1年後――
「ちっ! 狂信者共め……。死を恐れずに特攻してくるとはな……」
ライルが吐き捨てる。
聖竜帝国と周辺国家は戦争に突入した。
その中でも、聖国との衝突が激しかった。
国境部の平野を巡り、壮絶な競り合いが繰り広げられている。
「ライル様、ここは危険です! 早くお逃げください!!」
「いや……俺はここに残る。俺は聖竜帝国の帝王だからな。我先にと逃げるわけにはいかん」
サテラの進言を、ライルが断る。
彼は戦場の中心で仁王立ちしていた。
「ライル様!!」
「大丈夫だ、サテラ。俺に任せろ。それに、右翼を固めていたガルドもそろそろ合流する頃――むっ!?」
「ぐっはああああぁっ!!!」
「ちっ……。そう簡単にはいかないか……!」
ライルが舌打ちする。
A級スキル【剣聖】を持つガルド。
大抵の敵は、彼に任せていれば大丈夫だ。
しかし、今回は一筋縄ではいかないらしい。
かなり強い攻撃を受けたのか、右翼側の戦線から中央まで勢いよく弾き飛ばされてきた。
「東方の蛮族どもめ。まさか聖国と手を組むとは……。おい、ガルド。生きているか?」
「ぐっ……。あ、当たり前だ。この俺が、こんなところで死ぬわけがねぇだろうが……!」
ライルに答えるガルド。
彼は剣を杖代わりにして立っていた。
その体は血だらけであり、すでに満身創痍だ。
そして、目の前には1万を超える聖国と蛮族の兵士たちがいる。
「ちっ……。さすがに、これは厳しいな。S級スキル【竜化】を全開放すればなんてことのない相手だが……」
「それだけはやめてくれ。竜化がまた進行するだろ……。お兄ちゃんが竜化して暴走したら、今度こそヤバいぜ」
「分かってるさ」
ライルは竜王リリアとの決戦を通して、人の心を取り戻した。
だが、S級スキル【竜化】を完璧に制御できているわけではない。
スキルの使用を控えつつ、様子を見ているのが現状だった。
「ちくしょう……。お兄ちゃんが好き勝手に孕ませまくるから、貴重な戦力が……」
「おいおい、ガルド。それは言わない約束だろ?」
ライルとガルドが軽口を叩く。
ライルがルーシーと結婚したのが1年前。
その後、元親衛隊隊長にして中級貴族の生まれでもあったロゼリアを側室に迎え、第二夫人とした。
さらには希少種族である紅猫族の有力氏族の生まれであるレスティを第三夫人に。
すでにライルとの子を生んでいたサテラとミルカを、妾として準側室に。
そして、スピカ、アイシャ、キーネ、シャオなどを愛人として囲った。
竜の加護と高い忠誠心により、彼女たちは人材としても優秀だ。
聖竜帝国の発展と安全のために力を振るっていた彼女たちだが、ライルの子種があまりにも強かったため、その多くが次々に妊娠してしまった。
その結果が……現在の状況である。
1万を超える軍勢を前に、限られた人材で戦い抜かなければならないのだ。
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