村を襲うミドル・ボア。
男衆は劣勢でケガ人も続出していましたが、私が加勢してミドル・ボアを殴り飛ばしました。
「お、おおぉっ! さすがはサテラさん!」
「凄えぞ! 一人で倒しちまった!!」
「あのミドル・ボアをあんなに吹っ飛ばすなんて……!」
周囲の男衆は歓声を上げてくれています。
どうやら、みんな私の力を信頼してくれているようです。
まあ、それも当然のことです。
だって、ライル様がくれたこの力で、これまで多くの魔物を倒してきましたし。
いつの頃からか、”サテラさん”だなんてさん付けで呼ばれるようにもなりました。
昔は”サテラちゃん”とか”嬢ちゃん”とか”そこの女”とか呼ばれていたのに……。
これも全て、ライル様のおかげですね。
感謝してもしきれません。
というわけで、ミドル・ボアを仕留めましょう。
私はミドル・ボアに駆け寄ります。
「これでとどめぇっ!!」
「プギイィイッ……」
私が放った渾身の右ストレートが直撃したミドル・ボアは、断末魔の声を上げて息絶えました。
その巨体はズシンという音を立てて崩れ落ち、辺りに血が広がっていきます。
「「うおおおっ! さすがはサテラさんだ!!」」
「さすがは村の救世主!」
「うむ! 頼もしいな!!」
周囲を見ると、みんな嬉々として声援を送ってくれています。
何だかくすぐったい気分です。
みんなからこんな風に言われると、照れてきちゃいます。
「ふふっ……ありがとうございます。――って、あ、危ないっ!」
「へっ? ぎゃーーーーっ!!」
「ぐあああぁっ!!」
新たに乱入してきた猪型の魔獣。
そいつの突進を受け、他の村人たちも次々に弾き飛ばされていくではありませんか!
「くぅううう……! もう1匹いたなんて……!」
私はすぐに立ち上がり、身構えます。
さっきの戦闘でかなりの力を使ってしまっていますが、ここで倒れるわけにはいきません。
「はああぁっ! 私はまだまだ負けないんだから!!」
タックルを右の竜手で受け止める私。
ミドル・ボアの攻撃力なら、多少疲れた私でも大丈夫。
そう思ったのですが――
「ブモオォッ!!」
「あぐっ!」
想定以上に衝撃が大きかったのです。
私はそのまま跳ね飛ばされてしまいました。
「……くうっ」
地面に背中を強く打ちつけられ、一瞬呼吸ができなくなりました。
それでも何とか立ち上がる私。
「くっ! よく見れば、こいつはギガント・ボアじゃ……?」
ミドル・ボアの上位種。
全快状態の私でもかなり厳しい相手です。
ただ、諦めるわけにはいきません。
村は私が守らないと!
全身の痛みに顔を歪めながらも、再び拳を構えます。
でも――
「ブオオオッ!!」
「ひぃっ!!?」
「「どわああああっ!!!」」
さらに数匹のミドル・ボアが現れ、次々と村人たちを襲い始めます。
「こ、こんな……。魔獣の大発生? 一体どうして……」
この数を私1人で倒し切るのは無理です。
せめてギガント・ボアだけでも……。
私は魔力を集中させ、右腕を変化させ――
「うっ!? た、体力が足りない……」
ライル様にいただいたお力ですが、元は非力な私です。
もう限界が訪れてしまったようです。
(ごめんなさい、私の赤ちゃん……)
私は覚悟を決めて目を閉じます。
愛しい赤ちゃんの顔を思い浮かべながら。
しかし、いつまで経ってもミドル・ボアは私を攻撃してきませんでした。
恐る恐る目を開けると、そこには見覚えのある少年の姿がありました。
「あ、あなたは……」
「よう。また会ったな」
そこに立っていたのは、私の愛しい御方。
ライル様でした!
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