「アイシャ。怪しい場所ってのはここか?」
俺はアイシャと共に、スラムにやって来ていた。
そして、とある建物の前でそう確認した。
「はい。違法奴隷商はアジトを頻繁に移していますので、確証はありませんが……。少なくとも重要拠点の1つだと思われます」
アイシャは自信ありげに答える。
見た感じ、民家にしか見えないのだが……。
冒険者ギルドの上級職員である彼女が言うなら、それなりに信用できるだろう。
「よし」
俺は建物のドアの前に立つ。
そして――
ドガッ!
思い切り蹴破った。
それから中に踏み入り、「よぉ」と言いながら手を挙げる。
すると、中にいた男たちがわめき出した。
「なんだてめぇは!」
「俺たちが誰だか知ってるのか?」
「なめてんじゃねぇぞ!!」
などという言葉を無視し、俺は室内を見渡す。
特に変わった様子はない。
人の姿もなく、物陰に隠れているということもないようだ。
俺は大きく息を吸い込んで、宣言する。
「ここは制圧した! 抵抗は無駄だ! 大人しく投降するなら、命だけは助けてやろう!!」
静まり返った。
あれ?
なんか思ってた反応と違うぞ……。
「ぎゃはははは! こいつ、バカじゃねーのか!!」
「何が制圧だよ! ただ入ってきただけじゃないか!」
「おい兄ちゃん、悪いことは言わないから帰った方がいいぜ」
「へへへ。でないと、痛い目を見ることになる」
4人の男が武器を手に立ち上がる。
どう見ても無法者だな。
アイシャの情報は正しかったようだ。
(しかし、こいつらの言うことにも一理あるな。S級スキル竜化を持つ俺からすれば、建物に足を踏み入れた時点で制圧したようなものだが……。確かに外から見れば、ただ入って来ただけに過ぎない)
仕方がない。
ちょっと脅すか。
「はぁ……。やれやれ。俺がせっかく警告してやったというのに、なぜそんな態度を取るんだ? まあ、いいだろう。それなら、痛い目をみてもらおうかな……」
「ほざけ!! 死ねええぇ!!!」
1人が飛びかかってきた。
同時に、残りの3人も一斉に襲ってくる。
だが――
(遅い! 遅すぎるっ!!)
俺にとって、彼らの動きはスローモーション映像のように遅く見えた。
俺は軽く腕を振る。
バキッ!
バキィッ!!
たったそれだけで、男の身体は木の葉のごとく吹き飛んだ。
2人目、3人目の男もそれぞれ壁に叩きつけられる。
4人目に至っては、天井に頭をぶつけて埋まっている。
無事な者はいない。
全員が意識を失っているようだ。
適当に起こして、さっさと情報を集めようか。
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