彼、ザーフィ君はイケメンである。
いいえ。そんな生易しいものではありません。
控えめにいって、超イケメン。
超絶美形。絶世の美青年といってもいいすぎじゃないかも。
そのくらい、彼は素敵なのです。
え? 相手はリザードマンなのに、そんなことがわかるのか、ですって?
ちっちっち。わかってないですねえ。
私くらいのトカゲ・ソムリエにかかれば、亜人種である彼らの顔の判別もお茶の子さいさいなのです。
もっとも、ザーフィ君に関しては、たとえ素人であろうとも一目瞭然でしょうと力説したい。
たとえば、目。
クリッとまんまるで、ツヤツヤしてて、まるで大きな黒真珠。縁はすこし赤みがかっていて、彼の心の温かみを感じさせてくれます。
鱗は黒っぽい青緑。
背中側には雪を散らしたような斑点があって、ゴツゴツしています。
でも、よく見るとしっとりとした光沢があって、なんともいえずきれいなのです。
横顔はシュッとして凛々しく、特に額から鼻にかけてのまっすぐな線がたまりません。かどっこを指でなぞると、きっと気持いいです。
嫌がってさせてくれませんけど。
正面顔もこれまたいい。
すこし平べったい丸型で、左右の目がきょとんとしているように見えて愛嬌があるんです。
そばでじっと眺めていると、突き出た鼻先に思わずキスをしたくなります。
あと、忘れちゃいけないのが尻尾です。
根元のあたりは私の足よりも太く、まるで丸太のよう。
ずっしりと重く、両手で抱えても持ちあげるのがやっと。常にひきずって歩くので、ザーフィ君の通ったあとの地面には波形の模様ができあがります。
もちろん力も強いです。獲物を仕留めたり、敵から身を守るときには武器にもなるらしく、大人の男の人でも一発でノックアウトさせられるほどの破壊力だとか。
一度、こっそりさわろうとしたらペシンとはたかれて、しばらくアザが消えなかったこともありました。むこうは虫を追い払うときのように反射的にはたいてしまっただけですから、非は完全に私の側にあります。
それでも彼は、申し訳なさそうに何度も何度も謝りました。それだけでなく、私の家までやってきて家事を代わってくれたりもしました。やさしい。
足の爪がカチカチ床を叩く音。
振り返るたびに尻尾をどこかにぶつける音。
私サイズの包丁を使って食材を丁寧に切っていく音。
彼のたてる物音一つひとつに、私は耳を傾けました。
勝手のちがう家で戸惑っているようすがありありと浮かび、思わずフフッと笑みがこぼれます。
ザーフィ君。ザーフィ君ザーフィ君ザーフィ君。
顔だけでなく、中身も素敵な私の恋人。
あなたがこの世界にいてくれる奇跡に、日々感謝を捧げています。
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