5年前、ブリケード王国王城の庭にて――
「兄貴! 剣の稽古をつけてくれや!」
「いいぜ。かかってこいよ」
「行くぜ!」
「おう」
元気よく剣の模擬試合を始めたのもつかの間――弟の身体が宙に舞う。
「うわあああっ!?」
ドサッと地面に叩きつけられる弟。
「いてて……くそっ。また負けたぜ」
「ガルド、お前は筋が良いが、まだまだ甘い」
「ちっ。ライルの兄貴にはなかなか勝てねぇな」
弟――ガルドは悔しがりながらも、兄――ライルの言葉に納得しているようだ。
言葉遣いは荒いが、素直で良い奴なのだ。
「ところでよ。兄貴の成人の儀式まで後2年だよな?」
「そうだな。みんなが期待してくるから、嫌でもソワソワしてくる」
この世界では、14歳になるとスキルが神より与えられる。
そして、多くの国や部族では、それに合わせて成人の儀式やそれに類する儀式を執り行っているのだ。
第一王子ライルは、現在12歳。
第二王子ガルドは、現在9歳。
彼らがどのようなスキルを得ることになるか、王都中の注目が集まっている。
「まぁ、王族である俺たちなら、とびっきりのスキルが手に入るはずだろ? 俺も早くスキルを手に入れて活躍したいぜ!」
スキルにはランクがある。
王族や貴族の方が高ランクのスキルが発現しやすい。
――否。
高ランクのスキルが発現しやすい血筋が、王族や貴族として君臨していると言った方が適切だろう。
いずれにせよ、ライルやガルドが強力なスキルを得る確率はかなり高いと誰もが考えていた。
「そうだな。だが、あまり調子に乗るなよ。どんな強力なスキルを得たとしても、それを生かすためには鍛錬が必要だ」
「分かってるって」
「お前はいつも口ばかり達者だな」
「へっ。じゃあ、もう1回勝負しようぜ! 今度は俺の勝ちだからさ」
「懲りん奴め」
「次こそ勝つ!!」
2人の少年が楽しげに笑う。
ブリケード王国の第一王子と第二王子。
どちらも優秀な人物になるであろうと期待されている。
しかし、彼らは知らない。
それぞれが自らの身に余るほど強力なスキルを得ることになるということを――
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