俺は冒険者ギルドにて、パーティを結成した。
パーティ名は"聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)"だ。
俺、リリア、キーネ、その他4人のBランクパーティである。
「ライルさん。これで、高ランク冒険者向けの情報を提供できるようになりました」
「ああ、そうだな」
冒険者ランクは、S、A、B、C、D、Eの6段階がある。
そして、依頼の達成難易度や魔物の討伐難易度にも、同じように6つの段階が設定されている。
低ランクの者が高ランクの依頼や魔物討伐に挑戦すると、場合によっては命の危険すらある。
そのため、ある程度は情報が統制されている。
個人としてもパーティとしてもBランクとなった俺には、より幅広い情報が開示されることになる。
「良かったですね! ライルさんが当初から追っておられた情報を提供いたしますよ!!」
受付嬢が満面の笑みを浮かべて言う。
俺たちの冒険者としての実力が評価されたことは、俺も嬉しく思う。
まぁ、それはさておき――
「俺が当初から追っていた情報? 何のことだ?」
「え? ですから、シルバータイガーのことですよ。B級危険種に指定されている、あの強力な魔物です」
「シルバータイガー? 何のことだ?」
「ええっ? あの、”白銀の大牙”を探しておられるのですよね?」
「…………?」
「ライルさん?」
「……?」
「もしもーし?」
「…………」
何だ?
何か、大切なことを忘れているような……。
思い出せん……。
そのとき、頭の中に1つの情報が思い浮かんだ。
『極滅魔法ディザスター・ストームの発動方法について――』
ほう……。
これは興味深いな。
S級スキル竜化が覚醒してからというもの、こうして次々に新たな力に目覚め続けているのだ。
俺の進化は留まるところを知らない。
……ん?
あれ?
今、俺は何かを考えていたような気がするのだが……。
「もしかしなくても、記憶喪失ですかぁ~?」
受付嬢が困惑した様子で言う。
ああ、そうだった。
”白銀の大牙”がどうとかいう話か。
「……よく分からんが、俺はそんなものを探してはいない」
「あれぇ? でも、ライルさんの冒険者登録時の備考欄に書いてあったはずですけど。……ほら、ここに」
受付嬢が1枚の紙を取り出して見せてくる。
確かに、登録用紙の備考欄にはそんな記載がされている。
書類を偽造されたのでなければ、俺は”白銀の牙”とやらを求めていたのだろう。
「……これはいかんな。想定以上に”真覚醒”が早い」
「リリア?」
俺の隣で、リリアが真剣な表情をしている。
「ライルよ。少し痛むが、我慢するがよい」
リリアはそう言って、右手を俺の頭に添える。
「え? ――ぐあああぁっ!?」
「……ほう。やはり」
「……あ……が……」
頭が割れるように痛み始める。
そして、俺の意識は薄れていったのだった。
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