「ちっ! ここをどこだと思ってやがる! 術者を探して、ボコボコにしてやろうぜ!!」
「ちょっと待ってな。球体に触れて魔力の波長を覚えれば、術者の方角が分かることがある」
ふぅむ。
やはり、この男の知識は悪くない。
末端のチンピラにしておくのはもったいないな。
末端のチンピラのリーダー格ぐらいは務められるだろう。
(あ、いや、実際にそのリーダー格を務めているのか)
この場を仕切っているのはこいつだし。
だが、生兵法は大怪我のもと。
半端な知識で手を出せば、痛い目に遭うぞ?
「どれ、この光魔法の術者は――って、ぎゃあああぁっ! 熱い、熱いいいいぃっ!!!」
チンピラは悲鳴を上げて転げまわる。
そりゃそうだろう。
俺が作った【プロミネンス・ボール】は、超高密度の熱の塊だ。
そんなものを素手で触ったら、火傷どころでは済まない。
指どころか全身が燃え上がることになる。
光魔法だと思い込んで触れたのが運の尽きだったな。
こんなことになるのなら、中途半端な知識などない方が良かっただろう。
「て、てめえらっ! 俺を助けろっ! ああああぁっ!!!」
チンピラが泣き叫ぶ。
この『プロミネンス・ボール』は、触れた箇所を一瞬にして焼き尽くすほどの火力がある。
だが、そこからの延焼は別だ。
彼の指先はすでに灰になっているだろうが、そこから燃え広がった全身については一瞬で灰になるわけではない。
「ま、任せろっ!」
チンピラの1人が、飲んでいた水をリーダー格の男に掛ける。
だが、なぜか火の勢いは弱まらない。
むしろ水をかけられたことで、炎の威力が上がったようにすら見えた。
「ああああぁっ! お前、それは酒じゃねえか! 馬鹿かあああぁっ!!!」
「はぁ? せっかく掛けてやったのに、その言い草は何だよ!!」
火の温度や勢いにもよるが、水を掛ければ火は弱まる。
しかしアルコール類を掛ければ、火は強まる。
リーダー格の男はこれを知っていたが、その他のチンピラは知らなかったようだ。
まぁ、スラムで生きる賊の末端構成員ならこの程度の知的水準か。
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