「正気かよ」
彼氏ができたことを報告したとき、ラキから返ってきた第一声がそれでした。
「ひどいよラキ」
「だってよ、リザードマンだぜ。トカゲだろ? 爬虫類」
「それのなにがおかしいの? 愛の力は種族の壁だって超えるのよ」
ラキは短く切った赤毛が快活な印象を与える少女です。私が力説すると、彼女はドン引きしたような顔になりました。
「えっ。マジなの?」
ワンテンポ遅れて食いついてきたのはリーサ。サラサラのプラチナブロンドがとてもきれいな子です。
「ほらね、いったとおりでしょ? この中で最初に恋人を作るは私だって」
「信じらんねえ。魔女の修行で忙しいのに、よくそんなヒマがあったな」
「時間なんて、やれることはさっさと片付けるとか、出かける用事のついでに会いにいくとか、やりくり次第でなんとかなるものよ」
「ムダに有能よね、フィリアって」
ため息まじりに、リーサがそういいました
「だいたい、二人とも顔は可愛いのに、ラキは言動ががさつだし、リーサは人づきあいが悪すぎるのよ」
「ぐうの音も出ねえ、そこに関しちゃ……でも、うらやましくねえ。うらやまくねえぞ! なにしろ相手はトカゲだ」
「トカゲトカゲって、さっきから失礼よ。ちゃんとリザードマンか、もしくは〈幽霊船〉での一般的な種族名、蜥蜴人といいなさい」
「その、ザーフィ君、だっけ? 見た目はどんな感じ?」
リーサが訊ねた。
「えへへえ……見る?」
私はお財布からザーフィ君の写真を取り出しました。
この辺りでは一軒しかない写真館で撮った、私の宝物です。
「うわ。わざわざあんなところで……あそこってすげえ高っけえんだろ?」
「あそこで使う薬品もうちで卸してるから、ちょっとサービスしてもらっちゃった」
「てか、これって金運UP的な? ヘビの抜け殻を入れとくみたいな」
「ちがうってば!」
リーサもひどい。
……でも、そういう効果も、ひょっとしたらあるかもしれません。
まあ、しかし。
人族が蜥蜴人と付き合うとなれば、周囲の反応なんてだいたいこんなものです。
この二人のことですから、そのうちわかってくれると私は信じます。
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