(な、なんという殺気……。こ、殺される……)
元親衛隊隊長として、多くの場数を踏み修羅場の経験を積んできたつもりだった。
しかし、これは今まで感じたことのないもの……まさに格が違う。
ロゼリアは元より、ライルと敵対するつもりはない。
だが、心のどこかで彼を舐めていたのだろう。
それも仕方ない。
彼女が知っているライルは、あくまでもS級スキル【竜化】に覚醒する前のライルだったのだから。
「俺がブリケード王国に戻る? あり得ない。冗談も大概にしろ」
「し、しかし若様! そのような返答をすれば、陛下がどのような指示を出されるか……。この『ナタール連邦』にも圧力を掛けるかもしれません! 最終的には武力衝突もあり得ます!!」
一度は無能として追放した第一王子が、実は有能だった――。
呼び戻しに成功さえすれば、大きな問題にはならない。
結果的に有能な人材が戻ってくるのならば、それに越したことはないからだ。
しかし帰還を拒否するとなれば話が変わる。
ライルが名を上げれば上げるほど、ブリケード王家の見る目がなかったことを喧伝してしまう。
将来的な禍根の種を摘むためにも、バリオス王やガルド王子は実力行使に出るだろう。
「ふん……。ナタール連邦が圧力に屈するかどうか……見ものじゃないか。俺とブリケード王国、どちらの味方をするかな? くっくっく」
「わ、若様……」
国家がまるごと敵になるかもしれない。
そんな状況を前に笑うライルを見て、ロゼリアは呆然としたのだった。
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