贖宥嬢

~罪と戦う少女たち~
和阪 嗣志
和阪 嗣志

第1章

公開日時: 2021年6月11日(金) 19:00
更新日時: 2021年6月11日(金) 22:48
文字数:5,638

始めまして、今回から小説を書かせていただく和阪嗣志というものです。まずは私の小説を手に取り閲覧して頂き感謝します。


さて、私は人間は皆、生きている以上多かれ少なかれ大小様々ではありますが、罪を犯すことがあるかと思います。そして罪を起こした人は罪悪感から償いや贖いをしたり法律上で定められた刑を受け裁かれることが殆どだと思います。しかし、例え償いや贖いをして刑を受けたところでその罪は本当に消えるのでしょうか?


今回から連載する小説はそんな罪の重さを題材にして書いていく作品となっております。私自身もプロの小説家みたいな上手い文章は書けませんが是非最後まで読んで頂き感想などをお聞かせくださると嬉しいです。

少女は夢をみていた。夢の中の空間は空は暗く無数の星が光っており地面は虹色の光を放つ鉱石に覆われていた。


「例え、時代が変わろうと人は罪を重ね続けるんだ、お前達がどれだけ抗ってもな!」


髪や目が淡い桃色をしていて姿や声の特徴は自分にそっくりだが口調や態度が全く違い荒々しく威圧的な女性のその言葉によって少女は長く辛く悲劇的だったが誰かを救っている気もしたそんな夢から目を醒ました。


少女の名前は優領うりょう 聖奈せいな


この物語は我々が住む世界と少し違う世界で罪という敵から人知れず地球の危機と戦った現代を生きる少女たちの物語である。


不思議な夢を見た後で、朝から気分が落ち着かないまま聖奈は自分の通っている高校へと向う。


しかし、聖奈が高校に着き自分の教室で最初に目に入ったのは非常に悲しい光景だった。


聖奈にとって唯一無二の親友とも言える存在の伊達だて 梟子きょうこの机の上に花瓶と梟子の好きなアニメキャラのぬいぐるみとお菓子、そして梟子のスマホが乗っていた。


いじめの1つで机の上に花瓶を乗せるものがあるというのは聞いたことがあったが、いじめじゃないことを否定できるぬいぐるみとお菓子、そして何より本人が一台しか持ってないはずのスマホが乗っていることから聖奈は嫌な予感がして、担任の先生から梟子の事情を聞いた。先生は暗い表情を浮かべながら聖奈に梟子がどうなったかその詳細を話した。


嫌な予感が的中した。


梟子は聖奈と出会った時から病気を患っていて髪が白く松葉杖で生活していていたが、昨日学校で会った時までは元気でそれ以外は難なく過ごせていた。

しかしその夜、その病気が原因で突然倒れ意識不明になったらしく今日の朝に息を引き取ったという。


梟子と聖奈の関係は1年生の春からだった。梟子は元々気が弱く小、中学生の時にも友達はいたそうだが親の都合による引っ越しでその友達とは疎遠になり1人で悲しそうな顔をしていたところに同じく1人だった聖奈が声を掛けたのがきっかけで2人は知り合いになりやがてお互いに1番の親友ともいえる程の仲にまで発展した。


しかし昨日、本当に些細なことで喧嘩をしてしまって、しかもよくよく考えたらその喧嘩はどう考えても聖奈は自分の方に非があり今日の朝に謝るはずだった。


それなのに、その当日になってその親友が死んで聖奈はそんな些細でしかも完全に自分に非のある喧嘩が梟子との最後のコミュニケーションでもう会えなくなると思うと梟子に耐えきれない程の罪悪感を感じ完全に意気消沈してしまうのだった。


そんは状態のまま適当に授業を受けていたら、内容が頭に入らずいつの間にか昼休憩になった。聖奈は意気消沈したままで食欲は湧いていなかったが教室にいても1人で仕方ないので取り敢えず昼食を食べに食堂へと向かう。食堂へ向かうと何やら人混みが出来ていた。人混みが気になりながらも自分には関係のない話だと考えて聖奈は購買で買ったデニッシュパンと紅茶を1人で黙々と食べる。


食べる途中、人混みから話し声が聞こえてきた。「おい、見たか転校生のあの子なんかどっかの宗教の教徒らしいよ」どうやら転校生がやってきてその転校生を求めて人が集まってるらしい。


しかし転校生は信仰してる宗教の教えであまり人に自分のことを明かせず聖奈が昼食を食べているうちに徐々に人が去っていき食べ終わるころには誰も残っていなかった。聖奈はそんな転校生に興味が湧きながらもその時は話しかけずそのまま昼休憩が過ぎ再び授業時間がやってきたので自分の教室へと戻った。


そして最後の授業とホームルームが終わり帰宅することになり聖奈は帰るために昇降口へと向かった。しかし、聖奈は昇降口付近の掲示板で昨日まで貼られていなかった奇妙な部活動の宣伝ポスターを見かけそのポスターにはこう書かれていた。


贖罪部しょくざいぶ あなたの罪を祓います」


見慣れない贖罪と言う言葉に聖奈は興味をもった。

それは喧嘩が最後のコミュニケーションになった梟子への罪悪感からなのか、それとも朝に見た夢にも出てきた罪と言う文字があって何か知れる気がしたからか、それともその両方からなのか、その時の聖奈には贖罪部に興味を持った理由がわからなかったが、ともかく聖奈は贖罪部のある教室へと向かった。


贖罪部の教室に着くとそこにはさっき食堂で見かけた転校生が1人でいて聖奈はその転校生に話しかけられた。


「あら、自分で作っておいてなんだけど、こんな部活にまさか人が来るとはね。私は大友おおとも 義美よしみっていうの。貴方、食堂にもいたけど何かよう?」


「わ、私は優領聖奈っていいます。実は今日、変な夢をみて...」


聖奈は義美に朝に見た夢のことを話した。その話に対して義美は軽く笑いながらこう答えた。


「なるほど、例え時代が変わろうと人は罪を重ね続けるか、確かに間違ってはいないわね。今まで人間が罪を犯さなかった時代はないもの。」


義美は続けてこう言う。


「もしかしたら、それは正夢になるかもね。」


「正夢、つまり現実になるってことですか。」


「確証はないけどね。なんとなくそうなる気がするっていうだけ。」


正夢になるかもという言葉に聖奈は少し危機感を覚えたが話を変え贖罪というものについても問いた。


「所で、この部活の名前にもある贖罪って言うのは?」


「贖罪っていうのはキリスト教の発祥で他人の罪を自分の罪に変えてそれで贖うことを言うわ。その教えが私の信仰してる宗教にもあるの。」


「あっ、それは世界史の授業で聞いたことがあります!」


「だけど、私の信仰してる宗教である聖導教せいどうきょうにはもう1つ意味が加わる。」


そう言えば、昼休憩の時に義美は何処かの宗教の教徒だという話が聞こえてきたが、どうやら本当にそうらしい。そして聖奈はもう1つの贖罪に意味についても話を聞く。


「もう1つの意味?」


「それは断罪と言って罪を消すこと。罪はね決して普通の人間が贖いや償いをしたり人のいう刑を受けたり、その罪を犯した人間が死んで消えるなんてことはない。寧ろ放っておくと悪魔へと姿を変えて人間達に危害を及ぼすわ。」


「これは、聖導教の教えとかじゃなくて事実。現に私のいた故郷の街はその悪魔の手によって一度、壊滅されかけて父と母も殺されたわ。」


「そんな、酷い。しかも街1個を滅ぼす程の力を持ってるなんて。どうやったらその罪を消せる断罪が出来るようになるんですか?」


「断罪をするには、直接罪と戦うしかないの。でも罪は悪魔にならないと戦うことが出来なくて悪魔と戦う力を持つには聖導教の神様であるミドウ様と契約を交わす必要がある。それでそのミドウ様に契約を交わした私たち聖導教の聖女のことを贖宥嬢しょくゆうじょうというわ。」


聖奈は義美の今までの話から義美がただの女子高生じゃないことを悟ったがなんでこの学校にきたのか疑問に思った。


「取り敢えず、義美さんがただの女子高生じゃなくてその宗教の信徒で悪魔と戦っているってことはわかりました。でもなんでうちの学校に?」


「私はね、この学校にいると言われている私と同じある贖宥嬢を探しているの。」


義美は続けてその彼女を探しに来た理由を話す


「でもその女は聖導教の信徒しかも贖宥嬢の身でありながら私たちの宗教の教えに背いた挙句、悪魔の方に荷担しようとした異端者だった。だから私はその女を始末する命を頂いてここに来たの。」


聖奈は義美が持つ宗教の狂信者としての側面をみて内心怯えながらもこういう。


「宗教の命令だったらなんでもしていいんですか?...私はまだ悪魔や義美さんのいる聖導教やミドウ様、贖宥嬢のことについてはよくわからないけど、でもその娘はまだ悪魔じゃなくて人間なんですよね?それで命を奪ったらそれこそ悪魔ですよ!」


しかし、義美は強い口調でこう言い返す。


「聖導教の命令は絶対なの、貴方如きが意見しないで!」


そうして二人が揉めていると突如、学校にいたはずが他の生徒や先生を置いて聖奈と義美の二人だけが亜空間へと飛ばされた。そこは空の色は夜のように真っ暗だが無数の星のような結晶が綺麗に輝いており地面はキラキラと虹色に光る鉱石のような硬い石のような物質で覆い尽くされている。


中でも立方5メートルくらいはあるだろうか、大きくて周りの石のような物質と同じく虹色に光ってる正八面体の岩のようなも物質あり聖奈にはその大きな岩がどこかから神々しさを放ってるように感じた。


聖奈はその世界の綺麗さや大きな石の神々しさに見とれるが、気を取り戻し状況を確かめたくなって自分たちはどうなったのか義美に聞く。


「義美さん、私たちはどうなったんですか?!ここは何処ですか?!」


聖奈がそういうと空から星のようなものが降ってきた。だがそれは良くみると星なんて可愛いものではなく空想上の生き物であるキメラやぬえのように様々な動物の特徴や姿を持っている怪物だ。


空から降ってきた怪物はいきなり聖奈に襲いかかるが聖奈の後ろにいた義美は神速の速さでその悪魔を持っていた刀剣の居合い斬りで1刀両断!聖奈は義美に助けられる。


そんな義美の服装は教室にいたまでの制服とは違い上に紺色の着物、下に青い袴を履いていて一見、侍のようであるが少しゴツゴツとしていて何処か機械っぽさもある物に変わっていた。


すると、空から次々に同じような怪物が降ってきて義美はそれらを切り倒しながら聖奈に状況の説明を始めた。


「さっきの口論は後回しにしましょう。ともかくこいつがさっきも言った悪魔ってやつ。戦いながら1つずつ話すから、落ち着いてその話を聞いて。まずここは地球であって地球じゃないわ。」


「地球であって地球じゃない?...」


「そう、地球はね私たちが普段住む空間とさっきも言った罪や悪魔が蔓延っている空間に別れているの。」


「それってもしかして、私たちはそのもう1方の世界に飛ばされたんですか?!」


「その通り、ここは罪や悪魔が蔓延る方の空間。上に星みたいな結晶があるでしょ?あれの中には罪が入っていてそして罪は成長すると悪魔になってさっきみたいに降ってくる。ようするに昆虫の蛹みたいものよ。」


どうやらここは自分たちが住む空間ではなく罪や罪が成長した後の悪魔が蔓延っている世界らしい。

しかし、状況の説明をしてる義美にも1つ疑問に思うことがあった。


「だけど、私にも疑問があるわ。」


「義美さんの疑問?」


「それはね、私だけじゃなく何で貴方もここに飛ばされて普通に行動できてるのかってことよ。」


「それってどういうことですか?」


「この空間はね、普通は只の人間が行けるような場所じゃないの。見て、あそこに大きい岩みたいなのがあるでしょ?」


義美はさっきの正八面体の大きな岩のような物質を指差して説明を続ける。


「あの岩みたいなのはね、ゴッドストーンって呼ばれてるんだけど、その中にはさっきも言った私たち聖導教の教徒が信仰してる宗教の神様であるミドウ様の意思があって、私たち贖宥嬢はそのミドウ様の意志によって悪魔から護られているの。」


「じゃあ、今私たちはそのミドウ様の手によって護られてここにいれてるんですね。」


「そう。 だけど、この空間でミドウ様によって護られるには反対にミドウ様に認められ契約を交わす必要があるのよ。」


「つまり、義美さんの疑問はまだミドウ様と契約を交わしてない私が動けることだったと。」


「そういうこと、でも貴方がこの空間に飛ばされて普通に動けるっていうことはもしかしたら貴方には贖宥嬢としての素質があってミドウ様は貴方のことを認めていて契約をしたがっている、と私は思うの。」 


義美がそういうと油断した義美に1体の悪魔の攻撃が刺さりそこからさらに多くの攻撃が刺さる。


「ちっ!」


悪魔、1体の力は弱いが流石に数が多く自分1人では殲滅しきれないように感じたが義美は聖奈に向かってこういう。


「私やミドウ様のことは気にしないで!悪魔と戦うか、どうかは並のことじゃないし後に引くことも出来なくなるから貴方が決めなさい!」


しかし、そんな義美とは裏腹に聖奈はゴッドストーンに向かってこう叫ぶ。


「わ、私はまだ贖宥嬢や悪魔を倒して断罪することもの意味もよく知らないし、例え力を貰ったところで義美さんみたいに上手く戦えるかもわかりません。でも、私にも贖いたい罪もあるしここで戦わなかったらそれこそ大きい罪になる気がする!だから私、東ケ丘高等学校2年C組 優領聖奈 17歳は贖罪部の部員になって悪魔と戦う。ミドウ様、どうか私に力を!」


聖奈がそう言いきると神が聖奈を認め契約が交わされたと言わんばかりに聖奈の携帯がポケットの中でブルブルと鳴り響き聖奈が携帯を確認すると知らないアプリが入っていた。


「こ、このアプリは?!」


「そのアプリは神様に贖宥嬢として認められた証拠。」


「そ、それじゃあこれで私も悪魔と戦える!」


聖奈がそのアプリを起動すると眩い銀色の光が放たれその瞬間聖奈の姿が変わっていき、光が消えると架空上に存在する天使が来ているような赤いドレス姿に変わっていた。


聖奈は服の変化に思わず声を上げる。


「こ、これは?!」


「それがあなたの聖なる服、聖服せいふくよ。その服を着ることによって貴方は強くなってあの悪魔たちと戦えるようになるわ。」


「確かに力が湧いてくる」聖奈はこれなら悪魔とも戦えると確信し拳を繰り出す。その拳を喰らった悪魔は彼方の方へ吹っ飛んでいった。


「こ、これが私の力...あの怪物を一瞬でぶっ飛ばしちゃいました!!」


「勘違いしないでよ、これは神様のご加護のおかげなんだから。」


義美はそう言って油断した聖奈の近くの敵を斬り次はこういった。


「まぁでも、とにかくこれで貴方は新しく贖宥嬢になれたからね、一応歓迎するわ。宜しく、聖奈。」


義美はあまり素直な性格ではないが、本当は心から歓迎されてると感じ聖奈は「こちらこそ宜しくお願いします、義美さん。」と聖奈はここで贖宥嬢になって頑張ったら少しでも梟子との喧嘩の罪を贖えるんじゃないかと感じ笑顔でそう返して悪魔や罪と道を選ぶのだった。


これが真の罪だと知る術もなく。

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