俺とリリアは、どんどん銀月草を採取していく。
そして、依頼されていた当初の量をはるかに超える銀月草を採取し終えた。
銀月草は、ストレアの街で品薄状態らしい。
多めに採取して売却すれば、それなりの金になるだろう。
「さて……。そろそろ戻るか」
「うむ。これぐらいあれば、十分じゃろうな」
俺とリリアのアイテムバッグには、銀月草が大量に入っている。
俺たちが街に戻り始めた、そのとき。
「うわああぁっ!」
「だ、だれか助けて!」
遠くから人の悲鳴が聞こえてきた。
男女の声である。
そのさらに後方からは、たくさんの足音が聞こえる。
姿はまだ見えないが……。
これは、ゴブリンか。
「どうする? リリア」
「ライルの好きにするがよい。余は見知らぬ人族がどうなろうと知ったことではないがの」
リリアがそう言う。
人の外見をしているので忘れがちだが、リリアは竜族の王だ。
人族とは種族すら異なる。
『竜化』のスキルを持つ俺のことは好意的に見てくれているが、基本的には人族に対して彼女は興味を持っていない。
「わかった。なら、助けてやることにする。見殺しにするのは後味が悪い」
俺にとっては、他国における見知らぬ相手である。
助けてやる義理はない。
とはいえ、見殺しにするのはさすがにな。
俺は悲鳴が聞こえたほうに駆け出す。
後ろからは、リリアが付いてきている。
声を上げていたらしき男女が見えてきた。
こちらに走ってきている。
彼らの後ろには、ゴブリンが10匹以上。
ゴブリンはザコだが、一般人や駆け出し冒険者が相手にするにはさすがに数が多い。
「ひ、人だ!」
「君たち、逃げなさい! ゴブリンの群れよ!」
男女がそう言う。
助けを求めてくるかと思ったが、そうはならなかったか。
俺とリリアの外見は、ただの10代の男女だ。
あまり強そうには見えないだろう。
せいぜい駆け出し冒険者程度に思われているのかもしれない。
「心配するな。ゴブリンごとき、俺が一掃してやろう」
俺は仁王立ちして、彼らとゴブリンを待つ。
「ゴブリンの群れを倒す自信があるのか!? 見かけによらず強いんだな」
男が俺を見定めるような目で見てくる。
ゴブリンの群れを単身で撃破できるような若い男も、一定数はいる。
俺が10代だからといって、弱いとは限らない。
「ダ、ダメよ! こいつらの後ろには……。とりあえず今は逃げて! 私たちは逃げるわよ!」
女がそう言う。
そして、男とともに俺の横を通り過ぎていった。
別に薄情だとは思わない。
逃げろという言葉を無視してこの場に留まる選択をしたのは俺だしな。
さて。
ゴブリンたちを軽く蹴散らしてやることにしよう。
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