「ふふふ。無事に、この家の1階と2階だけを全焼させることに成功したな。さすがは俺だ」
俺は満足げな顔で呟く。
この家は、3層構成だ。
2階、1階、地下1階である。
2階に人がいないのは、俺の気配察知能力で確認済み。
1階には4人の気配があったが、先ほど目視で確認した通り、しょうもないチンピラどもだった。
殺しても問題ない。
せっかくなので、俺の火魔法で1階と2階部分をまとめて灰にしてやったのだ。
「これで残るは、地下の取り調べだな。少しは楽しめるかな?」
俺の気配察知能力によれば、地下には数人の男と、弱りきった女性の気配がある。
おそらくは、奴隷相当の身分に堕ちた女性を男たちが嬲っているのだろう。
いろいろな意味で、退屈しないで済みそうだ。
「さぁて、地下室への入り口は……あれか」
それはすぐに見つかった。
元々は隠し扉でも付いていたのだろうが、今や1階部分は焼失している。
地下への入り口など、隠せるものではない。
俺がそこに足を踏み入れようとしたときだった。
「――むっ?」
俺は咄嵯に足を引っ込める。
一瞬前まで俺の足首があったところを、何かが通過していった。
俺はそのまま、大きく飛び退く。
「ちっ! 勘がいいじゃねぇか」
「今のは……短剣か? いや、暗器といったところか」
俺は周囲を見回す。
誰もいない。
だが、確実に誰かがいる。
俺は魔力を練り上げ、その方向に向けて解き放つ。
「【魔力探知波】!!」
俺の放った魔力の波動が周囲を駆け巡り、索敵する。
すると、建物の陰から小さな反応が返ってきた。
「ほぅ。そこにいたようだな」
「ちっ! このクソガキめ!」
姿を現したのは、身長160センチくらいの痩身の男だ。
年齢は30歳くらいか。
ボサボサの黒髪に、不健康そうな青い肌。
瞳には生気が感じられない。
ボロキレのような服に、錆び付いたナイフを持っていた。
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