バラックシップ流離譚

異形ひしめく船上都市
葦原青
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フィリア・3 友人たちの反応

公開日時: 2020年12月24日(木) 00:01
文字数:852

「正気かよ」


 彼氏ができたことを報告したとき、ラキから返ってきた第一声がそれでした。


「ひどいよラキ」

「だってよ、リザードマンだぜ。トカゲだろ? 爬虫類」

「それのなにがおかしいの? 愛の力は種族の壁だって超えるのよ」


 ラキは短く切った赤毛が快活な印象を与える少女です。私が力説すると、彼女はドン引きしたような顔になりました。


「えっ。マジなの?」


 ワンテンポ遅れて食いついてきたのはリーサ。サラサラのプラチナブロンドがとてもきれいな子です。


「ほらね、いったとおりでしょ? この中で最初に恋人を作るは私だって」

「信じらんねえ。魔女の修行で忙しいのに、よくそんなヒマがあったな」

「時間なんて、やれることはさっさと片付けるとか、出かける用事のついでに会いにいくとか、やりくり次第でなんとかなるものよ」

「ムダに有能よね、フィリアって」


 ため息まじりに、リーサがそういいました


「だいたい、二人とも顔は可愛いのに、ラキは言動ががさつだし、リーサは人づきあいが悪すぎるのよ」

「ぐうの音も出ねえ、そこに関しちゃ……でも、うらやましくねえ。うらやまくねえぞ! なにしろ相手はトカゲだ」

「トカゲトカゲって、さっきから失礼よ。ちゃんとリザードマンか、もしくは〈幽霊船ここ〉での一般的な種族名、蜥蜴人サウラといいなさい」

「その、ザーフィ君、だっけ? 見た目はどんな感じ?」


 リーサが訊ねた。


「えへへえ……見る?」


 私はお財布からザーフィ君の写真を取り出しました。

 この辺りでは一軒しかない写真館で撮った、私の宝物です。


「うわ。わざわざあんなところで……あそこってすげえ高っけえんだろ?」

「あそこで使う薬品もうちで卸してるから、ちょっとサービスしてもらっちゃった」

「てか、これって金運UP的な? ヘビの抜け殻を入れとくみたいな」

「ちがうってば!」


 リーサもひどい。

 ……でも、そういう効果も、ひょっとしたらあるかもしれません。

 まあ、しかし。

 人族が蜥蜴人サウラと付き合うとなれば、周囲の反応なんてだいたいこんなものです。

 この二人のことですから、そのうちわかってくれると私は信じます。


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