「ふぅむ。縁もゆかりもない女奴隷とはいえ、さすがにまるごと殺すのは忍びないな。拠点を消し飛ばすのは止めておこう」
上級魔法を使えば、これぐらいの拠点なら一撃で壊滅させることができる。
アリで例えるなら、小型の爆弾を巣に突っ込んでまるごと爆発させるようなイメージだな。
1匹1匹を踏み潰していくことに飽きた今、それを検討していたのだが。
見ず知らずの奴隷とはいえ、さすがに賊どもと同じ扱いで殺すのは申し訳ない。
それに、もしも助けられたら、アイシャやキーネあたりが俺への評価を改めるかもしれん。
彼女たちはどうも、俺のことを鬼畜外道のように思っているフシがあるからな。
ここらで、俺が聖人君子であるところを見せてやろう。
「じゃあ、どうしようか。どうやって攻めるべきか……」
正面から押し入って暴れるのは、飽きた。
まるごと壊滅させるのは、地下に女奴隷がいるので中止。
となれば……。
「これでいいか。【プロミネンス・ボール】!」
俺は右手を前に突き出す。
その手から放たれたのは、炎による球体だ。
バスケットボールよりも大きいそれは、ゆっくりとした速度で建物の方に進んでいく。
そしてドアに触れたかと思うと、触れたところを一瞬で焼き払ってそのまま中に入った。
「よし。狙い通りだな」
これは特殊な火魔法だ。
熱を極限にまで圧縮しているため、少し離れたところにある木材などが燃えることはない。
だが、球体に触れればそれに秘められた熱が一気に伝わり、物体を瞬間的に加熱し焼失させるのだ。
「こういう使い方は初めてだったが、上手くいったな」
俺は自分のセンスの良さに感動しながら、焼け焦げたドアから中を覗く。
そこには、事前に気配を探っていた通り、4人のチンピラがいた。
突然の出来事に完全に固まり、立ち尽くしている。
「な、なんだこの球は!?」
「光ってやがるが、熱は感じねぇな……。探索系の光魔法の一種か?」
チンピラとはいえ、最低限の観察眼を持つ奴はいたようだな。
確かに、一見すれば害のない光魔法のようにも見えるだろう。
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