「はぁ……はぁ……。お、思い知ったか」
「クソぉ……人族めぇ……」
「ふん……」
川で汚れを流した後、俺はレスティにお仕置きをした。
彼女は屈辱に顔を歪めてこちらを見ている。
まったく、手間をかけさせてくれたな。
「……でも、意外だった」
「あ?」
「これはこれで……気持ちが良かった。アタシや母さんの治療をしてくれたこともあるし……。アンタは意外に優しいのか?」
「……勘違いするなよ」
俺は苦笑しつつ、口を開く。
「俺は俺のために行動しているだけだ。結果的にお前の利益になっていたとしても、それは偶然に過ぎない」
「へえ?」
「だから、俺が優しく見えるとしたら、それはたまたまということだ」
「ふーん……」
レスティは興味深そうな目で、じっと俺の目を見る。
そして、ニッと笑うと、
「ま、それでいいよ。アンタが利用したいなら好きなだけ利用すればいい。アタシら紅猫族は強者に惹かれる。毒で奇襲してきた卑怯者たちとアンタは違うみたいだし、別にいいさ」
レスティは立ち上がると、俺の頬に触れてくる。
その瞳には強い光が宿っていた。
「ただ覚えておけ。弱肉強食の世界では、力が全てだ。いつか必ず、アンタの強さを超えてみせるぜ? それまでせいぜい今の生活を満喫しておくんだな」
「……ふん」
俺は鼻を鳴らす。
奴隷風情が生意気なことを言う。
もう一度お仕置きする必要があるか?
だが、どうせ言っても聞かないだろう。
とりあえず、即座に不利益な行動をするようなことだけはなさそうだし、今は放置しても構わないか。
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