40. 大演説
私たちはラストンの地下水路から進み何とか王都までたどり着いたのです。もう相手に顔がバレている私とロゼッタ様、サリア様を除いてミルディとフィオナに王都内の状況を確認しに行ってもらったのです。すると大広場でサリア様の妹アリア=ジルベール様の公開処刑が行われることを知るのです。
逸る気持ちを抑えて冷静になるのです。処刑を阻止できるのはきっと私だけなのです。私は聖女なのですから。
「ミルディ。サリア様をお願いなのです。」
「うん。わかった。さぁサリア様。アリーゼたちが何とかしてくれるから大丈夫ですよ。今は信じてください。」
ミルディはサリア様を連れて安全な場所に離れてもらう。今のサリア様は大広場に連れていったら何をするか分からないのです。
「さて。ロゼッタ様とフィオナは少し暴れてもらえますか?」
「え?暴れる?」
「うむ。アリーゼお主何か隠しておるな?」
「なんの事なのです?あ…もしかして見られてたのです?」
私はラインストーンでサリア様の話を聞いたあと、とある場所に手紙を送っていたのです。それが問題解決になるかは分からないのですが一応保険なのです。
「詳しく話をしている暇はないのです。今は私を信じてほしいのです。」
「ふん。いいじゃろ、フィオナやれるか?」
「うん!ボク頑張るよ!」
私は大広場に、ロゼッタ様とフィオナは違う場所で暴れてもらい戦力を分散させることにする。そして急いで大広場に向かうのです!
私が大広場にたどりつくと、目の前では公開処刑の準備が進められていた。処刑台の上には拘束されたままのアリア様がいたのです。そして周りを見ると多くの住民、貴族や兵士が集まっていたのです。
そしてついに公開処刑が始まるのです! まず最初にアリア様が現れて罪状を読み上げられるのです。そのあとに処刑人が現れて火刑を始めようとするのです。周りにいた民衆が騒ぎだす。
「あーあ。あれじゃ助からないわね。若いのに可哀想」
「公開処刑ってやって良かったのか?」
「知らねぇ。人が人を処刑するのは世界の掟で禁止されてるはずだけどな?」
「あの女は王族の血を引いているのよ。だから王族の血を引くものを根絶やしにする気なんだと思うわ。」
もう時間がないのです!私は考える暇もなく民衆を掻き分けて処刑台の前に飛び出す。そして声を上げる。
「静まるのです!!!!」
突然現れた私を見てみんな驚いています。私の姿を見て民衆がざわめき出す。そして騎士たちが剣を抜き私に向けて突きつける。
それを見た私は持っていたロッドを地面に突き刺しアリア様を守るように立つ。
周りの人たちはさらに騒ぐ。
でもそんなことはどうでもいいのです!! 今大事なのはこの場を収めることなのです!!! 私は大きく息を吸うと叫ぶように言う。
「皆さん聞いてください!!!」
シーン…… いきなり出てきた私に対してみんなの視線が集まる。
「私は聖女アリーゼ=ホーリーロックなのです。大聖女ディアナ様はおっしゃいました。人は決して人の命を奪ってはいけないと……。それは神の教えに反することです。この国は間違っています!貴方たちは本当にそれで良いと思っているのですか!?」
シーン…… 誰も何も言わない。ただ静かに私を見つめているだけ。
「もう一度言います。貴方たちのしている事は間違いです。これ以上罪を重ねないで下さい!」
「黙れ小娘ぇ!!!」
一人の兵士が叫びながら剣を持って突っ込んでくる。それを合図にしたかのように一斉に武器を持った人たちが襲いかかってくる。
「やれるものならやればいいのです!!私は決して暴力には屈しないのです!!それが聖女なのです!!」
その時だったのです。上空から光が降り注ぐと私と処刑台を取り囲むように強力な結界が展開される。これは聖魔法…?
何が起こったのかわからないのです。突然の出来事にざわめく民衆たち。そんな中一人の女性がゆっくりとこちらに歩いてきたのです。
女性は白いローブを着ていてフードを被っていたのです。その姿を見た瞬間私の全身に鳥肌が立ちました。だってその女性からは人間とは思えないほどのとてつもない魔力を感じたのです。一体何が起きたというのですか!?︎
私を含め周りの人たち、もちろん兵士たちも呆然としている中、女性は処刑台まで歩いてきて処刑人に話しかけたのです。すると処刑人はそのまま倒れてしまったのです。一体何が……
そしてその女性は白いローブのフードを取るとそこには黒髪の美しい顔立ちをした女性がいたのです。その美しさはまるで女神様のようで、思わず見惚れてしまうのです。私は慌てて我に帰るとその女性から声をかけられる。
「いい演説だったわ。あなたの聖女の信念が私をここに間に合わせ、その女性を救ったの。同じ聖女として誇りに思うわ聖女アリーゼ。」
「あなたは……」
その女性が空に手をあげると大広場を取り囲むように騎士たちがやってくる。そして公開処刑は中止され、公開処刑に関わっていた者たちは全員捕らえられたのです。あの紋章は…『聖エルンスト』の……良かった間に合ったのです。
聖エルンスト。この世界では「聖地」と呼ばれている国なのです。優秀な聖女が集まっているエルンスト教会。聖女なら誰でもここの聖女になりたいと憧れるものなのです。私はそこに手紙を送ったのです、助けてもらえるかもしれないと思って。この世界では「人を処刑してはいけない」という世界の掟があるのです。
「ありがとうございますなのです。助かったのです。」
私はその女性に頭を下げる。その女性は優しく微笑むと処刑台に拘束されているアリア様を見る。
「彼女は?」
私はその質問に答える。
「アリア様なのです。ジルベール国の王女様なのです。」
それを聞いたその女性はアリア様に近づき拘束を解く。そして一言呟く。「”解除”」次の瞬間アリア様の体が光り輝く。そしてアリア様の体にあった傷や火傷の跡は綺麗さっぱりと消えていたのです。アリア様は目を覚まして自分の体を触って驚いているのです。私は急いで駆け寄る。
「アリア様大丈夫なのです!?︎」
「えっ……あれ?痛いところがないわ?あのあなたは?」
「私はアリーゼ。ただの聖女なのです。」
私はアリア様を抱きしめる。そしてその女性に改めてお礼を言う。
「本当に助かったのです。ありがとうございましたなのです。」
「いえ。私は世界の秩序を守る聖エルンストの聖女として当然のことをしただけよ。お礼なら可愛らしい文字で『この手紙を読まないと後悔するのです。あなた方の覚悟をお貸しいただきたいのです』と手紙を送ってきたどこかの誰かさんに言うといいわ。ねっ聖女アリーゼ?」
こうして、私たちは無事にアリア様を救うことに成功したのです。本当に良かったのです。
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