俺は違法奴隷商の拠点を壊滅させた。
本人はもちろん、配下のチンピラや頭領たちも皆殺し済みだ。
もうここに用はない。
だが、牢屋の中に入れられている少女だけは別だ。
(全く……。こんな希少種族を、ここまでボロ雑巾のように扱えるなんて信じられん)
S級スキル竜化を持つ俺には分かる。
彼女は希少種族だ。
そして、確かな戦闘の才能を持っている。
「ほれ、これを飲めるか?」
俺は上級回復薬を、彼女に手渡す。
「あ、あのよ……」
「なんだ? 遠慮せず飲むがいい。外からかけるだけじゃ、ポーションは十分な効力を発揮しないぞ」
傷を治療するポーションには、大きく2種類のものがある。
外からかけて使う『外用』と、内服して使用する『内服用』だ。
『外用』は主に外傷を治療し、『内服用』は主に内臓の傷や生命力自体の回復に効果がある。
見たところ、この少女はずいぶんと奴隷商たちに痛めつけられていたようだ。
先ほど上級回復薬をぶっかけたので外傷は概ね治療されているが、まだ内部の損傷は残っているだろう。
「母さんがどこかにいるはずなんだ。アタシを庇って、きっと酷い目に遭わされたと思う……。これは母さんに使ってもらいたい!」
少女は叫ぶようにそう言ったのだった。
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