バラックシップ流離譚

異形ひしめく船上都市
葦原青
葦原青

序文

公開日時: 2020年11月17日(火) 00:01
更新日時: 2020年12月9日(水) 13:05
文字数:290

 本作は「あらゆる世界を彷徨う〈幽霊船〉と、その上に築かれた都市に暮らす、生まれも姿もさまざまな人々の物語」です。

 章ごとに主人公が異なり、どの章から読み始めてもいいですし、気に入った主人公の章だけ読んでも構わない、という形式を目指しています。

 もちろん、すべての章を通読することで、本作の真の主役たる〈幽霊船〉の全貌も、徐々に明らかになっていくことでしょう。

 彼の船は、一切が謎であった。

 何時いつ何者だれが、何の目的で建造したのか。

 それを知る者は、生者にも、死者の中にも存在しなかった。


 人が落ちれば一瞬にして原子にまで分解される虚無の海――

 その海原を、彼の船はあてどもなく彷徨い、他の尋常の船ならば様々な港を渡ってゆくように、異なる次元に存在する世界群を行き来する。


 たどり着いた先々では、素性の知れぬ――その世界での居場所を失った者どもが次々に乗り込み、船の新たな住人となった。

 居住区――甲板上に築かれた建造物の集積は、新たに住人が増えるたび膨れあがる。


 貪欲に。

 際限なく。


 かくして顕現したのは、まるで混沌を具現化したかのような一個の都市であった。

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