朝、一番にオレたち蜥蜴人がすることといえば、日光浴だ。
といっても、船内で日中降り注ぐのは本物の太陽の光ではない。
ライト・クリスタルという自ら発光する石があり、その光を居住区各所に届け、時間帯に応じて光量を調節する。
それによって、船内には擬似的な昼夜が作られるわけだ。場所によっては季節も再現されている。
ともかくも、朝一番の光を、オレたちは浴びなければならない。
裸になり、石畳の上に寝そべって、まずは背中。それから裏返って腹側を温める。だいたい一時間。体温が上がらないと、変温動物である蜥蜴人は満足に活動することができないのだ。
以前は独りでやっていた日光浴だが、最近では一緒におこなう者ができた。
人族のフィリアだ。
見習いの魔女ある彼女は、薬草集めやら水汲みやら、それなりに忙しいはずなのだが、それでも毎朝やってきて、ギリギリまでオレのそばにいる。
「お前にハ必要無いだろウ」
「いいじゃないですか。私は愉しいですよ」
「だガ……」
「はぁ~。気持ちいいですねぇ~」
上着を脱ぎ、すこし薄着になったフィリアは、オレと並んで石畳に寝そべり、時には身体をくっつけ、時には上に乗っかってくる。
そんなことをしたら光を浴びられないだろうと抗議するも、フィリアの体温は思ったよりも高く、結果的に独りでするよりも早く身体が温まる。こうなると、やめろともいいにくい。
独りの時間はなくなるし、彼女に気を遣ってふんどしを着けなければならなくなったが、適当に会話していれば退屈も紛れる。
なんだかんだで、デメリットよりもメリットのほうが大きい。
すべてに満足を求めるのは贅沢というものなのだろう。
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