「な、何をするつもりだ!?」
「いや、待て……っ! アレは……!!?」
窓から外の様子をうかがった王たちが、驚愕に目を見開く。
そこには、1匹の巨大な竜が飛んでいた。
それが手に持つクリスタル――『紅血の水晶石』の元となる物体――に、王たちの血液が吸収されているらしい。
いや、正確には王たちの血液だけではない。
街の、国の至るところから、血液が吸い上げられているようだ。
「お兄ちゃんに手を出したのが、お前らの運の尽きだぜ」
ガルドは、ニヤリと笑みを浮かべる。
そもそものことを言えば、ナタール連邦に協力を要請したのはガルドなのだが……。
彼は完膚なきまでに叩きのめされた上、性器を潰され、未完成エリクサーによって性転換され、強制的に竜の加護を与えられた。
その結果として、もうすっかりライルの言いなりになっていた。
「「「…………ッ」」」
王たちは絶句している。
すぐ近くには、殺された王の死体が転がっている。
その上、街・国の至るところから血液らしきものが吸い上げられているのだ。
まさに異様。
恐慌状態に陥ってもおかしくない光景は、王たちの心を折ったようだ。
彼らは畏怖の感情と共に、赤いドラゴンを仰いでいた。
『グルルオオオオッ!!!』
赤い竜の雄叫びが、ナタール連邦中に響く。
その咆哮を受け、王や民衆たちは、ただ怯えることしかできなかったのだった。
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