「何だカ、妙なことニなってるわネ」
向かいに座るモルガナが、呆れたようにいった。
彼女は蜥蜴人のメスで、オレとおなじ年に生まれた。
腹違いの姉妹ということになるのだが、そもそも蜥蜴人は血縁をあまり意識しない。人族の感覚でいうならば、幼馴染みといったほうがしっくりくるだろう。
「な、何のことダ……?」
「噂になってるヨ。アンタが最近、人族のメスとつるんでるっテ」
「本当カ」
誰にもいっていなかったのだが……まあ、そうか。ことさら隠そうとしていたわけでもないからな。
「非常食?」
「いヤ、違ウ」
「だよねエ。鎖に繋いだリ、閉じ込めたりしてるワケじゃないようだシ」
結構正確に把握されている。
「……実ハ……其ノ……好きといわれテ、恋人関係を結んでいル」
観念してそう白状すると、モルガナはしばしきょとんとし、それから腹を抱えて笑い出した。
「マジカ! マジなのカ! まさかお前、人族に欲情する変態カ!」
「ち、違うゾ。其うではなイ」
「本当ニ?」
「あア……だト……思ウ」
「何故目を逸らス?」
フィリアをどうこうしたいと思ったことはない。
むしろ、やたらとさわられたり、くっつかれたりして鬱陶しいと感じることのほうが多いくらいだ。
だが、ああもあけすけに好意を示されれば、邪険にするのも気の毒な気がする。
そうして、よほどのことがない限り接触を許容してきた結果、こちらも慣れが生じてしまったのだろう。なんだか、悪くないと思うようになってしまったのだ。
それどころか、最近ではフィリアがさわっていないと落ち着かないと感じることさえある。
これは由々しき事態、なのではなかろうか。
「なる程ナ。強引に迫られテ、断りきれなかったわけカ」
「うム」
「デ? どうするんダ、此の先」
「一種の気の迷いだろウ。其の内、彼女も目を覚まス」
「覚まさなかったラ?」
「怖いことをいうナ」
思わず頭を抱えたくなった。
もし、そうなったら……どうしよう。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!