盗賊団との戦闘が始まった。
力を抑えつつ適当に楽しませてもらおう。
「【ライトニング】」
俺は手を掲げ、魔法を発動する。
指先から放たれた稲妻が盗賊たちに襲いかかる。
「「「ギャアァッ!!!」」」
悲鳴が上がる。
何人かが黒焦げになり、感電死した。
いかんな。
雷魔法だと強すぎるか。
「ひっ……!」
「な、なんだ……?」
「こ、こんなの聞いてないぞ!」
盗賊どもが狼狽する。
「うろたえるな! この威力の魔法が連発できるはずがねえ!」
「このスキに距離を詰めて接近戦に持ち込め!!」
盗賊団の幹部っぽい奴らがそう指揮を取る。
言っていることはまともだ。
なかなかやるな。
まあ、俺の場合はいくらでも連発できるのだがな。
このまま雷魔法を連発するのもいいが、それだと皆殺しになってしまう。
ここからは接近戦にしよう。
俺はアイテムバッグから棍棒を取り出す。
かつてゴブリンキングから奪い取った、頑丈で巨大な棍棒だ。
「ちっ! アイテムバッグ持ちか……」
「だが、そんなでかい棍棒をまともに扱えるわけがねえだろうが!!」
「げへへ……。アイテムバッグは回収して、俺たちが有効活用してやるよぉ!!」
そう言いながら突っ込んでくる盗賊たち。
おいおい……。
真正面から俺に挑むとは、命知らずだな。
「雷霆八卦(らいていはっけ)!!!」
バリリリィィ!!
俺は棍棒に魔力を込め、超速の一撃を繰り出す。
「ぎゃぁああああっ!!!」
「ひぃやあぁあ!!」
大ダメージを受け、崩れ落ちる盗賊たち。
ふむ。
こうして武器で倒すのも、たまには悪くない。
肉を潰す感覚が心地いい。
棍棒の一撃で何人かは潰れたが、何人かは生き残っている。
闘気で防いだか。
悪くない防御力だ。
「ぐぐっ……!」
それどころか、立ち上がろうとしている者までいる。
一口に盗賊団とはいえ、その強さにはムラがあるな。
ちょうどいい感じの手加減は難しい。
俺は起き上がろうとしている者のところまで歩いていき……。
「すまん、手が滑った」
俺はそう言って、男の腹の上に棍棒を落とす。
巨大で重い棍棒のプレゼントだ。
「がぼごおおおっ!!」
男が苦しむ。
これで起き上がれないだろう。
ずっと放置していればその内死ぬかもしれないが、この戦闘が終わるまでの間であれば持つと思う。
さて、残りは半分の15人といったところか。
「お、お前ら、何をやってるんだ!? 早くあいつを殺すんだよ!!」
幹部らしき男の声に、盗賊たちが反応する。
「で、ですが兄貴……」
「あの男……強すぎますぜ」
口々にそう言う男たち。
「そ、そうだ! 武器を失った今のうちに、みんなで一斉にかかればきっと勝てるはずだ!」
「わ、わかりました!」
「おう!」
ようやく、やる気になったようだ。
10人ほどの盗賊が俺に向かって駆け寄ってくる。
だが、遅い。
遅すぎる。
俺は足を軽く上げ、そのまま踏みつけるように下ろした。
ドガッ!!!
轟音とともに地面が大きく陥没する。
盗賊たちの身体はその衝撃により、宙に浮かび上がる。
「【裂空脚】」
俺はその場で回し蹴りを放つ。
この蹴りをまともにくらえば、盗賊程度なら原型も留めないだろう。
しかしもちろん、直接これを当てるつもりはない。
「がっ!」
「ぐああっ!」
俺の回し蹴りにより発生した空気の塊が盗賊たちを襲う。
直接当てるのではなくて、空気で間接的に当てるのであれば死ぬことはないだろう。
我ながら、素晴らしい手加減方法を思いついたものである。
やれやれ。
ザコを殺さないように手加減するのも、苦労するな。
まあいい。
何にせよ、これで残るは数人だ。
「な、なんだこいつ……?」
「人間なのか……? バケモノじゃねえのか……?」
「こ、こんな奴にかなうわけがねえ!」
盗賊たちは完全に戦意を喪失している。
俺は最後の仕上げに入ることにした。
「【指弾】」
俺は指パッチンの要領で、右手の指から空気の塊を飛ばしていく。
いくら俺とはいえ、所詮は指パッチンだ。
急所に当たらなければ、死ぬことはない。
「ぐへっ!」
「ぷげらっ!!」
次々と倒れ伏していく盗賊たち。
そしてついに、立っている者は1人だけとなった。
盗賊団のボスだ。
彼は俺を楽しませてくれるだろうか?
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