ゴブリンキングを軽く撃破した。
「ふん。こんなやつがB級か。ぬるすぎる。冒険者ギルドの基準はどうなっているんだ」
俺はゴブリンキングの死体を前に、そう吐き捨てる。
「と、とんでもない強さでした……。あなたは、高名な冒険者なのでしょうか。お名前をうかがっても?」
逃げていた冒険者の男が近づいてきて、そう言う。
彼のほうが年上のはずだが、ずいぶんと丁寧な口調になっている。
「俺はライルだ。ちなみにこっちはリリア。2人とも、つい先日冒険者登録をしたばかりの新人だよ。Eランクだ」
「な、なんと……。すさまじい新人ね」
女が驚嘆した表情を浮かべる。
「俺たちはDランクパーティとしてストレアを拠点に活動しています。一応、冒険者としては先輩ということになってしまいますが……」
「そうか。何かあればお世話になろう、先輩殿」
俺はそう言う。
「よしてください。これほどの強さを持つ方に先輩扱いされると、居心地が悪いです。それに、ライルさんならすぐにでもCランク……いや、Bランク以上に上がってもおかしくないでしょうし……」
ゴブリンキングは、B級の魔物だ。
それを軽く撃破した俺は、確かにBランク以上に上がってもおかしくない。
問題は、冒険者ギルドに信用されるかどうかだ。
ギガント・ボアはA級の魔物だが、死体を見せても登録したての新人が討伐したとは信じてもらえなかった。
B級のゴブリンキングでも似たような展開になるかもしれない。
「よし。一応、討伐の証としてゴブリンの耳を剥ぎ取っておくか」
E級のゴブリンであれば、討伐の実績は認められるだろう。
地道に功績を積んでいくしかない。
「俺たちにやらせてください。助けていただいたせめてものお礼です」
「ええ。金銭的なお礼も、街に戻ったらできる範囲でさせていただくけど……」
男女がそう言う。
「金銭的な礼は不要だ。俺にとっては、羽虫を払っただけだからな。だが、剥ぎ取りを手伝ってもらう件はお願いしよう」
ゴブリンの耳を順番に剥ぎ取るのは、少し面倒だ。
不潔だしな。
こればかりは、S級スキル竜化でもやや対応しにくい問題である。
いくつかの策はあるが、今回は手伝ってくれるそうだしいいだろう。
「ゴブリンキングは……。頭部を叩き潰したのだったか。仕方ない。死体ごと持っていくことにするか」
俺はゴブリンキングの死体をアイテムバッグに収納する。
討伐の功績が認められればよし。
ムリでも、売却すれば多少の値は付くだろう。
ただのゴブリンと違って、ゴブリンキングの死体はやや貴重だからな。
しばらくして、男女がゴブリンの耳の剥ぎ取りを終えた。
俺は彼らからそれを受け取り、アイテムバッグに収納する。
「さて。街に帰るか。お前たちはどうする?」
「俺たちも今日は帰ります。思わぬ敵に遭遇して、疲れました。ご一緒しても?」
「ああ。それぐらいなら構わない」
俺、リリア、それに冒険者の男女。
4人で、ストレアに向かって歩き出す。
今日だけで、それなりの成果があった。
当初の依頼分を大幅に上回る銀月草の採取。
ゴブリンの群れの討伐。
ゴブリンキングの討伐。
冒険者活動の初日としては、上々の滑り出しとなりそうだ。
ギルドに成果を報告することにしよう。
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