそれに気づいたのかさらに顔を赤くして照れてた。
(うんやっぱりこういうところが可愛らしいですね)
「それにしてもミルディは帰っとらんのか?少し遅いのぉ?」
「そういえばそうなのです。何かあったのですかね?」
私たちがそんな事を思っている時タイミングよくミルディが戻ってくるのです。でも少し様子がおかしいのです何かあったんですかね?
「ただいま!」
「遅いぞミルディ。何かあったのか?」
確かにちょっと焦ってるような声にも聞こえるのです。どうしたんでしょう?というかミルディとともに1人の見慣れない少女がいる。
「ミルディその子誰なのです?まさか誘拐とかではないですよね?」
「誘拐!?ミルディさん…」
「そんなわけあるか!」
まさかな話なのですけど……一応注意しないと危ないのです。とりあえず話を聞かないことには何もわからないので全員集まって話を聞くことにするのです。
もちろんその女の子には紅茶を入れてあげる。とても喜んでくれたようだったのです。とりあえずロゼッタ様が話始めるのです。
「っでお主名前は?」
「サリア=ジルベールです。」
「ほう。サリア=ジルベール…ふむその格好貴族か?」
「いえ。一応王族です。」
なぜこんなところに王族がいるのです?しかもただの魔法鍛冶屋のミルディと?ますます謎に包まれてるのです。
「私はアリーゼただの聖女なのです。」
「聖女様!!?まぁ…初めて本物の聖女様を見ました。凄いお綺麗な方なのですね。」
「ボクはフィオナ。よろしくねサリア様。」
「あのさ…なんでみんな普通に受け入れちゃってるの!?王族だよ!?」
はい?王族の方です。ミルディは王族の方と会う機会がないから仕方ないのかもしれないのです。私やフィオナは立場上、王族とあっているのです。
「ところで、なんでミルディと王族が一緒にいるのじゃ?」
「逆にミルディが何か失礼な事を!?」
「え。ミルディさん…」
「それをやめて!あたしが魔法素材を換金してたら広場で俯いていたから声かけたんだけど…。」
とりあえず私たちはサリア様にまず何故このような事態に陥ったかを順番に説明してもらう必要があるようだ。ということでまず状況の説明をしてもらったところでわかったことがいくつかある。
まず私たちが初めてラインストーンに着いたときにあった大型魔法船に乗っていたこと。それでたまたま海に出た時に嵐に巻き込まれてしまい流されてしまっていたこと。なんとか流れ着いた先がこのラインストーンであったこと。
ただそれを聞いただけならそこまで不思議なこともないのですけど、問題はそこではないのです。だって大型魔法船は大体200人くらい乗れるはずなのに乗っていたのはサリア様だけみたいなのです。
もしかしてソルファス王国の王都で何かあったのです?しかしサリア様は詳しい話は私たちにはしてくれない。ただ「王都」に行きたいとの一点張り。
だからそれ以上聞くことは叶わなかった。でも明らかに何かを隠しているのはわかるのです。結局これ以上聞いてもこの子自身が口を閉ざしてしまったら何も聞けなさそうだと思った私は仕方なく追求をやめることにしたのです。
とりあえず私たちはサリア様を大型魔法船へ送り届け、宿屋に帰りこれからの事を話すことにしたのです。そしてミルディが話を切り出す。
「あのさ。みんなゴメン。あたしは放って置けない。正直面倒なことになったと思うけど。」
「謝る必要はないのです。きっと私でも同じことをしているのです!」
「そもそも一体どういう理由で王都に行きたいんだろう。でも全然ボクたちには話してくれないし…」
「それが分からない以上こちらも迂闊に手を出すことが出来ないのです。困ったのです。」
とはいえやはりこのままにして置いておくことは出来ない問題だと思うのです。もし仮に彼女が誰かに追われているという可能性が高ければ保護することも視野に入れなければならないのです。
場合によっては匿わなければいけない可能性もありますし……もしそれなら危険を伴うことですがやるしかないのです。幸い彼女は強い魔力を持っているような様子もないので私たちに何か害があるとも思えないのです。
それでも彼女の身に付けていた物を見ると高価なアクセサリーなどが多いので王族という身分には偽りはないのです。ならなぜ何も話さないのか。
私たちは王族と名乗るサリア様をどうするか今日1日考えることにしたのでした。
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