しばらく歩き、村に到着した。
空から見たときも思ったが、やはりこの村は寂れている。
村人たちは皆痩せ細っており、活気がない。
「村長はいるか?」
俺は村人の一人に声をかける。
「あ、あんたたちは一体……」
村人たちが警戒心をあらわにする。
(ふむ……。まあ、無理もないな)
いきなりやってきた人間が、自分たちに話しかけてきたのだ。
怪しく思われても仕方ない。
だが、今は少しでも情報が欲しい。
「俺たちは冒険者だ。依頼があってこの地に来た。村長と話をさせてくれ」
俺の言葉を聞いて、男の顔色が少し変わった。
「冒険者の方々ですか……。わかりました。すぐに呼んできましょう」
ちょうどその言葉を合図にしたかのように、一人の老人が現れた。
「私がこの村の長です。遠路はるばるようこそおいで下さいました」
「おう。俺はライルというものだ。こちらは仲間の……」
俺がそこまで言ったところで、後ろから声がした。
「我はリリアじゃ。よしなに頼むのじゃ」
「私はアイシャと申します。ストレアの冒険者ギルドの所属です」
今さらだが、この女の名前はアイシャか。
始めて知った。
いや、今までも会話の節々で出ていたような気もするが……。
あまり興味がないので意識の外にあった。
今は、従順なペットとしての愛情は感じている。
名前ぐらいは覚えてやってもいいだろう。
「三名様で全員でしょうか?」
「ああ。そうだ」
「ええっと。依頼書に不備があったのでしょうか……。相手は数十人の盗賊団なのですが……」
村長が困惑した表情を見せる。
「いや、人数は問題ではない。俺たちにかかれば、盗賊団など相手にならないからな。むしろ少人数の方が好都合だ」
「そ、そうなのですか。念のため、冒険者ランクを伺っても?」
「俺はCランクだ」
「我はDランクじゃの」
「私にランクはありません。しかし、Cランク相当の認定を受けています」
俺、リリア、アイシャがそれぞれそう答える。
「なるほど……。CランクとDランク。それに、アイシャ殿は冒険者ギルド直属の職員でしたか……。しかしそれでも、相手は数十人の盗賊団です。厳しいように思えるのですが……」
村長がなおも懸念を示す。
「問題ない。俺がCランクにとどまっているのは、冒険者ギルドに登録して間もないからだ」
「我も似たようなものじゃな」
俺とリリアがそう言う。
「このお二方がおっしゃっていることは本当です。ストレアの冒険者ギルドの職員として、それは保証します。おそらくはBランク……いえ、Aランク以上の実力があると見ています」
アイシャがそう補足する。
Aランクといえば、各国に数人しかいないと言われる実力者だ。
俺の弟ガルドも、冒険者ランクで言えばAランク相当だったはずである。
「なんと! Bランク以上とは……。失礼しました。それなら問題はなさそうですね」
村長はあっさりと信じてくれた。
「それなら、さっそく……」
盗賊団の情報を話してもらおう。
俺はそう思った。
しかし……。
「おうおう! ちょっと待てや! 黙って聞いてりゃ、デタラメばかり言いやがってよぉ!!」
そんな大声と共に、一人の少女が現れた。
ずいぶんとガラの悪い少女だな?
やれやれ。
どうなることやら。
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