盗賊団のアジトの見張りを二人撃破した。
その内の一人には適切な処置を施し、道案内として俺たちの前を歩かせるつもりだ。
「ライルさま! こちらの男にも同じことをしましょう!!」
ミルカが俺を呼ぶ声が聞こえる。
気絶していたもう片方の男にも、同様の処置をするのか。
ミルカも、なかなか悪趣味だな。
それだけ恨みが募っていたのだろう。
「分かった。だが、まったく同じというのも芸がないのではないか?」
「ええっと……。確かにそうですね。では、ライルさまにはどのようなお考えが……?」
ミルカが尋ねてくる。
若干だけだが不満そうな様子が見て取れる。
男への制裁に手心を加えようという意思表明に聞こえたか?
「そうだな。こんな感じでどうだ? 【フレイム】」
ボウッ!
俺の火魔法が、気絶している男の足を包む。
圧倒的な超火力により、男の足はすぐさま灰となった。
「ぎゃあああぁっ!!」
男が絶叫をあげ、飛び起きる。
そして、自分の身に何が起きたのかを把握する。
「ひいぃっ!? お、俺の足がっ!? ああああああぁっ!!」
男が改めて悲鳴をあげる。
それも無理はない。
気絶している間に自分の足がなくなっている経験など、人生でそうそうあるものではないだろうからな。
「ミルカよ。これでどうだ?」
俺はミルカに向かって尋ねる。
「えっ!? は、はい! す、素晴らしい処置でございます!!」
ミルカが何故か動揺しながら答える。
……何か変なことを聞いただろうか?
彼女も負けず劣らずの所業を行っていたように思うのだが。
「お、お前たち! 何してやがるっ!!」
男が俺とミルカをにらみ、そう言う。
ほう。
この期に及んで敵対する気概があるとはな。
なかなかの精神力ではないか。
いや、初手であっさり気絶していたため、俺たちに対する恐怖感が足りないのか?
足の焼却も、高火力で短時間にキレイに焼いたため、痛みなども最小限に抑えてしまっていたかもしれない。
「ならばついでだ。これも追加しよう。【フレイム】」
今度は男の顔に火をつける。
「ぎゃああぁーっ!」
男が絶叫をあげた。
そう大声を出すなよ。
今の火魔法はミジンコレベルにまで手加減している。
薄皮一枚焼いただけだ。
とはいえ、自分の顔に火がつくのは恐怖感が大きいだろうがな。
少しして、男の顔の火は消えた。
「分かったな? 俺たちに逆らうな。従順にしていれば、そっちの男のように命だけは助けてやらんでもないぞ」
「そ、そっちの男……? ひ、ひいいいぃっ!!」
男はようやく、自分の相方の現状を認識したようだ。
既に処置済みの方は、両腕を喪失し、代わりに木の枝を乱雑に刺されている。
そして、憔悴した様子で四つん這いで待機している。
その目には、生気がない。
「選べ。この場で死ぬか、あの男の仲間入りをするか」
「わ、分かりました!! 何でも受け入れる! だから殺さないでくれ!!」
男は泣きながら懇願する。
ふむ。
まあ、及第点といったところか。
「よし。やれ、ミルカよ」
「はい!」
ミルカが男に近づく。
「ひっ……」
男が怯えている。
だが、もはや逃げることもできない。
足がないので物理的に逃げられないし、逃げたところで俺が追いかけて殺すからだ。
男に残された選択肢は、ただ黙って耐えることのみである。
「安心しろ。死にはしない。むしろ、生まれ変わった気分になるはずだ」
俺は男に語りかける。
失った足に木の枝が生える体験など、そうそうできるものじゃない。
せいぜい、感謝して欲しいものだ。
もっとも、彼が今後人間扱いされることはないのだがな……。
ミルカの手により激痛が与えられる男の悲鳴を聞きつつ、俺はそんなことを考えていたのだった。
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