冒険者ギルドで依頼達成の報告をしている。
まずは、採取してきた大量の銀月草をカウンターに並べていく。
そして、受付嬢が驚いて呆然自失となったところだ。
「どうした? 早く処理を進めてくれ」
「あ、はい。すみません!」
受付嬢は我に返ったのか、慌てて作業を進めていく。
「そ、それにしてもすごい量ですね……」
「ああ。品薄状態だと聞いていたし、多めに採ってきたんだ。もしかしてマズかったか?」
生態系や自然環境への悪影響があるのかもしれない。
「いえ……。少人数で1日で採取された量としてはとんでもない量ですが、森全体で生えている量からすればまだ大丈夫でしょう」
「そうか」
大丈夫だったようだ。
確かに、いくら俺やリリアの能力が破格だとはいえ、個人でできることには限界がある。
ゴブリンのように向こうから襲ってくるのを返り討ちにするなら話は別だが、隠れるように生えている銀月草の採取にはそこそこの時間がかかる。
それに、ゴブリンやゴブリンキングの討伐で、多少の時間を使ったことだしな。
「これだけあれば、街での品薄状態も解消されるはずです。そうなれば、買取金額は下がります。銀月草狙いの冒険者たちは一時的に減少しますし、その間にまた生えてくるでしょう」
「なるほどな」
そのあたりは、うまく回っているのだろう。
自然の偉大さをなめてはいけない。
「ええっと。それでは、今回の買取金額と功績の査定に移りますが……」
「ああ、いや。待ってくれ」
俺は受付嬢を静止する。
「まだ何か?」
「採取中に、ゴブリンの群れに襲われてな。というよりも、こいつらが引き連れてきたんだが……」
俺はそう言って、俺とリリアの後ろに立っている男女を見る。
受付嬢が、その男女に視線を向ける。
「あなたたちは、最近Dランクに上がったばかりの……。ゴブリンの群れを相手にするのは厳しいですか」
「ああ。ゴブリンの群れは、俺たちには荷が重い」
「必死で逃げていたとき、ちょうどライルさんがいたのよ」
冒険者の男女がそう説明する。
「そうですか。それは災難でしたね。他の冒険者に魔物をなすりつける行為は褒められたものじゃありませんが……。みなさんご無事で何よりです。うまく逃げられたのですね」
受付嬢がそう言う。
「いや、ゴブリンの群れは撃退したぞ」
「え? ああいえ、ライル様とリリア様がいれば、何とかなりますか。そちらのDランクのお二方も、集団戦なら戦力にはなるでしょうし……」
受付嬢が思案顔でそう言う。
「ゴブリンを蹴散らしたのは俺1人だ」
「はい? どういうことでしょうか?」
「そのままの意味じゃ。ゴブリン程度、ライル1人で十分じゃ」
リリアがそう答える。
「俺たちも証言するぜ。俺たちは逃げるだけで精一杯だったからな」
「ええ。自分のことに必死で詳しくは見ていなかったけど……。ライルさんがとんでもない実力を持っているのはわかったわ」
2人組がそう言う。
この証言があれば、ゴブリンの群れを討伐した功績も認められるだろう。
ランクアップに期待したいところだ。
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