「何故ダ?」
唐突に、ザーフィ君がそう訊ねるときは、だいたいおなじ言葉が続く。
「オレの何処ガ、良かったのダ」
「もう。何回目ですか?」
ぷぅっ、と頬を膨らませて、私は抗議を表明します。
「オレは蜥蜴人ダ」
「ですね」
「人族の目にハ、醜く映るのではないカ?」
「そんなことありません。ザーフィ君はきれいですよ」
「どの辺りガ?」
「こことか、こことか……ここもですね」
背びれや、トゲや、尻尾や爪。鱗の一つひとつとか。
私はいちいちさわりながら、丹念に説明していきます。
「気味悪くはないカ?」
「ぜんぜんです」
嫌な気分になったりはしません。
繰り返し説明することで、私の中で、彼に対する想いがたしかなものになっていく気がするからです。
それに、ちょっと自信なさげな彼も可愛いですからね。
「お前は変わっているナ」
「よくいわれます」
にっこりと微笑んでみせると、ザーフィ君は照れたように顔を横に向けました。
「逆に訊きますけど、ザーフィ君は私のどこがいいと思いますか?」
この日は、ちょっと勇気を出してみました。
もともと私のほうから好きになったわけですから、彼の気持ちがこちらに追いつくには、多少時間がかかるでしょう。
ひょっとしたら、私に合わせてくれているだけで、彼のほうは私のことを――その、ぜんぜん好きではない可能性さえ、理論的にはあり得ます。
それでも、私はあえて、その質問を口にしました。
「其う……だナ……オレには、人族の美醜は判らヌ……だガ……お前のその、真っ直ぐな心根だとカ、行動力ハ、驚くべきものだト……思う」
「それって褒めてますか?」
「も、勿論……好ましいト、思う……ゾ」
困ってる困ってる。
人族のように汗をかいたり顔色を変えたりということはないですが、それでも困惑するようすは伝わってきます。
表情にも微妙な変化があらわれて、それがなんとも可愛いかったりします。
ザーフィ君が困るということは、つまりは私を気遣ってくれているということです。
その優しさが嬉しくて、思わず彼を抱きしめると、彼はますます困ったように、口をパクパクさせました。
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