冒険者ギルドの応接室でギルドマスターと面談をしているところだ。
盗賊団の討伐依頼があるらしい。
「危険度と手間の割に報酬は微妙じゃが……。戦闘能力についてはライル君なら問題ないじゃろう。そして、こういった依頼を達成してくれれば、さらなるランクアップを検討できるようになる」
冒険者のランクは、単純な戦闘能力だけで決まるものではない。
様々な依頼を達成することによる貢献度や、集団を率いる統率能力なども加味されて判断される。
高ランク冒険者というのは、戦闘だけが取り柄の単細胞には任せられない仕事なのである。
「わかった。それを受けよう」
「そう言ってくれると思っておったわい」
ギルマスが満足気にそう言う。
彼が机の上の資料を手に取り、こちらに提示する。
「では、これが資料だ。目を通してくれ」
俺はざっとそれに目を通していく。
……と、そこで受付嬢が部屋に戻ってきた。
「ライルさんのCランク昇格の処理が完了しました。ギルドカードをお返し致しますね」
「うむ」
俺は彼女からギルドカードを受け取る。
「さて。ギルドカードの更新は終わったし、盗賊団の情報ももらった。さっそく向かうか」
「そうじゃな」
俺の言葉に、リリアがそう同意する。
「え? ライルさん、今から盗賊団の調査に向かわれるのですか!?」
受付嬢が驚いている。
「ああ。正確に言えば、調査ではないがな。討伐及び捕縛だ」
「……ライルさん。さすがに今から向かわれるのは無謀では? もう夕方です。夜には魔物が活性化しますし……」
「ん? 俺にとって、夜など何も恐れることはない」
S級スキル竜化の戦闘能力なら、魔物なんぞに遅れを取ることはない。
それに、夜間の視界や気配察知能力にも優れているので、奇襲などで不覚を取る心配もないだろう。
「せめて明日にしてはどうじゃろうか? 道案内役として、儂の娘を付けよう。ランクアップで手間を取らせたせめてもの詫びじゃ」
ギルマスがそう提案してくる。
「……娘? 無様にお漏らしをしたこの女のことだったな?」
「う、うぐぅ……。はいぃ……」
女性が悔しげな声を上げる。
「足手まといは要らないのだがな……」
「ライル君。彼女はこう見えてもCランク相当の実力者じゃぞ? 隠密行動や索敵能力だけならBランク並じゃ。足手まといにはなるまい」
「ふむ。……まあ、いいだろう。せいぜい役に立ってくれよ?」
「わ、わかりましたぁ!」
女性はそう返事をする。
こうして俺たちは、盗賊団の討伐に向かうことになったのだった。
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