ロマーナとパールは、あの立体駐車場の屋上で再開した。
「ごめんね。全部あたしのエゴだから」
意外にも、パールが謝罪してきた。決して誰にも謝らない人間なのに。
「でも、もうこれしか手段がない。ミナカのことは愛してるけど、それでもあたしの期待には答えられない。残酷すぎる話しだけど、もしもなんらかの方法であの子と話せたら、それは別れ話でしょうね」
「……パールの恋愛に口出しする気はない。なにが気に食わないのかもわからない。でも、ミヤモトさんはパールを信じて捕まったんだよ? そんな薄情な話しが合って良いの?」
「最初は良かれと思って始まったことでも、時間が経てば陳腐になってしまうのよ。腐ってしまったものは捨てるでしょ? ミナカもわかってるはずよ。あたしが如何に自己中心的な人間かってことは」
壁にもたれながら、わずか見える星を眺めていたロマーナは、同じことをしていたパールに近づき、ビンタを食らわせた。
「なにするのよ!」
「生の感情を見せてよ。言い訳ばかり重ねて、安っぽい自己嫌悪に浸ることが自分を守る行為につながる? なにをしたいのかを鮮明に表してくれないと、誰も彼も君を救えない」
頬を抑えるパールは、じろりとロマーナの目を見据える。その青く変化した目は、パールをどこへ導いてくれるのだろうか。
「……貴女はどんな世界をつくりたいの?」
やがて、パール・イブ・ホーミングは睨むような目つきで語りかける。
「あたしたちは異世界からCPYへやってきた。いや……パラレルワールドといったほうが正しいかしらね。それが神からの贈り物だとするのならば、貴女とあたしがここへやってきたのは絶対的な縁でしょ? そんな貴女の望む世界はなに? あたしのような面倒極まりない存在をゴミ箱にでも捨てられる世界?」
まったくもって、自傷癖は治っていない。言葉はもっとも簡単に自分を傷つけるというのに、パールはまた自分を呪うようなセリフを吐いた。
しかし、それを咎めようとしたロマーナを遮り、彼女は続ける。
「それともあたしたちのような存在と、真正面から向き合える胆力を持つ自分のいる世界? 余剰次元を操れる貴女なら、きっとどちらの世界も築き上げられるはず」
ロマーナはきょう一番の優しい笑みを浮かべる。
「選ぶ間でもないさ。真正面からぶつかってくる子たちには、真っ向勝負してやる」
ゾンビのように生気がなかったパールは、すこしばかり覇気を取り戻した。
「……素晴らしい世界だわ。CPYへ一緒にやってきたのが貴女で本当に良かった」
問題は山積みだ。厄介な幼なじみがいつ錯乱状態になるかわからないし、嫉妬心の果てとして凶行に及ぶミヤモト・ミナカも、これから増えていく問題児たちの相手もしなくてはならない。
それでも、きょうは心底早く帰りたいと思わなかった。
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