「な、なんだと……!?」
S級スキル竜化を持つ俺は、各種の魔法技量や出力も格段に上がっている。
特に火魔法は普段から良く使っていることもあり、人間基準で言えばB級冒険者以上の威力があるはずだ。
その俺が放った初級魔法の火力ですら、この金属製の扉を溶かすことはできないというのか……。
「ちっ! 一体どうやってこんなものを作り出したんだ!?」
俺は再び炎をぶつけるが、結果は同じであった。
盗賊ごときが用意した扉を突破できないとは……。
腹が立ってきた。
「こいつを突破する方法はないのか……!」
闘気を解放するか?
先程は力づくで開かなかった扉ではあるが、もちろんまだ全力は出していなかった。
闘気を解放して全力で開けようとすれば、何とかなる可能性はある。
だが、下手をすれば周囲の岩盤が崩落するかもしれない。
ここは地下だし、不用意に暴れるのは避けた方がいい。
魔法の出力をさらに上げるか?
先程俺が放った火魔法は、初級のものだ。
もう少し気合いを入れて詠唱すれば、中級や上級の火魔法も使える。
この扉には魔法を吸収し無力化する機能があるようだが、もちろんそれにも限界があるはずだ。
威力を上げていけば、いつかはこの堅牢な守りを打ち破れるだろう。
しかし、ここでも闘気と同じ問題が立ちはだかる。
それは、ここが地下だということだ。
あまりにも強力な火魔法を使うと、地下で風通しの悪いこの場では何らかの問題が発生する可能性がある。
地下室や洞窟など密閉空間での火魔法の使用は、あまり推奨されていないのだ。
「やれやれ……。面倒だな。なぜ俺がこんなしょうもないことで悩まねばならん」
そもそも、今回の捜査はアイシャの手伝いである。
彼女の顔を立てて、奴隷たちは生きたまま確保するつもりだし、下っ端はともかく違法奴隷商本人もできるだけ生かして捕らえるつもりだった。
それがこんなことになるとは。
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