7. 馬車の旅路
馬車の旅が始まり、2日ほど経ったのです。今のところは何も問題なく順調に進んでいるのです。
そして今日はいよいよシルクナートの街に到着するのです。どんなところなのかとても楽しみなのです! ちなみにこの馬車は乗合馬車と言って決まったルートを定期的に行き来しているものらしいのです。
だから道中に他のお客さんもいるし、護衛の冒険者の人も乗っているのです。
「ミルディ。あの剣士の方強そうなのです」
「えっ?あっうん。そうだね、って言うかあまりはしゃがないでよ。子供じゃないんだし、恥ずかしいから。というかアリーゼっていくつなの?」
「私は14なのです。」
「はぁ?もしかしてあたしの事バカにしてる?」
ミルディがなぜか少し怒っているのです。おかしいのです。世の中の女性は少し自分の年齢を若く言うと本に書いてあったのです!それなのになんで怒ってるのかわからないのです。
「もしかしてアリーゼさ…サバ読んでるの?」
「本に書いてあったのです!」
「いや、アリーゼは無駄なの。それはもっと年上の方なら通用する方法だから。あたしは17。本当は?」
「19なのです。私の方がお姉さんなのです!」
私は笑顔で答えるがミルディは大きなため息をつき、頭を横に振っていたのです。失礼だと思うのです! そんな感じで和気あいあいと話しながら馬車は進んで行く。
しばらくすると道が悪くなりガタゴト揺れだしたのです。そして馬車が止まる。
「すいませんお客様!少し待っていただけますか?」
「何かあったのかな?でも仕方ないか。」
「なんでしょう?気になるのです。」
馬車の中がざわつき始める。私が気になり窓からヒョコっと顔を出すと馬車を引いているお馬さんが動けなくなっていました。
こういう時は疲労による衰弱状態というのが普通なのですが、その様子を見る限り違うようなのです。
私は馬車を降りそのお馬さんを確認することにしました。
「あなた獣医様ですか?私にも原因が分からなくて…こんなこと初めてです。」
「えっ聖女?」
馬車を引いていた男性はあの時のミルディと同じ反応をしています。でも、もう慣れてきたのです。とりあえず引き続き様子を確認してみる事にするのです。するとそのお馬さんは右前足で一生懸命地面を掻いているのです。
私が右側に回り込むとすぐに原因がわかったのです。本に書いてあったのです!
「あのミルディ。すり鉢を持ってますか?」
「すり鉢?あるけど…」
「あと皆さんの中にクコの実とポーションを持っている方はいますか!」
私の呼び掛けに1人の若奥様がクコの実を持っていたので分けてもらいました。あとはポーションなのですが……
「ポーションなら俺が持っている。これでいいのか聖女様?」
「助かるのです!ありがとうございます」
先程の剣士さんがポーションを分けてくれました。あとはクコの実をすり鉢で細かく潰してポーションと完全に混ざるように混ぜ合わせる。完成なのです!
私はその完成した液体をお馬さんの右目に何回かに分けてかける。するとお馬さんは走りたそうに元気になったのです。その様子を見て馬車の中にいた他の人達も歓声を上げる。
「聖女様今のは一体……」
「粉塵病なのです!お馬さんが一生懸命走ってくれてたので、土埃などが右目に溜まってしまったのですよ。人間と違って目を掻けないので、視界が見えなくなって走れなくなったのです!」
「獣医様でもないのに凄い…ありがとうございます聖女様!」
いい気分なのです!やっぱり本の知識は優秀なのです!さっきは違ったみたいですけど。私は馬車に戻りそして馬車はシルクナートに向かって再度走り出す。
「アリーゼ。本当に尊敬するわあなたの事。」
「誉めてもなにもでないのですミルディ。」
「別になんもほしくない。素直な感想なんだから気分良くしとけばいいのよ。」
あれからしばらく馬車を走らせると大きな街が見える。シルクナートの街に着いたようですね。
街の入口には門番さんらしき人が立っていて、入ろうとする人をチェックしているみたいなのです。この街に入る人は身分証を提示しないといけないルールがあるらしく、通行料を払って入るみたいなのです。
身分証……私は聖女を破門されてます。どうしましょう……こういう時は……そうなのです!そして私の番が回ってくる。
「身分証を出してください」
「こほん。私の顔に見覚えはありませんこと?私の顔が身分証ですわよ。おーほっほっほ!」
「はぁ!?なにやってんのアリーゼ!」
「早く出せ!怪しいな貴様?」
全然通用しないのです。おかしいのです。この前読んだ本のあの物語ではこれで通用していたのです。私が困っているとそこにあの剣士さんが割り込んでくる。
「この方は新たに聖女になられたお方なのだ。俺が極秘に護衛している。」
「アルグラッド=ノーマン様!?すいませんでした!」
「いやいい。それでは行きましょう」
私はそのアルグラッドさんという剣士さんに腕を引っ張られミルディとともに街の中に入る。そしてしばらく歩くと
「あの…痛いのです」
「あっ。すまん!力ずくで引っ張ってしまった。大丈夫か?」
「はい。あのどうして?」
「馬車でのお礼だ。あなたが悪い人には見えなかったからな。それに俺の方こそ礼を言うよ、今日中に帰りたかったのだ家に。妻の誕生日なんだ。」
そういうことだったんですね。納得したのです。その話を一緒に聞いていたミルディが話し始める。
「素敵な旦那様ですね。あたしも憧れちゃうなぁ…」
「ミルディ。そんな女の子みたいな感情あったのですね?意外なのです。」
「失礼ね!あたしは女の子だ!」
いつも男物の作業着しか着ていないので勘違いしていました。その時アルグラッドさんが私とミルディに提案をしてくる。
「その良ければだが、妻のプレゼントをえらんでもらえないか?女性の事はよくわからん。意見も聞かせてほしい。」
「それならお安いご用なのです!困った人は私が助けるのです。」
「本当に大丈夫?アリーゼの感性とか信じられないんだけど…」
さらっとミルディはヒドイことを言ったような気がしますが無視することにします。こうして私たちはアルグラッドさんの奥様の誕生日プレゼントを選ぶことにするのでした。
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