バラックシップ流離譚

異形ひしめく船上都市
葦原青
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ザーフィ・3 朝、一番にすることは?

公開日時: 2020年12月24日(木) 00:01
文字数:678

 朝、一番にオレたち蜥蜴人サウラがすることといえば、日光浴だ。

 といっても、船内で日中降り注ぐのは本物の太陽の光ではない。

 ライト・クリスタルという自ら発光する石があり、その光を居住区各所に届け、時間帯に応じて光量を調節する。

 それによって、船内には擬似的な昼夜が作られるわけだ。場所によっては季節も再現されている。



 ともかくも、朝一番の光を、オレたちは浴びなければならない。

 裸になり、石畳の上に寝そべって、まずは背中。それから裏返って腹側を温める。だいたい一時間。体温が上がらないと、変温動物である蜥蜴人サウラは満足に活動することができないのだ。



 以前は独りでやっていた日光浴だが、最近では一緒におこなう者ができた。

 人族のフィリアだ。

 見習いの魔女ある彼女は、薬草集めやら水汲みやら、それなりに忙しいはずなのだが、それでも毎朝やってきて、ギリギリまでオレのそばにいる。 


「お前にハ必要無いだろウ」

「いいじゃないですか。私は愉しいですよ」

「だガ……」

「はぁ~。気持ちいいですねぇ~」


 上着を脱ぎ、すこし薄着になったフィリアは、オレと並んで石畳に寝そべり、時には身体をくっつけ、時には上に乗っかってくる。

 そんなことをしたら光を浴びられないだろうと抗議するも、フィリアの体温は思ったよりも高く、結果的に独りでするよりも早く身体が温まる。こうなると、やめろともいいにくい。

 独りの時間はなくなるし、彼女に気を遣ってふんどしを着けなければならなくなったが、適当に会話していれば退屈も紛れる。

 なんだかんだで、デメリットよりもメリットのほうが大きい。

 すべてに満足を求めるのは贅沢というものなのだろう。


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