85. 魔法創作 ~ソフィア視点~
外はこのシェルタバード島では珍しく雨が降っている。ここ最近はダンジョン攻略をしたり、魔法修練をしたりと忙しかったからたまにはこういう何もしない日も大切だと思う。
ロゼッタ様とフィオナさんとミルディさんは買い物に出かけている。だからこの部屋の中には私とアリーゼ様が残っている。アリーゼ様は相変わらず読書に励んでいるようですね。
というかこの前は世界地図を見ていたような…本当に何でも読む人だと感心するのと同時にやはり謎な人という感情も私の中に出てくる。
まぁそんなことはどうでもいいとして、私は私でやることがないわけじゃない。せっかくだし、今のうちに新しい魔法でも作ってみましょうかね? 私がやることとはつまり魔法の創作である。と言っても別に難しいことをしようとしているわけではない。ただ単純に思いついたものを作ってみるだけだ。
風魔法と土魔法どっちがいいか…うーん悩むところだけど今回は風魔法にしておこうかな。
ということでまず最初に思い浮かんだのが風を起こすイメージだ。それなら簡単だろうと思うかもしれないけど実はこれが意外と難しいのだ。というのもこの世界の魔法は基本的に詠唱して発動するものなのだ。
それはなぜかと言うと魔法陣と呼ばれるものを描いてその魔法陣を通して魔力を送り込むことによって魔法を発動させるからだ。そのため、無詠唱などというものは存在しないし、魔法陣なしに魔法を使うなんていうこともできない。
「ソフィア何してるのです?」
「えっ?ああ。新しい魔法を作り出そうとしてるんですよ。」
「すっ凄いのです!さすがは賢者の血縁なのです!魔法書もなしで使えるなんて初めてみるのです!」
凄い食い付いてくるアリーゼ様。世の中の魔法士は独学で魔法を生み出している人の方が多いんだけどな……魔法書を読んでその魔法が使えるのはいわば天才レベルだから。そう、ロゼッタ様みたいに。
ちなみにだけど、魔法書というのは魔法陣が描かれた本のことである。魔法陣を描き、原理さえ分かれば誰でも簡単に同じ効果を出すことができるため重宝されているが威力が高いものほど高価でもあるし、さっきも言ったけど誰でも使えるものではないの。原理が難しいからね。まぁ参考にすることはできるけどね。
「私見たいのです!魔法を作るところ。ソフィア見せてほしいのです!」
「成功するか分かりませんよ?とりあえずやって見ますけど……」
という事で一応やってみることにする。両手を前に出して風が起こるようなイメージ……
うん、やっぱり無理そうだよねこれ……。そもそも風のイメージがよくわからないし……うーんどうしようかな。少し考えた結果、手を使わずに風を起こしてみることにした。
これは結構前から考えていたことなんだけどなかなか実行に移す機会がなかったものだ。だって普通に手を動かした方が早いですもん。とりあえず魔法陣を刻みイメージした通りに魔力を流し込む。すると次の瞬間部屋の中に突風が巻き起こった。
あちゃ〜ちょっとやりすぎましたかね?アリーゼ様に色々なものが当たってしまったみたいだし…
「あっアリーゼ様大丈夫ですか!?」
「痛いのです…。」
「すいません!魔力の加減が出来なくて…」
「ふむふむ。なるほどそうやって魔法をつくるのですね。勉強になったのです!ありがとうございますソフィア。」
そう言うとアリーゼ様はまた読書に戻ってしまう。本当に謎だ。あの状況からどうやって平常心に戻れるのか知りたいくらいだよ全く……。とか考えているとアリーゼ様が新しく持ってきた本を横から覗くと……
【魔法の簡単な創作方法】
1.自分がどんな魔法を使いたいかを紙に書き出す。(自分の理想とする魔法像を明確にしておく)
2.その魔法に必要な属性を調べてどの魔法陣を使えば作れるか考える。(属性は火・水・風・土の4種類。光と闇は特殊すぎて作るのは不可能とされている)
3.魔方陣を書き起こす。
4.魔力を込めて発動。
5.完成。
こんな感じで作れます。もちろん他にも方法はありますがだいたいはこの5ステップになります。あとは自分でオリジナルの魔法を作り出すことも可能ではあるのですが、難易度はかなり高いと思ってください。理由としては自分の想像力に左右されるところが大きいためです。
凄い親切な本ね……。一つ補足しておくと例えば先ほどの魔法の場合だと風の魔法を作ろうとした時に風を起こすための想像が足りなかったり、込める魔力の量が少なかったりすると失敗する確率が高くなるの。
「あっソフィアも読むですか?私も気になって読んでしまったのです。ちょうど買っておいた本の中に同じようなものがあったのですよ。」
と本を差し出してくる。それを受け取ってページをめくる。確かに似たようなことが書いてあったが細かい部分まで説明されていてとてもわかりやすかった。そして私は早速試してみることにしました。
まず最初にやりたいことはさっきの風を起こすやつだ。あれが成功したら次は違う魔法に挑戦してみよう。私がそう思っているとアリーゼ様は私を見て嬉しそうにしていました。
さぁまずはイメージを固めないとね。といっても風のイメージか……うーんなんだろう? 強い風?弱い風?そよ風?竜巻みたいな風?……よし決めた。今回は一番最初に思いついたものをやってみましょう。
「頑張るのですソフィア!」
「あっはい!」
手を前に向けてイメージをして魔方陣を刻みそこに魔力を流していく。するとすぐに風が起こり始める。成功しているようだ。そのままどんどん風を強くしていく…… どれくらい強くしたらいいんだろ……とりあえず限界まで強くしてみるか…… そんなことを考えながら更に風を強めていく……うっなんかきつくなってきた……これが限界ね。
「はぁはぁ…何とか制御できたわ。これを練習していけば強くなれるはず。」
「凄いのです!私もお役に立てて嬉しいのです!」
なぜか私より嬉しそうにするアリーゼ様。本当にこの人は謎だわ。
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