俺たちは村に凱旋した。
「とりあえず、村の中央まで連れて行くぞ」
そう言うなり、俺は先頭に立って歩き出す。
家々の中にいた村人たちが何事だといった感じで顔を出すが、すぐに納得した様子で俺たちに付いてきている。
わざわざ広く通達するまでもなく、俺が盗賊団を無事に壊滅させたことはある程度伝わるだろうな。
だが念には念を入れておこう。
俺は村の中央広場に位置取り、手を空に向けて掲げた。
「【火柱】」
呪文を唱えると同時に手から炎が出現して上空へと伸びていき、大きな火柱となって天を突き上げた。
「うわああっ!!」
「なんだ!?」
「なんだよあれえっ!」
村人たちが騒然となる。
これで注目は集められたな。
「静かにしろ!」
俺は大声で叫んだ。
すると、騒ぎはピタリと止む。
「お前たちに朗報がある! この村の脅威となっていた盗賊団は、この俺ライルが壊滅させた!!」
続けて、宣言する。
「だが、これで一件落着ではない! なぜなら、こいつらに殺された者が帰ってくることはないからだ! そして、諸君らの心の傷も癒えてはいないだろう!?」
俺はそこで一拍置いて、周囲を見回す。
「そ、そうじゃ! 儂の息子は、こいつらに殺された!!」
「わたしのお兄ちゃんも……!」
「俺の妻は、俺が見ている前で輪姦された……! 絶対に許せねえ……!!」
やはりか。
ミルカや村長だけでなく、村人全員に怨嗟の声が渦巻いている。
「お前たちの恨みは正当なものだ!!」
俺は、再度叫ぶ。
「こいつらは、まさに外道だ!! 人の命を奪い、女を犯し、金品を奪う……!! まさしく、鬼畜と呼ぶに相応しい所業ではないか!」
「そうだ!」
「殺せっ!!」
「ぶっ殺しちまえっ!!!」
怒号が飛び交った。
憎悪と殺意に満ちた言葉ばかりだ。
「その通り! 俺も、こいつらをこのまま逃がすつもりはない! 町へ連れ帰るのもいいが、それでは諸君らの心が晴れぬであろう! よって、ここで何人かを処刑するつもりでいる!!」
「「「「「「「「「「「おおおおっ!!!」」」」」」」」」」」
歓声が上がった。
「まとめて殺しては、少しもったいない! 手始めに、俺が1人処刑して手本を見せてやろう!! アイシャ、ミルカ!! 男を1人ここに!!」
「はっ!」
「かしこまりました!」
2人は即座に返事をする。
「ほら、さっさと歩け!」
「とろとろするな!」
彼女たちが1人の男を引っ張ってくる。
両手と体は縛っているが、足は自由な状態だ。
「や、やめてくれぇ……。俺はただの下っ端だよ……。命だけは……」
男は涙目で懇願してくる。
この期に及んで命乞いか。
くだらない奴だ。
だが……。
「村人諸君! この男は下っ端で、自らに罪はないと豪語している! 救う価値があるか、諸君らに判断を委ねたい!」
俺はそう呼びかけた。
すると、村人たちは互いに顔を見合わせる。
そして……。
沈黙の後、村人たちから次々と声が上がる。
「ふざけるなっ!」
「生かす理由なんてないぞ!」
「あいつが村の金品を略奪しているところを見たぞ!!」
「何が下っ端だよ! 同罪だろうが!!」
「当然の報いだ!」
「そうだそうだ!」
「死ね! 死んじまえっ!」
「死んで詫びろっ!!」
村人たちが口々に叫び、罵り始める。
よしよし。
いい感じに盛り上がってきたな。
「……だ、そうだが? 残念だったな」
「ひ、ひいぃ……。そんな……」
盗賊の男が絶望的な表情を浮かべた。
ま、こいつが無実ではないのは分かっていたがな。
S級スキル竜化を持つ俺は、人が持つ気配や雰囲気を敏感に察知する。
この男からは、殺人者や強姦者としての匂いがプンプンする。
まあ、盗賊団の中では多少マシな方なので、下っ端ということまでは事実なのだろうが……。
無罪放免というには罪を重ねすぎている。
最初から、死刑以外に道はなかったのだ。
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